私学Bracketing 私立中高一貫校研究 学校選択を考える 入試について 学力を考える 学びを考える
フランク・ロイド・ライトとの対話 これからの教材 企業と経済研究 入試に役立つ読書 未来を創る学校 ホンマのエッセイ





2003年中学入試から見える変化(17)
〜「教育2006年問題」対応を考える郁文館学園

2003年2月12日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)


■ 数え切れないほどの制度改革が実施され、2006年には現状では想像できないような変化が起きているだろうと予想する私学人がいる。郁文館学園常務理事の中村尚志氏である。氏は、さまざまな改革のうち公立の中高一貫校や東京都の都立高校改革(特に進学重点校の政策)の衝撃が平成17年に私学にやってくると予想し、17年問題と名づけている。

■ 中村氏は、中学受験生のうち2000人は、公立中高一貫校を中心に、公立学校を選択するのではないかと懸念する。しかもそのほとんどは、男子だろうと。たしかに女子よりも男子をもつ家庭はコストパフォーマンスを優先して学校を選択する傾向にあると言われている。年々厳しくなっていく私立中学入試募集の現状からすると、2000人が公立に移動するとしたら、それは死活問題である。

■ しかし一方で、このように私立中学入試募集の状況を厳しく冷静に分析できているからこそ郁文館学園はうまくいっているのではないだろうか。入り口も出口も、つまり生徒募集も大学進学実績も好調なのだ。教育の中身がよいから生徒が集まる。教育の質が高いから大学進学実績もアップするという最適な循環が生まれているわけである。

■ 教育の質の良さを象徴しているのは、剣道場や柔道場であり、4階建ての総合学習センターである。気概の育成と複眼思考の形成が行われる教育環境があると、見学するや納得できる。そして、この教育の質の結実が、中3の卒業論文である。道を求める気概と自ら調べ、友人どうし議論し、探究できる環境、そして1対1で指導する教師の力量が合わさって、膨大な量の卒業論文が生み出される。修士論文かと思うほどよい出来のものも創られている。

■ 中村氏は、この生徒の取り組む姿勢を、参師問法だと表現する。自ら問題を発見し、調べ、師に仰ぎ、自ら解決する探究のプロセスを中学3年で体験するというのである。実際、生徒にとって、この体験は大変な自信につながり、進路を考えるうえでも役に立つという話である。今年すでに自己推薦で早稲田大学に合格した生徒は、中3当時、最優秀の論文を編集したということである。

■ このように順風満帆な教育活動を遂行している郁文館学園であるにもかかわらず、中村氏は、もっともっと改革する必要があると考えている。この悪条件の時代に、うまくいっているからこそ、改革の体力があるはずである。今手綱を緩めるべきときではないのだと考えているようだ。氏の眼差しは、現状の分析に基づいて学園の未来をしっかり見つめている。氏の意志を、現場の教師が継承することを大いに期待したい。



私学Bracketing 目次へ