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学校選択の大変化〜反動的傾向は長続きするか

2005年12月20日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

◆ 今、マスコミは大学歴だけではなく、中高歴も大々的に取り上げている。11月にはフラッシュが国会議員の出身高校をリスト化して公表。その後続いて発行されたのが、プレジデントの別冊「プレジデントFamily」。「夢を広げる学校選び」という特集を組んだが、「東大生の100人の小中学校時代」などという東大に入ることが夢を広げることだと勘違いしかねない記事を掲載した。とにかくテーマは「偏差値50台でも東大、京大に入れるぞ!全国500校掲載」というものだった。また今週のサンデー毎日(2006年1月1日号)では「勝ち組企業に強い中高一貫校ベストランキング」という記事が出た。

◆ どうやらマスコミは東大、京大、勝ち組企業に入ることを目標とした学校探しに極端に走っているようだ。しかし、これは編集上のマーケティングの結果、売れる記事を書くわけだから、世相の嗜好性を表現しているともいえる。空白の10年間を経て、21世紀に入りエクセレントスクール、クオリティスクールの流れがせっかくできてきたのに、結局伝統的ブランド校やエリートスクールの学校選択傾向という反動が生まれている。これは総合的学習を追いやり、トレーニング学習に回帰しようという公立中学校の動きにも呼応しているかのようだ。

◆ それはともかく、実際、昨年12月と今年11月のセンター模試の結果(同月の比較をすべきだが、データがうまくそろわなかったため、1ヶ月のズレがでた。ただ傾向的には大きく変わらないはずだ)から、4つの学校カテゴリーそれぞれの中で、前年比90%を越えている学校の割合を比較したグラフを作ってみると、そのような反動的傾向がはっきりみえる。

◆ 【グラフ−1】は男子が選択する傾向を表している。男子校と共学校を合わせたデータを活用した。同様に女子が選択する傾向を表したのが【グラフ−2】。男子の学校選択の傾向としてはクオリティスクールは選ばれないという結果になった。大学合格実績とネームバリューとか伝統を選択するという傾向に逆戻りだ。女子は男子とは違って、まだクオリティを重視。しかし同時にエリートスクールという大学合格実績重視のカリキュラムを有している学校も選択されるようになっている。

◆ このような反動的傾向は、経済の動向の影響を大きく受けているのではないだろうか。私立中高一貫校に通わせられる家庭の年収は、少なくとも800万円はあるだろう。企業の中の役職グループとしては部課長クラス以上が多いと思う。そして、この層は、経済的な影響に対するセンサーが働く。つまりリスクに対してどのような防衛をするかをいつも考えているし、その防衛は家庭を守るためにも活用される。それがまた子どもの将来を考える大前提にもなるのだ。

◆ リスクをどのように回避するか。大きく2つに分けることができるが、その前に、この層が意識している日本の経済の見通しを少し考えてみよう。景気は上向きだと言われているし、株価も歴史的大転換を果たしたとされているが、それは一部の企業であることは職場の中で実感している。たとえ量的緩和が解除されても金利はそんなに上がらないと見通しを立てている方が多いだろう。金利の安いおもしろみのない経済は海外からの評価も低い。したがって、円安はしばらく続く。円安は日本の自動車産業を中心とするものづくり産業にとってはプラスだが、それに比べソフト産業の輸出は振るわない。国際社会の中で情報化社会からどんどん縁遠くなっていく。しかも、アメリカ、アジアの輸出は増えているが、EU方面への輸出は減っている。

◆ EUへの関心が低いということは文化やクオリティへの興味も薄れ始めているかもしれないということだ。自然と目は国内に限られてくる。そして大増税時代、年金への不安時代到来。ますます国内での2極化現象は強まるばかり。個人投資家への道も開かれたとはいうものの、一般人に投資の情報が入ってくる間には5段階くらいのフィルターを通して伝達される。結局情報格差ではなく、情報搾取という情報化社会ではあってはならない日本の金融市場の現状は変わらない。

◆ とするならば、勝ち組企業に入って、そこで一定水準の年収を確保するのがリスク回避ではないだろうかというところに落ち着く。同時に、これはラットレースに参加することでもある。すべてを犠牲にして働きつづけるということ。だがしかし、ラットレースで走りつづけている限りは、生きていけるではないか。こういうリスク回避を選択するとなると、もしかしたらエリートスクールやトラディショナルスクールは、そういう道に直結するかもしれない、あるいは確率が高いかもしれないと計算する。

◆ 一方、ラットレースに参加しないで、生きていきたいというリスク回避の道もある。それは海外に生活の拠点を移動することである。特にEU社会で生きていこうと決断したら、ラットレースとは全く違う生活が待っているかもしれない。日本は島国がゆえにそんなことをするには勇気がいるのではないかと思うかもしれないが、ヨーロッパ人は陸続きなので、国を超えて生活するのはそれほど苦ではない。だいたいアメリカという国は入植の国、移民の国ではないか。国内の中で勝ち組だ負け組だと騒いでいてもしかたがないというようなリスク回避の道もあるのである。この道を選ぶとなると、クオリティスクールを選択することになるだろう。空白の10年間は、勝ち組も負け組もなかったわけだから、海外に目を向ける傾向は、今よりも大きかったかもしれない。しかし今は円安だ。国内のビジネスがどうしても気にかかる。

◆ そこでどっちの道にも進めるというのがエクセレントスクール。この学校は全体の17%を占めるが、時代がどのように変わっても、このカテゴリーの学校の選択は不動である。知識も知恵も、技術も哲学も、テクノロジーもクリエイティビィティも、ともかく口だけではなく、実際に2方向のベクトルを1つのベクトルに統合できる学校なのだから当然だ。というよりも、このカテゴリーの学校を選択する生徒たち(あるいは保護者)は、そもそも官僚や医者、法律家、学者の道に進むことを想定している場合がほとんどで、一般的な経済ゾーンには、はじめからいないのかもしれない。

◆ さて、以上のような反動的傾向は長続きするだろうか。おそらく米国大統領選挙の行われる2008年までは一進一退という状況で続くだろう。落ちこぼれを作らないというブッシュ政権の教育政策は見事に失敗していると聞き及ぶ。だから、次の政権は方向転換をするに違いない。ブッシュ政権の教育政策の基本は、結局、知識重視主義。それで文部科学省は慌ててアメリカ型に合わせるべく方向転換をしたわけだが。そして2009年、再び行われるOECD/PISAの読解リテラシーの調査によって、覚えてから考えるという二元論的学習観から考えるプロセスの中で知識も増えていくというネットワーク型学習観に完全にシフトするとき、反動的傾向は姿を消すことだろう。もっとも未来に絶対はない。そのように創っていこうとする意志が大事なのではあるが。

※関連ホンマノオト→2005年9月15日「2005年学校選択クオリティー指標 」
http://eri.netty.ne.jp/honmanote/selection/2005/0915.htm


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