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2005年7月15日 |
| ◆ 1989年以降、ベルリンの壁の崩壊、冷戦終焉、日本経済のバブル崩壊と世界はターニングポイントを迎えていた。その象徴的な出来事として記憶に残っているのは、90年に翻訳されたアルビン・トフラーの「パワーシフト」という本がベストセラーになり、自分の周りで大流行していたことだ。権力の3つのMのシフトがわかりやすく書かれた未来学の本である。20世紀末はMilitaryからMoneyへ、21世紀はMoneyからMindへと権力はシフトするということをトフラーは語っている。最後のMindというのは精神とか宗教心とかを意味するのではなく、高度知識・情報のメタファーとして使われている。軍事力から経済力へ、経済力から情報力へと世界の権力のパラダイムはシフトしていくということを予言した本である。
◆ そのころちょうど、私は、日能研教務で、カリキュラムやテストの項目のカテゴリー作りによってコンピュータでデータベースを作り、どのように生徒たちの学力データをマイニングしていくかを追究するチームに所属していた。1つひとつのテスト項目の生徒の反応分析からは有益な情報が整理できた。このデータベースによって、テキストも計画的に制作できるし、1人ひとりの生徒の理解領域を把握し、学習メニューを教師が作るのに貢献できた。なにより学校選択情報を入試問題という学校のカリキュラムの顔を手がかりに表現することができたのは画期的だった。 ◆ したがって、トフラーの「パワーシフト」は、自分たちのやっている仕事のベクトルが間違っていないという確信を与える本となったし、そんな時、トフラー夫妻が、日本の情報や知識の創造がどのようになっているのか視察のために、ぶらりと日能研渋谷校に立ち寄った事件は、本当に驚いたし同時に勇気をもらうことになった。もちろん、未来学の広告塔的な本であるから、3Mのきれいなシフトなどということはあり得ないと批判的に読書会も開いていた。実際、21世紀になった今でも3Mは関数的な関係を保ち、20世紀のパラダイムをまだまだ引きずっている。ただ、3Mから3T(Tolerance, Talent, Technology)にシフトしていることも一方で確かである。 ◆ さて、そういう時代背景の中、 ◆ ビジョンや理念を教師が生徒に一方的に教え込むのではなく、生徒自らが内側から燃やすようにするには、アイデンティティを共有することが重要なのは言うまでもないことである。アイデンティティの共有は同時に個性の尊重にもつながるはずである。しかも改革第2期の後半には世の中は、阪神・淡路大地震が起こり、地下鉄サリン事件が起こっている。世界のターニングポイントの光の部分の背後には、闇の部分も醸成されていた。この闇の部分に生徒たちが落ち込んでいかないように、正しい判断力、批判的思考力などを身に付けるプログラムを第2期の目標に掲げたのは、まさに時代の光と影の部分を読み解く慧眼をもった教師陣が揃っていたからだといえるだろう。 ◆ そのプログラムとは「環境・福祉・国際」というテーマを中学のホームルームで学ぶものである。3つのテーマをバラバラに学ぶのではなく、自分を知る(独自性)→社会を知る(社会性)→社会の中で自分がどう生きるか(創造性)というシークエンスでプログラムを創っていったそうである。このプログラムの重要な意義は、「アイデンティティを援助する」進路指導も包括しているという点にある。これは、後に、エリクソンの発達心理学の研究や独自の研究会の成果と結びつくことによって、6年間のダイナミックなストーリーに仕上げられていくことになる。あまりに有名なプログラムなので、多くの先生方の知るところだろうが、念のため吉野教頭先生の資料から抜粋しておこう。
◆ このようなプログラムの形成過程の中で、改革第1期と改革第2期の成果があいまって、改革第3期に入る1996年から、大学進学実績が急激に伸びることになる。その前年には先述したように、阪神・淡路大地震、地下鉄サリン事件が起こっていたが、同時にあの「ソフィーの世界」がベストセラーにもなっていた。時代は確かに「自分と社会」の問題を、倫理社会の教科書の中のたんなる練習問題ではなく、生徒1人ひとり、人間1人ひとりの切実な問題としてとらえ始めてもいたのである。社会だけではなく個人の心を覆う影を払拭し、いかにして光の部分を見出すか。 |
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