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| 武蔵野女子学院中学・高等学校 |
| by 本間勇人(honma@netty.ne.jp) |
| 武蔵野女学院には全体を俯瞰する眼を養う感覚が育つ本来的な環境がある
朝、校門から緑緑とした並木道を歩きながら登校する生徒たちと話した。 「A先生知ってる?」「はい」と笑顔。 「じゃあ、O先生は」彼女たちは背筋を伸ばして「知ってます」 「S先生は?」今度は顔を見合わせ、くすくすと表情が和らいだ。 「武蔵野女学院の敷地は広いし、樹木は生い茂っているし、色とりどりの花がきれいですね」 彼女たちは、いっせいに「はい」 「みんなは、この学校のどんなところがよいと思う?」 「先生がみんなやさしいところ」と意外な回答。広大な敷地と自然の中で尋ねてみたので、庭園や学校の施設について返ってくるかなと予想していた。まさか先生の話になるとは思っていなかったからだ。 武蔵野女学院の特徴は、この生徒たちとの会話に象徴されるように、先生と生徒たちの対話とそれを豊かにする空間の贅沢さにある。 広大な敷地と自然は、ゆったりと話し合う時間をつくるし、身体で四季の風や香りを感じ、色を目にすることを可能にする。身体はリラックスし、小さなことにも気遣う気持ちが生まれてくる。自然に包まれる感覚がそうするのだ。 中高の校舎の入り口を入ると、いきなり校舎に囲まれたかわいらしい空間が広がる。ここは、毎年、後夜祭の劇場空間となる。観客である生徒たちや先生方は四方を囲んだ校舎からそこで演じている生徒たちを眺めいる。しかし、ふだんから、ここを通る生徒たちは、校舎からの目線を何気なく感じるし、校舎に入れば、今度は自分たちが眺める目線になっている。こうして受け入れられる感覚と受け入れる感覚の反転はかかわり合いの根源的ありかたとなる。 中高の入り口にいたるまでの自然の小道と入り口から広がる巧まれた空間が、生徒たち一人ひとりの成長に与える影響ははかりしれない。 校舎の中の廊下や部屋もさまざまな工夫が凝らされている。生徒と先生が話せる談話室。生徒と生徒がおしゃべりできる廊下沿いにつけられているベンチ。おしゃれな食器で、自分たちが作った料理を食べられる調理室。庭師顔負けのガーデニングは生徒たち協働の賜物。自分を見つめることのできる小部屋。知を探求する図書室。ここは、わざわざ自然採光に近いやわらかい光でつつまれている。音楽の時間でも使える機能を備えたパソコン・ルーム。講堂にはパイプオルガン。生徒たちは自由に鍵盤に触れ、自然の風が音に変容する瞬間を身体で感じることができる。 たしかに工夫がほどこされた空間には、先生方のやさしいまなざしが随所にある。生徒たちの感覚を豊かにする空間作りは、ものごとを受け入れる態勢を生徒たちが身につけるのに必要である。生徒たちが自然と話し合いたくなるような空間があれば、彼女たちはコミュニケーションのおもしろさを学べる。ピーターラビットの絵が飾ってある談話室は、自分の表現を聞いてもらえるリラックスした大切な空間。瞑想でもできそうな自分を見つめるための小部屋や静かな茶室や図書室は、自分を深める空間でもある。 自然に抱かれ自然を愛でる感覚、互いに受け入れ受け入れられる感覚、自分を深め表現する感覚。このような感覚は武蔵野女子学院の広く深い環境から生まれる。 この本来的な環境に基づいて、武蔵野女学院のカリキュラムの実践、クラブやイベントの実践が行われる。今、要素分解的な教科専門主義ではなく、全体を俯瞰する眼をどう育てるかが、問い返されている。21世紀の教育のヒントは、この全体を俯瞰する技術の前提になる豊かで繊細な感覚を育てる武蔵野女学院にあるだろう。 |
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