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芝浦工大中の創造的思考のプログラム

2005年9月7日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

◆ 9月5日から7日まで、芝浦工大中は2年生の「Honda『発見・体験学習』〜S.I.T in Twinring'05」を実施。プログラム名における「S.I.T」は"S=Search(調査)・I=Interest(関心・興味)・T=Thinking(考える)"を意味するそうだ。

◆ S.I.Tが意味するごとく、3日間とにかく考え続けるプログラムである。チームごとに自分達の興味のあるテーマを発見し、そのテーマを深めるためにリサーチ、インタビューという学習を通じて情報を収集していく。収集の過程で何度もミニミーティングを開き、テーマの絞込みをしていく。そしてテーマの輪郭がある程度はっきり見えてくると、今度はどのような観点から編集し、提案をプレゼンテーションしていくのか考えに考え抜く。

◆ この3日間のいわば創造的思考の過程の中で、2日目の夜、最終日のプレゼンテーションの前に興味深いプログラムがある。「企画会議」という名称がついている。2日目の夕刻までに、各チームの編集作業はフロー状態。ある意味周りがみえなくなっている。情報を整理していくはずの過程が、深みにはまりどんどん情報が炸裂していくチーム、逆に事実の列挙という小さくまとまってしまったチームなど、自分たちではどうしようもない壁にぶつかりはじめるのがこの時間帯。

◆ そこでHondaの各部署のスタッフがやってきて、各チームの中間報告を聞き、アドバイスをするというプログラムだ。仲間うちだけで議論をしてきたところに、外部からのアドバイザー(企画アドバイザーと呼ばれている)が殻を破りにやってくるのだ。しかし芝浦工大の生徒たちの受け入れ姿勢は極めて紳士的だった。

◆ 「Honda『発見・体験学習』〜S.I.T in Twinring'05」というプログラムは、学校のプログラムとHondaが企画編集や商品開発を創出していくシステムとのコラボレーションでできている。どちらも創造的才能を有する人材作りを進めているという点で共鳴し合って、プログラムがデザインされている。

◆ そのためHondaの「ワイガヤ」「創造的破壊」のプロセスのエッセンスを取り入れている。最もわかりやすい形態がこの「企画会議」。編集の方向性や根拠の脆弱なところに対するアドバイスは、生徒たちの創造的思考を再び飛躍させる機会になる。

◆ 実際、今回参加した企画アドバイザーの1人はこう語りかけてきた。「自分がアドバイスしたチームは、環境問題をベースに未来都市をデザインしていくのか、ロボット工学的な視点で未来都市を考えるのか、どちらにするか厳しい葛藤が起きていた。とりあえず両方向で編集していたが、放置しておくと両方の事実を列挙して終わるという妥協的編集に落ちついてしまう。そこで、なぜ環境問題なのか、なぜロボット工学なのか、何度も対話した。回答はこちらからは言わなかったが、両方のコンセプトレベルで一致を見たときに葛藤は創造に転移するという見通しが立つところまでは行き着いたと思う。私にとってはたいへん楽しい会議でした。」これこそ意見の対立が議論に移行し、チーム全体が新たなビジョンを共有していく創造的思考のプロセスそのものではないだろうか。

◆ またあるアドバイザーは、自分がかかわったチームのファイナル・プレゼンテーションを聞きに来ていた。彼女は感動してこう語った。「企画会議のときは膨大なパワーポイントの量で、削除して再編集をしたほうがよいとアドバイスをしました。削除されるページを作った生徒さんの気持を考えると、厳しい指摘かなと思ってプレゼンを見るまでは不安でした。しかし、みごとに再編集し、シンプルになった分、新しいチャレンジャブルな発想の輪郭が明確になっていました。ほんとうに嬉しいですよ」と。

◆ このような編集作業ができるのは、実はもう1つの仕掛けがある。それはチームワーク作り。チームの雰囲気がよいと削除、挿入、置換という編集作業がスムーズに進む。雰囲気が悪いと、編集作業ではなく覇権争いになる。だれが作ったものを残すか削除するかなどという状態になる。芝浦工大は全体を通しても非常に雰囲気がよい。前向きだ。

◆ 芝浦工大の学校文化がこういうところでも垣間見ることができる。ところで、最も驚いたことは、芝浦工大の生徒がデザインする未来の都市における人間の姿だ。生徒たちが、環境に優しい、安全な技術の進化、平和を望む寛容な心、高齢者をサポートするロボットの開発を求めれば求めるほど、未来の人間の姿は、今のような人間の姿ではなくなっていく。SFの世界がまさにしく現実になる感覚を共有している。その上で伝統文化や人間らしさをどのように保守できるのかその矛盾を解決する方法をいまだ見出していないが、確実にその問題意識を身に染みて理解している。このような科学技術的ものの見方を生徒たちが自ら身につける学習プログラムは、未来を創る人材を輩出する芝浦工大の大きな仕掛けの1つなのだろう。


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