私立中高一貫校研究 私学Bracketing 学校選択を考える 入試について 学力を考える 学びを考える
教育と経済 フランク・ロイド・ライトとの対話 これからの教材 企業と経済研究 入試に役立つ読書 未来を創る学校





麻布OBが語る「麻布の教育」

2005年10月21日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

◆ 元麻布学園教諭の佐藤勝氏(現帝京大学名誉教授)が監修した麻布OB23人の証言が出版された。「かしこいお母さんに読んでほしい麻布の教育」(イースト・プレス2005年10月9日発行)という本がそれだ。

◆ 89年以降世界の枠組みが大きく変わり、日本という国内事情に精通しているだけでは、生きていけないし、活躍もできないし、社会に貢献することもできない時代がやってきた。学歴偏重な学習歴観ではもはやどうにもならない。つまり東大にいけば未来が拓けるというものではない(もっとも可能性は大きいけれど)。そんなことはかしこいお母さんならわかるはず。わが子の中等教育の環境としてどういう学校を選ぶかを真剣に考えてみてご覧なさいという本。要するに麻布学園の読み方を通して賢い学校選択リテラシーとは何かを考える画期的な本である。

◆ 本書を読めば、いかに麻布学園が単なるエリート校ではなく、エクセレントスクールであるかということがわかるが、同時に学校選択リテラシーの観点が見えてくる。私自身選択リテラシーとして12の学校選択指標をあげている(参照→ホンマノオト9月15日)が、簡単に言うと、教師と生徒との間で創造的なコミュニケーションが生まれているかどうかに集約される。

◆ 本書にも書かれているように、麻布学園の文化の根底には、自由・平等・独立がある。これについて麻布の生徒も教師も議論は絶えない。それは今も昔も変わらない。実際、麻布出身の大学生たちに私たちのワーキングをサポートしてもらっているが、彼らはそれぞれ独立心旺盛だし、自分で考え表現し、他者を巻き込んでいくのも、深く1人で考え抜く時間を大切にもする。

◆ このモチベーションや思考の展開が持続するのは、やはり自由・平等・独立という端緒設定があるからだ。自由と平等は諸条件を考え抜いて多次元で検討していかなければ解けない矛盾だからだ。世界のすべての問題のベースには、この矛盾が解決できないところから生まれるものがほとんどだといってもよい(世界の問題と比べるのもなんだが、麻布学園の入試問題も、東大をはじめとする難しい学校の大学入試も、根っこはここに気づいていないと解けないんだな)。

◆ この問題解決の道は、独立した個でなければまた追究できない。自己の孤独の道。この道を探究することが世界の問題を解決するman for othersに通じるというこれまたパラドクシカルな知と精神の枠組み。世界の数え切れない矛盾。それは身近な家庭の中にも、友人同士の中にも無数にあるのだ。それを放置したまま撤退するのか、妥協的に生きていくのか、第三の道を創造して、未来を創っていくのか。それぞれの人生だが、麻布学園のようなエクセレントスクールから輩出される人材は、未来を創っていくことに何の抵抗も感じない人材ばかり。OB23人の証言がそれを物語っている。もちろんそのどれもが失敗とチャンレジという試行錯誤の学園生活に満ちていて、読書する側に微笑みと勇気をもたらすことは間違いないが。



私立中高一貫校研究の目次へ