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教育の大転換(81)〜自由の森学園の普遍的でいつまでも新しい試み

2003年12月16日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)


■ 明治時代、鎖国が解かれた日本に冒険的精神と知的精神旺盛な欧米人が日本を訪れたとき、彼らは口々にここはアルカディア(桃源郷)だと感嘆したという。彼らが目にしたのは、江戸に大小ひしめく大名庭園だったし、豊かな緑あふれる農村風景だった。人々の生活から交易まで支える水上ネットワークインフラだった。そして宇宙を精神に取り組む様々な道のパフォーマンス、つまりアートだった。

■ 自然と社会と人間の精神がエコロジカルにつながっている文化を丸ごと感じたに違いない。あの異才のガタリが明治時代を見たなら、なんと自分の哲学の全貌がここにあるじゃないかと驚いただろうに。

■ 自由の森学園(以降「自森」)に訪れたとき、その自然の豊かさ、ビオトープ、人間関係の問題や自然に関する考察のための生徒達の議論の風景、図書室で書物に埋没する生徒、自然に包まれながら何か感じた宇宙を筆で表現している生徒、大木を人間の世界に取り込むアートを大きな鋸で演じている生徒に出会った。あちらこちらで対話の声が聞こえ、ここかしこで歌声とグランドピアノからの曲が響きわたっていた。そして図書室に無造作に置かれているインタネットにはいる数々の端末。

■ 行き交う教師たちの表情は穏やか。しかし、その目は、君はこの大きな地球に含まれている。世界に存在している。世界の声に耳を澄まそう。向こうの山々のかなたの叫びが聞こえるかい。理想のない現実はない。理想のない現実を生きるところに自由はないのさ。あの叫びは自由を得ようとする欲求だ、と語りかけてくる。

■ 実際、自森のキャンパスや校舎は、議論と表現であふれている。表現はもちろん、絵や音楽だけではない。いたるところに生徒と教師が書いた膨大なエッセイや論文が積んである。ここはまさに知のアルカディアだったのである。

■ 自森の教育的価値について正当な評価や認識をもてるかは、今後の日本の教育の行方を決めるかもしれない。ニュースキャスターの筑紫哲也は、今日の大学生達の世界認識軽チャーショックを受け、マスメディアの力のなさに絶望しているらしい。そんな彼が自森を取材して、涙を流した。ここには日本の希望があるじゃないかと。彼の自森の感想を載せよう。

■ 「自由の森学園の生徒達の雰囲気は欧米の学校のような自由に意見を言えるものがある。卒業後の夢を持ち、はっきりとした意志を持っている若者が多いという印象を持った。今までの日本の高校生にはない、堂々と自分を語れる若者達が育っている学校だ」(2000年2月17日「こころのスペシャル」放送後の感想)

■ 大事なことは自由も夢も幻想ではないことだ。自森創設者の遠藤豊は、「理論的なものと実践的なものとを結合させながら次第に高い認識にどう案内するかということにつきる」と語っている。自森に行けば、次第に高い認識に生徒達が歩んでいる過程に遭遇できる。今までの日本の高校にはない、堂々と自分を語れる若者達が育っている過程が筑紫哲也の絶望の眼に飛び込んできたのである。



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