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学校探し(78)〜豊島岡女子は元気な勉強系
2005年11月28日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

◆ 113年の歴史を有する豊島岡女子学園(以降「豊島岡女子」)。その教育方針は、(1)道義実践(2)勤勉努力(3)一能専念。努力目標は(1)予習をしよう(2)気立てのやさしい女性に(3)健康に注意しよう。

◆ まさに明治以降の日本近代教育の流儀を歩む典型的な学校である。ポスト・モダニズムとかコンテンポラリー・アートというモダニズム批判とは無縁の(ある意味)安心できる学校。明治に生まれた日本資本主義のプロテスタンティズムというというか儒教的というべきか、近代日本の資本主義の倫理を今も美しく頑なに伝えているエリート校である。NHKの大河ドラマ「義経」の風俗考証も手がけている二木謙一校長先生(昨年まで国学院大学教授兼任)が自ら「元気な勉強系」の学校と称されるから、なおさらである。

◆ 東京大学を頂点とする早慶上智という学歴階層構造において大きな実績をあげ、女子私立中高一貫校として桜蔭に次ぐ(医学部の合格実績はまさに桜蔭の次に実績をあげている)進学校。理系とか医学部にこだわるあたりは本当にモダニズムの流れを汲んでいる。

◆ ただおもしろいのは、モダニズムは階級(日本では階層か)を構築し、二極化を推し進めてきたエネルギー体でもある。一方で自由とか平等という精神も封建制に対峙して出てきた。これは近代日本の構築には時々両刃の剣になった。つまり矛盾を露にした。この矛盾を解消するためには、アイデンティティを固める作業が肝要だった。サミュエル・ハンチントンではないが、アメリカがWASP的アイデンティティを築き、英語以外の言語を排除(入植はイギリスからだけではなく、イタリアからもドイツからもフランスからもあったにもかかわらず母国語は英語になったということ)し、アメリカ資本主義という経済主義を共通コードとして仕立て上げていったように、日本でも明治以降の近代官僚的政策は矛盾を排除するために、神聖なシステムを立ち上げた。

◆ これと同じような構造が豊島岡女子にはある。それは「運針」。毎朝5分間、学園の生徒全員がメディテーションをしているのかと思われるぐらい、静かに集中している瞬間があるそうだ。ミッション系でも同じようなシステムとして礼拝やミサがある。また10分間読書を取り入れているところも数多くあるが、これも同じようなシステム。各々の学校のアイデンティティ循環システムである。

◆ このように考えれば「運針」は、死語であるかもしれないが、組織維持装置として大いに価値があるだろう。ただし、良いか悪いかは別として、21世紀の組織形態は、そのような1つのアイデンティティで固めていく世界ではないようだ。サミュエル・ハンチントンもアメリカのアイデンティティの多極化を分析している。Toleranceが21世紀のキーワードであるのは、このような互いのアイデンティティをどのように受け入れるのか、それが重要問題だからだろう。豊島岡女子では海外研修というものは、それほど盛んではないようだ。2週間程度の体験で終わってしまう。そんなことは大学に行ったら、いくらでも本人たちが自分たちの力で行けるのだから、中高段階で力を入れる必要はないということなのかもしれない。

◆ パソコンに関しても、学内に300台あるし、各教室にも設置しているようだが、どうもハード的な発想。これも日本近代国家的な発想につながるから、モダニズムの流れは一貫している。NTS教育研究所所員吉井(http://eri.netty.ne.jp/nts_column/b/seiko.htm)によると、聖光学院の工藤校長先生が、同学院の説明会で、「聖光学院から『進学校』というレベルを取り去ったときに、そこに残るものは何でしょうか」と保護者に問いかけたそうだ。そして進学校として保護者の期待も高い中、あえて学院を「Creative School」と表現したそうだ。

◆ 21世紀は産業資本主義国家の時代ではない。高度情報資本主義社会になると言われて久しいが、今ではファンド資本主義が驀進している。しかし、その先は創造的市民社会がやって来るのだろうか。工藤校長先生の目にはそんな遠くまで見えているのだろうか。それはよくわからないが、私立学校の成立構造は、各々の学校が時代をどのように捉えるかで、まったく違う。学校選択者にとって、どの学校を選択するかは、子供たちの未来を選択することでもあるだろう。

※豊島岡女子学園の説明会に参加した当日の私のメモは「ホンマのブログ」を参照していただければ幸いである。



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