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麻布の科学

2005年10月24日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

■ 麻布学園は、教師やOBが「麻布文庫」を執筆し出版している。1冊500円で学園事務室で販売している。詳細は麻布学園のサイトをご覧になるとよい。現在9冊が発刊されていて、どれも興味深いものばかりだが、その中で知の再構築を意味する「君たちの地球はどうなっているのか そして、どうなっていくのか――かけがえのない地球――」という麻布文庫は必見である。

■ 麻布学園の理科の教師山賀進先生が執筆されている。高校1年生の理科の授業のいくつかをベースにまとめたものだけに、同学園の見識の広さ深さを知る手がかりになるし、麻布のカリキュラムやその顔である入試問題の知のシステムがはっきりわかる。

■ 第1章の「人口と食糧」などはとても理科の授業の枠組みに納まっているとは思えない。理科の枠組みを越えているように思える。しかし、科学という視点で見れば、立派な理科の授業である。私たちは授業というと教科書に書かれている内容の深さや練習問題の難易度でしか判断しないように習慣づけられているが、事象をあらゆる角度から検証するというのが科学的態度だとしたら、一般的な理科は科学のほんの一部を勉強していると言うほかない。そんなことに気づかされる麻布の理科の授業は、保守本道の科学の時空なのであろう。

■ 人口爆発の歴史を太陽エネルギーのインプット→アウトプットという簡単なシステムからフィードバックという回路を備えた複雑なシステムにパラダイムシフトする点を切り口にして検証したり、人口増加を方程式を自ら作って予想したり、それと太陽エネルギーで算出した食糧の量とを組み合わせて、宇宙船地球号の定員を算出したり、豚と牛の太陽エネルギー消費量から南北問題を考察したりと「滅茶苦茶」楽しい。

■ 地球温暖化にしても、温暖化楽観論と温暖化悲観論の両方をデータ的に検証して、長い地球史からみて判断が難しい点を導き出したりする科学者の目に感銘を受ける。そうかと思えばグスコーブドリの伝記の話題に飛んだりする。地球温暖化とCO2の関係について宮沢賢治はすでに知っていたようだという仮説もおもしろい。

■ 山賀先生いわく「地球温暖化に代表される環境問題はたんに自然科学の問題ではなく、経済問題・社会問題でもあり、さらには政治問題・国際問題でもある。つまり、有限な地球の中で経済格差をどうするかという南北問題(資源と人口を巡る先進国と発展途上国の利害の対立)でもあり、これまた有限な地球の中でツケを後に回してしまうという世代間の問題でもある。それに東西文化(宗教観・自然観)の違いが加わる。「『社会主義』の弊害」が明らかになった今日、今度は「資本主義の幻想」をも打破しなくてはならない。」麻布の理科の授業は、社会科学と自然科学のインターフェースだったのである。

■ クロス・カリキュラム・コンピテンスというOECD/PISAのプランなどとっくに実施していたのであり、総合的な学習などというものもすでに授業の中に織り込み済みだったのである。だから、総合的な学習の時間は、もっとおもしろい特別授業とトランスフォームしたわけである。



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