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| 学校探し(62)〜かえつ有明は今までにない共学校をめざす |
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2005年6月27日 by 本間勇人(honma@netty.ne.jp) |
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◆ 来春誕生する≪かえつ有明中学校≫(以降「かえつ有明」と表記)の第一回目の学校説明会が開催(2005年6月26日)された。会場となった嘉悦ホールは新しい学校となる「かえつ有明」に関心を持っている家庭で埋め尽くされた。もともと女子校であったため、当然ではあるが、男子生徒の存在は大変新鮮であった。 ◆ 新しくなるといっても、100年以上のベースはそのままで不易流行という形で構築していくので、古き良き嘉悦女子時代の心は継承される。その一例が、在校生による「やわらかい」もてなしだ。説明会会場まで案内してくれる在校生の姿勢が自然体だし、明朗快活であるのはとても気持がよい。 ◆ 嘉悦克校長先生もクールビズ姿で受験生や保護者を迎え入れた。たいていの学校説明会は緊張の連続の説明会であるのだが、終始保護者たちの微笑みがもれる説明会であったのは自信のある証しであろう。103年前には103年前の、21世紀には21世紀のリーダー像があるのだから、21世紀の求める「国際的に活躍する、真のエリートを育てる」ということである。 ◆ このビジョンを掲げるのは易い。このビジョンを実現するためのアクションプランもまた実は易い。もっとも難しいのは、このビジョンが学内、つまりステイクホルダーである教職員、在校生、在校生の保護者、学校を支えるサプライヤー、教育空間、教育施設、教育プログラムすべてに浸透させられるエンパワーメントがあるかどうかだ。このビジョンの浸透力あってはじめて、グローバルな見地に立ったビジョンだし、アクションプランが学内外でシナジー効果を発揮する。 ◆ その点、「かえつ有明」は、「国際的に活躍する、真のエリートを育てる」というビジョンを学内外に広めるエンパワーメントがある。校長先生のクールビズは、「環境にやさし」というキーワードを常に意識している証であるが、それは教育空間や教育施設にまで浸透している。一瞬一瞬の環境に対する配慮を意識できる教職員・生徒の存在こそエコスクール以上のエコスクールだろう。また、もてなす教職員のやわらかい心の現れ。これが実によい。受験生や保護者を一丸となってもてなすそのしぐさの中に、やわらかさがあった。また説明をする先生方と司会を担当された先生の互いをフォローし合う姿も自然だった。 ◆ 何より、ホールにいる生徒たちにその都度話しかけながら、君たちが新しい「かえつ有明」を創っていくんだというセルフエスティームを喚起する説明を展開していく手法もよかった。生徒募集概要を説明する先生の手法も興味深い。生徒募集概要の説明というものはたいてい機械的になる。資料を見ればわかるじゃないかというような説明が一般的なのだが、「かえつ有明」の説明は違った。新しい学校の教育活動にあわせて入り口である入試の募集も考えて組み立てたということが、受験生や保護者の立場から語られるというやわらかいプレゼンだったのである。 ◆ この「やわらかさ」「自然体」の表現が「かえつ有明」のステイクホルダーすべての心身に浸透しているということが、きわめて重要である。これは「寛容」というキーワードに結びつくからである。「かえつ有明」は男子には「武道」を、女子には「礼法」をというカリキュラムを準備しているが、これは男女の差をつけることが目的ではない。思春期という発達段階では、男子と女子の成長の仕方が異なる。だから男子には男子に適合した素材を、女子には女子に適合した素材を用意するということなのである。「武道」や「礼法」は素材であって、この素材を通して「道」ということを体得するチャンスを作るということなのだろう。この「道」の体得。国際的には「道の形而上学」としてキリスト教に通じるものを感じ取られているし、TAOとして中国をはじめとするアジアの文化にも通じているといわれている。 ◆ そしてこの「道」は、これからの国際社会では「寛容」を育成する道として大変重要な要素になる。21世紀の社会のキーワードは、Talent、Technology、そしてToleranceである。「かえつ有明」にはまずこのTolerance=寛容がすでに学内全体に浸透しているのである。「国際的に活躍する、真のエリートを育てる」というビジョンが実現するための基盤ができあがっているということである。これが100年以上かけて醸成されてきた不易の部分だろう。 ◆ そしてこの不易の上に流行を構築する。TalentとTechnologyを。この戦略の準備も十分であった。中でも次の3つは傑出している。(1)「サイエンス」という先進科目の設置(2)キャリアデザインプログラムの編集(3)学習支援センターの設置。 ◆ この3つは、実は校舎移転という戦略がまずは前提である。このことによって、有明という都市を活用できるからである。日本科学未来博物館(館長は毛利さん)、パナソニックセンターの有効活用がそれである。もちろんただ見学するための利用ではない。各館のスタッフや施設すべてをリソースとして、実習・実験(explore)、議論(exchange)発表(express)というMITラボの3X発想に基づいた新しい学習プログラムの展開が準備されているようだ。 ◆ これは国語科と理科の先生方のコラボレーションによってできあがるが、3Xという学習過程を活用することで、単なる合科としての「サイエンス」ではなく、ものの見方を確立し拡大する複眼思考を養う先進科目として成立するのである。これは開成学園のI先生が常に意識していることと相通ずる。総合的な学習はとかく教科どうしの単純な合科となりやすい。大事なことは認識論(思考のフィルターと考えるとわかりやすいかもしれない)と学習活動の融合である。足し算ではなく積なのだという意識である。「かえつ有明」は開成や女子学院を独自路線で超越しようと考えているようだが、それは口だけではないようだ。 ◆ (2)のキャリアデザインプログラムの編集と(3)の学習支援センターの設置については、今回の移転のきっかけは現状校舎に隣接している法政大学との話し合いによるもののようであるから、その過程の中で経営的論点ばかりではなく、教育的論点も議題としてあがっていたのだろう。そこから誕生した画期的なプログラムなのではないだろうか。法政大学には2003年に設置された新発想のキャリア・デザイン学部がある。産業構造の水面下でのダイナミックな変化に対応していち早く作った法政大学の戦略的な学部であるが、ここのノウハウと大学生をリソースとして連携活用して、キャリアデザインプログラムの実践と学習支援センターの運営をしていくのではないだろうか。詳しくはこれからだということである。今後の説明会が楽しみだ。 ◆ さて説明会で最も強調されていたことは、理系重視の進学校になるということと総合進学コースと難関大学進学コースを設置し、全員をMARCH以上の大学に合格させるという決意であった。具体的に言うと、定員が120名であるから、120名はMARCH以上に合格するというのである。そして、難関大学進学コースは30名であり、その50%は国公立、早稲田、慶応、上智、東京理科大学に合格するようなカリキュラムにするというのであるから、15名以上は早慶上智以上ということになる。 ◆ こんなことができるのか?無謀ではないか?と思われるかもしれない。それは一般試験だけ考えるとそうなのかもしれないが、2007年大学全入時代を迎えるにあたり、危機感を抱いている大学の入試改革はすさまじいものがあり、その情報を巧みに活用すれば可能かもしれないという戦略が「かえつ有明」のブレインの中にはあるのだろう。 ◆ すでに慶応大学法学部は来春から、従来のAO入試に論述形式の試験、グループディスカッション、自己プレゼンテーションを通じて理解力、表現力、コミュニケーション能力などを評価する内容を加えたFIT入試を行うことを発表している。2010年以降、司法試験は新司法試験一本になり、試験というものの概念が大幅に変わる時代を迎えるのであり、これにともない大学入試も知識偏重型の問題を出題しないようになっていくはずである。アメリカの大学適性検査であるSATも実は大幅に試験内容が変化し、3X型(explore・exchange・express)になっていきている。「かえつ有明」の一期生が卒業する頃には、大学入試は一変しているだろう。未来のキャリア指導を見据えなければ、生徒たちのキャリア・デザインを最適化できない時代がやってきている。そこに目をつけたのが、嘉悦克校長先生率いる教師陣だろう。 ◆ 理系重視とか難関大学とかいうようなキーワード自身は、一見すると20世紀型の教育を推し進めるというイメージであるが、それは学校説明会に参加する保護者や生徒にある程度わかるキーワードを選ばなければならないという妥当性を考えてのことだろう。おそらく説明会を重ねるごとに、「かえつ有明」の本当の新しさを理解する保護者が多くなり、「かえつ有明」の先生方ご自身が、自らを≪未来を創る学校≫であると標榜できるときが来るだろう。新しい学校は新しい皮袋にいれなければならない。つまり新しい≪学校選択リテラシー≫で見る必要がある。保護者(というより保護者が頼りにしている情報源である塾なのかもしれない)は、新しい学校を古い「学校選択基準=偏差値あるいは大学進学実績」で見続けることは、子どもたちの未来を潰すことにもなりかねないのだということに早く気づくべきなのである。 |
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