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開成学園の学問的な授業

2004年3月17日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)


◆ 今年も開成学園から東京大学に進学する生徒がたくさん輩出された。同学園から東京大学に合格する勉強タイプは2つあるようだ。開成学園の学問的な授業を中心に自分なりの学問的方法論を身につけながら学んでいくタイプ(以降「学問タイプ」)が1つ。あたかも同学園の生徒のために存在するかのような塾でいわゆる受験勉強をするタイプ(以降「受験タイプ」)がもう1つ。

◆ かつて世間や一部のマスコミは両者のうち「受験タイプ」の側面のみを強調してきたきらいがあるが、今ではそのような開成学園のイメージは幻想にすぎないと一笑に付す理解者も多いという。というのも同学園の説明会では、「学問的な授業」のプロセスが公開され始めたからである。

◆ 毎年開成学園では数多くの講演会がある。各界で活躍している先輩方が訪れ、広い視野の話や人生の冒険談、学園の思い出話などで大いに盛り上がるらしい。講演を聞いた後、生徒達は思い思いに感想を書くが、およそ1000字の小論文形式になっていて、「ようこそ先輩」という論集冊子にまとめられる。職業観や社会批判、母校に対する思いなど様々であるが同級生の感じ方や考え方を共有できる。

◆ 開成の界隈をリサーチし、地域都市に対する現状と展望について報告書を編集する授業もある。これも「地理研究−『総合的な学習』としての地域学習、開成の界隈:あるく・しる・かんがえる」という冊子にまとめられる。10年ほど前から西日暮里から谷中を経由して上野に行く散策をしたり、葛飾区の郷土と天文の博物館を訪れたりして、生徒1人ひとりが興味を持ったことについて、調べていく。フィールドワーク、インタビュー、文献の調査、インターネットなどの活用を通じて、調査資料を収集、整理、分析、編集する一連の過程を体験するという。まさに学問的な学習である。

◆ もちろん、このような学問的な学習は、各教科の授業でも行われている。大事なことは、知識の継承後、教師と生徒達の問答を経て、新しい体系やルールの再構築を生徒達なりに挑戦することだ。知識は新しく組み換えるという挑戦をしなければ活用できないという。こういう授業をベースに自分なりに「学問タイプ」の勉強をして東京大学に進学していくのも開成学園の1つの大いなる現実なのである。

◆ ともかく、上記のような冊子は6年間で10冊は編集されるという。1冊に掲載する文章を編集するのに費やされる思考の時空は膨大である。もちろん、それと共に読書量も増える。6年間の授業で扱うだけで、生徒は160冊は読まねばならない。そして自分でそれ以上の読書をしなければ小論文は編集できないという。開成学園が授業で活用するプリントは6年間で180万枚ほどになるらしい。教員の教科を突き抜ける学問に対する態度。今も昔も、同学園の授業そのものが、今流行のしかし決して表面的ではない「総合的な学習」=「学問タイプの学習」なのである。

◆ 今年の3.30セミナーの打ち合わせをさせていただく目的で、橋本先生をお訪ねした。西日暮里から上野まで、さまざまな史跡や今は埋め立てられて見えなくなっている水上都市江戸の街並みや地形、日本語と英語の言語文化的な相違などについて、先生に導かれながら散策した。開成学園の学問的な授業の奥儀が開陳されたのではないかと感銘を受けたひと時であった。



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