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2003年中学入試から見える変化(25)
愛光の教育改革の成功

2003年3月19日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)


■ 今年もサンデー毎日は、東大前期日程の合格結果を公表した。同誌のデータから計算すると、現役合格率が最も高い学校は、私立の愛光である。合格者32人中30人が現役ということである。昨年の合格者22人に比べるとその躍進振りも凄まじいが、愛光の実力からいえば、復活したとか巻き返したという表現が適当なのかもしれない。

■ 同誌によると、昨年に比べ合格者数を増やした学校(30人以上合格者を出した学校の中で)は、開成、筑波大付駒場、麻布、栄光学園、桐朋、岡崎、東大寺学園、愛光。減らした学校、もしくは変わらなかった学校は、灘、桜蔭、ラ・サール、駒場東邦、海城、桐蔭、洛南、聖光学院、巣鴨、土浦第一。この明暗を分けた理由は、経済的な理由や前期日程の数学の問題の難しさにあったようであるが、本当のところはどうだろう。

■ たしかに数学の問題の難しさは大きな理由になるだろうが、経済的な理由についてはどうであろうか。これは経済的な条件で方針を変えるということであろう。このこと自体は極めて合理的だし、予見可能性や計算可能性を大事にしているということであろう。今年の東大の合格者の明暗。この東大合格の数自体に関しては、大した重要問題は横たわっていないし、東大が何だというのだろうという議論もあるとは思うが、ただ、上記の色分けは、それぞれの学校の教育理念の性格の色分けになっているのである。そこがおもしろい。

■ どの学校も自己実現を果たすことや社会に役立つことを理念に掲げているが、自己実現のレベルや社会にどのように役に立つかという意味が違うのである。道の哲学という意味で自己実現を果たすのか、経済的に自己実現を果たすのか。人類愛とか自己犠牲も辞さないとかいう意味で社会に貢献するのか、経済的に社会に貢献するのか。どちらの道も学校選択の際、それは私事の自己決定なのだから、OKなのだが、このような違いが鮮明に表れる現象がなかっただけに、今回の東大前期日程の合格結果は、非常におもしろい。

■ 同じカトリック校でも、愛光や栄光は、キリスト教的な思想や行いを生徒にも理解してもらおうと教育現場でもいろいろと苦労しているが、ラ・サールや聖光学院は、教育理念は教育理念、教育現場は教育現場とおそらくすっきり分けて考えているだろう。

■ 愛光の教育理念や教育経営をしっかり保守している寅岡先生は次のように語ってくれた。「共学2年目を迎え、女子の受験生も増え、生徒募集という入り口の部分でも、進学という出口の部分でも大成功でした。進学の実績は、膨大な知識とそれを活用し、創造していく知の光を守る今までの教育方針が正しかったことを証明してくれました。そして入り口の成功は、私たちの新しい取り組みを評価してもらえたと考えています」と。

■ それにしても、カトリックの二大修道会の不易流行の姿勢には、畏怖、畏敬を感じる。日本では両者の修道会、つまりドミニコ会(愛光)とイエズス会(栄光)の関係など気にする人はいないだろうが、地球規模の歴史からすれば、それはそれはおもしろい活躍を昔も今も果たしている。スペインから遠くはなれた東の果ての小さな国の教育においても、なおその影響を与えているとは。世界史的教養や哲学的、心理学的、芸術的、社会学的素養、科学史的視角が、学校選択において必要である。子どもの学習環境や学習権を保守するには、それなりにおもしろい勉強が待っているということなのである。



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