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≪未来を創る学校2005≫を振り返る(16)

2006年1月12日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

◆ 香蘭女学校から軽井沢に話が飛んだが、この地には多くの私立中高一貫校の寮や別荘がある。たとえば、女子聖学院や。追分には三輪田学園の寮がある。寮といっても体育館もあって、ちょっとした寮制学校である。堀辰雄の記念館も近くにあり、日本文学の香高い地である。

◆ 毎夏、合宿があり、自分を見つめることの大切さなどを学ぶ。クラブ活動なども活発に行われ、生徒たちは、いつもの都心のキャンパスとは違う自然の中で、仲間を作り、自分を見つめ、「誠の道を歩む」時間を楽しんでいるのだろう。

◆ ただし、都心のキャンパスも江戸城の外郭に位置し、キャンパスの敷地ももとは大名庭園。面影は残っていないが、そのコンセプトは茶室や東屋やホール、カフェテリアや回廊式の校舎の配置に体現されている。やがては新校舎にシフトすると聞き及ぶが、おそらくコンセプトそのものは不易だと勝手に思っている。

◆ 教育空間作りのこの一貫した構想力こそ、三輪田学園の特徴の1つである。西校長先生は、何事も両側面を明快に論じ、それを統合するという志向性の持ち主である。たとえば、教育空間の構想にそれは現われている。三輪田学園の精神的ルーツである陽明学的な江戸の思考と情緒、道を大切にする一方で、近代欧米的な芸術性や知性も重んじる。

◆ 進路指導にしても、広義の「生き方」指導と狭義の「進学」指導を明快に分ける。そのうえで、先生と生徒どうしの対話をコマ目に実行していく。対話が成り立つには共通したキーワードや考え方を相互にもつ必要がある(だからこそ個性を互いに尊重し合えるのだが)。そのために、骨太の読書指導が行われる。国語と社会で教科を横断して実行されるのだが、学校全体として取り組むことによって、スクール・アイデンティティが形成される。つまりこのような言語活動で進路指導の両側面は統合されていくのである。

◆ さて、この読書指導と並行して道徳教育が行われるが、これはどちらかというと批判的思考の眼を養うのが目的で、公立学校とはかなり質的に違いがある。アダム・スミスの道徳感情論などがどこかにベースとしてあるので、市民社会としての市場の倫理観に通じるものがある。

◆ この市民社会的発想の前提があるからこそ、三輪田学園のもう1つの大きな特徴である全学で取り組むボランティア活動が成立する。これは「生き方」進路指導にもつながる重要な活動であり、やはりこういう言語活動が、三輪田学園の教育の不易と流行を生き生きと、つまり有機的に結びつけることになる。このように日本文化や日本の思想と欧米の文化や思想が統合されている三輪田学園の教育は、21世紀のグローバリゼーションの中で、注目される可能性が大いにあるだろう。

(つづく)



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