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学校探し(12)〜未知の学校、海陽学園

2004年11月12日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)


■ 2006年、愛知県蒲郡市の海辺というロケーションの中に、新しい中等教育学校である「海陽学園」が開設される。今年10月、県の承認を得ることができたそうだ。トヨタと他2社が共同して同学園の設立構想を立ち上げ、世間にその期待を抱かせたことは、ここで言うまでもないだろう。

■ 同10月には、海陽学園設立準備委員会は、(財)海陽学園設立準備財団に改組し、開校に向けたアクションが促進されるようだ。学校設立趣旨賛同の大企業も、現在81社になっており、学校法人という形態をとりながらも、やることは大企業経営の手法である。

■ 日本の私立中高一貫校は、生徒1人年間100万円から150万円(補助金も含め)のコストがかかるが、海陽学園がモデルにしているアメリカのプレップスクールなどは350万円以上かかる。全寮制の同学園も実際にはこのぐらいかけるつもりでいるのだろう。とはいっても、生徒の保護者からこんなにもらうわけにはいかない。日本の学校のコストという常識が壁となっているからだ。

■ プレップスクールもそうだ。たしかに日本よりは高いが、生徒収入以上にお金をかけているところがほとんどだろう。ただ、それができてしまうのは、寄付で経営を成り立たせる手法が確立しているからである。こういうノウハウは、制度上の問題もあり、日本ではほとんど持ちえていなかっただろう。海陽学園はこの部分を大企業の連帯で乗り切ろうとしているのかもしれない。

■ イギリスのパブリックスクールやプレップスクールのミッションは、「リーダー育成」を必ず掲げる。歯切れは悪いが、海陽学園も「リーダーに必要な人格と学力を養成する」と新しくできたコンセプトブックの中で謳っている。海陽学園の校長に就任することが予定されている伊豆山健夫先生は(もと開成学園校長)は「目標は、まじめで心揺るがない『真のリーダー』育成」と語る。いずれにしても、どんなリーダーかは見えてこない。これは海陽学園の問題ではなく、日本の社会の問題である。イギリスやアメリカでリーダーというと、どういうリーダー像を描くのかその議論がなされているので、どういう文脈上のリーダーを掲げているのか、それぞれの学校の歴史を調べればだいたいの予想はつくものである。(そもそも欧米人にとって理想のリーダー像として越えられないのがイエス・キリストだから、奥が深いし同時にわかりやすいリーダー・基礎コードを文化的に共有してしまっているからということもある。)

■ しかし、戦後の日本は、学力論も、リーダー論も「まじめで心揺るがない」議論をしてきたことがない。そのため、各学校の校長先生を通して、その思いは伝わってくるが、果たして本当に「グローバリゼーションの渦の中で、渦に巻き込まれず確固たる信念を基に立ち、価値観や文化、習慣が異なる人たちと渡り合っていくことができる」のだろうか。

■ それに「渦に巻き込まれず」というのはリーダー的資質として適切なのだろうか。企業リーダーとしてということだろうか。ハーバードビジネスのリーダー論は、すべての市民のためのリーダー論ではなく、あくまで企業リーダー論だろうが、それでも「渦」を引き受ける大きさをリーダーに求めているように思える。

■ 企業市民リーダーではなく世界市民リーダーを輩出するミッションが学校法人である以上必要であろう。(財)海陽学園設立準備財団の方々は、ビジネス書のリーダー論ばかりではなく、サイードなどの文化人の描くリーダー論なども幅広く研究し、校長の提唱する質実剛健な「真のリーダー」を輩出する学園を構築して欲しい。大いに期待している。



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