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の躍進の理由(完)〜新しい改革の予感

2005年7月26日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

の改革第1期から改革第3期までを吉野教頭先生の講演とその資料を手がかりに独断的ではあるが、その成長過程を追ってきた。今回は、いよいよ2001年から現在に到る改革第4期の戦略について見てみよう。前回のレポートでは、同学園のスクール・アイデンティティ、ステューデント・アイデンティティ、ソーシャル・アイデンティティという3Sアイデンティティを確立する過程は、高感度な抽象性、具体性、データ化そして図式化という転移の進行でもあったと書いた。吉野教頭先生の言葉でいうと「創立当時からの『慈愛と誠実と創造』を、アイデンティティ理論と重ね合わせて現在化・内在化した」ということである。

◆ そしてこのデータに基づいた図式化の探究の改革第3期が終わり、改革第4期に移行するや、大学進学実績はさらに急増した。もはや改革第4期でやることはないのではないだろうか。誰もがそう思ったに違いない。しかしながら、言うまでもなく、手を緩めるはずがない。周囲からの躍進が決定的に注目されるのも改革第4期の大きな特徴だ。おそらく毎月、毎週、毎日のように私学や公立、教育関係者がどうしてこんなに躍進したのかその秘密を探究しに訪れたに違いない。いや今もそうだろう。実は私もその訪問者の1人だ。

◆ お話をお聞きしていると、過去にどうしたから飛躍したという話より、これから何をするのか、だからもっと飛躍するのだという話が中心になる。未来と夢を語る吉野教頭先生や清水校長先生の言説には説得力がある。実績が何よりも物語っているからだが、だからこそ余計これからが恐ろしいぐらい躍進するだろうというある確信を抱いてしまう。

◆ この確信は、もはや何もすることはないのではないかと誰もが思っているのに断行している改革第4期の教育活動から推察できる。その活動の1つは前回の【図−1】に関連するデータの充実とその新たな解釈である。

◆ 吉野教頭先生は、2001年度「報」でこう語っている。「これから私たちは何をしていけばいいのか、最新のデータをもとに考えてみたい。全国的な平均レベルと比較すると、第二反抗期にあたる時期の学力下位層は、未熟型、自我型が90%を占め、『嫌なことはやろうとしない』生徒が圧倒的に多い。ところが高校生になると、幅広く勉強する学力上位層になるほど、嫌なことでもすすんでやろうとするようになる。好きなことは一生懸命やる生徒たちであるから、嫌なことも積極的にやるように、私たち教員がより早い時期から積極的に対処できれば、生徒たちのパワーをより強力に発揮させることができるようになるだろう。一方『なりたい自分が描ける』生徒が圧倒的に多く、ストレスはあるものの、それは高い理想を持った自己の実現をめざしていることを示すデータは、これまでの教育の『成果』が表れたものである。リーダーシップと厳しさと優しさを兼ね備えた達成型に引っ張られた集団を、今年も高校3年生が運動会で優勝したように、全体が連帯感を持って大きなパワーを発揮できるように指導していくことが、今後の私たちの課題となると考える。」

◆ この文章には、禁欲的でも規律抑圧的でもない、自己実現のプログラムが生き生きと実践できていることが表れている。スクール・アイデンティティ→ステューデント・アイデンティティ→ソーシャル・アイデンティティへと生徒は見事に高い理想へ向かって歩んでいる。そして最終的に「『なりたい自分が描ける』生徒」という決定的な事態が成就している。中学に入ると自己を知るためのプログラムが始まるが、それは自己を完成するのではなく、自己が学校の中、社会の中でどういう存在であるのかを知っていくプログラムである。他者との関係の中で自己がどのように成長していくのかを考えるのであろう。

◆ そのために改革第3期後半から改革第4期に入る時点で、SFCのAO入試自己申告用紙を活用して自己分析レポートを制作するプログラムも開発している。(参照→ホンマノオト2001年6月8日)これは完成した自己を確認するのではなく、これからの自己を未来に映し出すために想像力と思考力をフルに使うチャンスなのである。

◆ ともあれ、改革第4期では、「『なりたい自分が描ける』生徒」が育つ自己実現プログラムを完成したのである。そしてこれは、生徒たちにとっては、本当の意味でのセルフ・アイデンティティの完成の一歩なのである。「本当の意味」というのは、セルフ・アイデンティティとは、スクール・アイデンティティ、ステューデント・アイデンティティ、ソーシャル・アイデンティティという3つのSを自分の中に内在化させるということを意味する。3つのSが1つのSに包含されるのである。S=3Sという『なりたい自分』になれるのがの自己実現プログラムなのである。

◆ 言うまでもないが、この≪S=3S=なりたい自分≫はクリエイティブな人材ということを示唆する。【図−1】は成就したのである。グローバリゼーションの流れの中で、大事なのは≪S=3S=なりたい自分≫が創造することである。何を創造するのだろう。それは≪S=3S=なりたい自分≫から推論できる。3つのSが求める高い理想は、人類の幸せだろうし世界の平和である。こういう理想に向かって、なりたい自分になっていくのである。生徒1人はたしかに独立した1人の人間である。そうはいってもどういうSを内在化させるか、しないかによってその理想は変わってくる。だから学校選択リテラシーは極めて重要なのである。同じように東京大学に進学しても、≪S=3S=なりたい自分≫は違う。

◆ 産業別就業者数の推移を見ていくと、53年以降第一次産業の就業者数は減少、92年以降第ニ次産業の就業者数は減少し、今は第三次産業の就業者数が増加している(日本経済新聞2005年7月25日)。しかし、日本の経済は決して明るくない。この産業構造自体に問題があるからだ。新しい産業の創造が求められているというのが、今の日本であり、世界全体の共通の問題でもある。

◆ この問題は、実はすでにさまざまな領域で意識されており、水面下ではどんどん変化している。アリストテレスはアレクサンダー大王にとって代わることはなかった。ダ・ビンチもパトロンが必要だった。モーツアルト然り、ベートーベン然り。アインシュタインも科学者仲間に支えられた。クリエイターは常に政治や経済の覇者に最終的に使われてきた。しかし、そうではない時代がやってくる。

◆ グローバルスタンダードを背景にもったクリエイター(ビルゲイツとか孫正義とか…)とグローバルベーシス(黄金律)を背景にもったクリエイター(クーデンホーフ・カレルギーとかノルウェーでは初の女性の首相になったグロ・ブルントラントとか…)の対話が非常に重要になる時代がやってきているのである。グローバルスタンダードのパラダイムはMilitary、Money、Mediaという3M。グローバルベーシスのパラダイムはTolerance、Technology、Talentという3T。

の改革第5期は、スクール・アイデンティティの再確認に入るだろう。女子校としての意義をもう一度探るという動きだ。女子と男子ではそもそも脳の成長に違いがある。違いを知ることは差別をすることではなく、共通点をシェアし、違いを認め合うという寛容さを養うことになる。Toleranceが女子校としてのスクール・アイデンティティのベースにはっきりと表れてくるのではないだろうか。ホームページの作成や英語の授業を英語のみで行っているチャレンジ(今年の秋頃に成果報告があるようだ)はTechnologyにつながる。そして論文と発表、ボランティアという活動はますますTalentを引き出す機会になっていくだろう。

の改革第5期は、89年以降のパラダイム変換をキャッチしたように、2006年以降(特に新会社法やブログは産業構造に変化を与えるだろう)の大きな時代の変化をキャッチし、私立中高一貫校や公立学校に最先端の教育モデルを提示することになるだろう。その準備は先に見たようにできているのだから。


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