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学校探求【18】〜武相学園の真骨頂
2006年5月2日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

◆4月29日、パシフィコ横浜で、神奈川の全私立中学61校が勢揃いし、神奈川私立中学相談会が開催された。会場は学校選択者で溢れたという。そんな中で、会場と黒山の人だかりを「森」というメタファーに変容して、オリエンテーリングを行った男子校がある。武相学園がそれである。

◆いったいこれは何を意味するのだろうか。オリエンティア(Orienteer)は、地図とコンパスのみを頼りに、山野に設置されたコントロールと呼ばれるチェックポイントを通過しゴールするまでのタイムを競うことを大いに楽しむようだ。

◆体力と、地図を読み、自分自身をナヴィゲーションする自己認識力の両方が必要なスポーツで、北欧で生まれたという。オリエンテーリングは、市民が自然と楽しむことを目的として発達し、トップエリートのみでなく、子供や高齢者、障害者までもがユニバーサルに楽しく体感できるらしい。(参考→「日本オリエンテーリング協会」

◆せっかく相談会にやって来てくれたのだから、受験生も大いに楽しむ場面があってよいのではないかという気持ちが武相の先生方のベースにはあっただろうが、決められたコースがない時空で、自分でゴールに向けて探索しながらたどりつかねばならないのだ。ただ楽しいだけではあるまい。受験生たちはみな、鳥瞰視点と地図と方位を重ね合わせ、時空をイメージしながらゴールへチャレンジするのである。

◆受験生たちの姿を思い浮かべるだけで、武相の先生方の受験生への優しい眼差しを感じないではいられない。中学受験は人生の森の一角である。6年後には大学受験に直面し、大学卒業後は自分の進路の視界が広がっている。でも、かならずしもその視界はどこまでも明るくはっきり見えるわけではない。深い霧のかかった森でもある。世界中の人々――トップエリートも、子供や高齢者、障害者までもが協力し合ってゴールを見つける。その協力を楽しむ。それがオリエンテーションのエッセンス。

◆武相には多くの部活があるが、オリエンテーリング部も活躍している部活の1つ。世界ジュニアオリエンテーリング選手権にもチャレンジしているほど。自然の深い懐に親しみながらセルフイメージを広げていくことに挑戦しているわけである。

◆このセルフイメージとかアイデンティティを生徒1人ひとりが形成していく環境作りが巧みなのは、武相の先生方が豊かな創造性を有しているからだ。そのことは在校生の読書感想文からも垣間見ることができる。夜回り先生、水谷修さんの「眠れない子どもたち」を読んで、なんて自分は幸せなのかと改めて自分を振り返っている中学3年生がいる。「『こんなこともできないのか』『なにやっているんだ』『そんなことでどうする』今、こんな大人の心ない言葉が心優しい子ども達をどんどん闇に追い込んで、闇に追い込まれた子ども達が引きこもりになったり、夜の街へ迷い込んだりするそうだ。」という視点を持っているのだが、なぜそういう視点を持てるのか。

◆それは自分の武相での学園生活との違いを実感できるからだ。視点は比較によるズレに気づくことによって体得できるが、武相学園の先生方と「眠れない子どもたち」に登場してくる教師との違いが、強烈だったのだろう。また、気づくとは創造的行為なのであるが、これは押し付けられて行えるものではない。生徒が自ら気づく環境がなければ、どうしようもないのだ。

◆目の前の「森」と二次元化された地図、全体像をつかもうとする鳥瞰イメージ、ゴールまでの速度、このリアルとバーチャルの空間シフトと時間を掛け合わせる体験。セルフイメージを形作る脳内の多角的視点を刺激する仕掛け。神奈川私立中学相談会でのパフォーマンスは、武相学園の真骨頂のお披露目だったのである。


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