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Honda「発見・体験学習」プログラムの基礎(3)
〜なぜ「チーム学習」ベースにするのか?

2005年4月15日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

◆ Honda「発見・体験学習」プログラムの中で、最も重要なトリガーはチーム学習。チーム学習というと、仲良しチームやピラミッド型の組織を想起するかもしれないが、いずれも違う。Honda「発見・体験学習」をチーム学習ベースにしたきっかけは、Hondaのモータースポーツ部の方々との出会いである。Hondaには優れたF1レーサーがたくさん輩出されているが、レーサー1人の力で優勝できるわけではない。

◆ チームプリンシパル、テクニカルディレクター、プロジェクトリーダー、技術開発責任者、エンジニアリングディレクター、テストドライバー、ドライバーといったチームプレイがあるからこそレーサーは走行できるのだ。そしてチームメンバー1人ひとりの役割名称からもわかる通り、個々の力が優れていなければならない。

◆ そこからチームのイメージ作りが始まった。宮崎アニメのチーム、押井守のチーム、アキバ文化を作る人々などいろいろな素材を用意してスタッフと話し合った記憶がある。なかでもわかりやすかったのは、ハリウッド映画。スポーツものや、ベーブシリーズ、学園もの、中でもこれだと思ったのはアポロ13号のNASAのチーム作り。F1チームに似ているからだ。また古い映画だが、グッバイ・チップスは、1つの英国パブリック・スクールというチームの成長の変化をうまくまとめていた。これは2泊3日のHonda「発見・体験学習」において、2日めの夕方から、それまでとはコペルニクス的転回が起こったのかと思うぐらい、チームの状況が変化するインパクト作りのヒントになった。

◆ その当時2000年にはシドニー・オリンピックが開催されていて、ゴールドメダリストを支えるチームに光があてられる報道が多かった。これは、チーム学習をベースにする考え方には正当性と信頼性があるという確信を抱かせてくれた。

◆ 企画案を巡らしているその間に、ある私立学校のロサンゼルス中長期留学プログラムの企画を手伝うことになった。いろいろな現地のプレップスクールや公立学校を視察する機会をもらえたのはラッキーだった。その中でチャドウィック・スクールという幼稚園から高校まであるスーパー・プレップスクールには衝撃をまともに受けてしまった。広い敷地に平屋の校舎がいくつも点在しているのだが、この意味が教室にはいって、わかりハッとした。フラットなサークルを作って、議論をしながら進行する授業、見学する教室教室で、プレゼンテーションが行われているし、図書館に行けば、プロジェクト学習の本格的な成果がずらりと並んでいるのだ。中学生の音楽の時間は、オーケストラというチーム学習そのもの。先生は指揮者でもあるけれど、オーケストラに溶け込んで楽器を演奏し生徒たちにぴたっと寄り添っている。極めつけは幼稚園。ここからもう議論とプレゼンテーションの環境が整えられているとは。

◆ アポロ13号の映画に象徴されるように、アメリカはチームプレイが実にうまい。お国柄ということも当然あるけれど、歴史が浅いし、想像を絶する多様な移民の多い国である。どうやってアイデンティティを形成し、シナジー効果をシミュレーションしていくかをトレーニングしていかざるを得ない条件が設定されている。

◆ そんな話をしていると、アメリカの文化の特徴なのだから、チーム学習は日本ではいらないのではないのか、東大にはいるのに、そんな学習は不要だと数人の教育関係者に言われた。京都大学や東京大学の後期試験みたいなものはいずれ廃止になるのだしなどなどとも。しかし、グローバリゼーションの広がりは、そんな従来の学習方法論など吐き出してしまう勢いで進んでいる。グローバリゼーションをどのようにマネジメントしていくかは、もはや1人の力ではどうにもならない時代が、89年以降日本にも到来しているのだ。徐々に水に熱を加えられて、温度が上がっているのに気づかずに死んでしまうゆでガエルと同じで、そんなグローバリゼーションにあえて気づこうとしない教育関係者は、今でもいることも確かである。

◆ しかし、21世紀型のリーダーシップ、市民性リーダーシップ、サーバントリーダーシップなど、従来のピラミッド型の組織リーダーではない、新しいリーダーを育成するには、欧米流のチーム学習は参考になると共鳴する学校の先生方はいっぱいいらっしゃった。もっとも、一方で茶室空間というメタファーも取り入れた。私学の女子校を訪れると必ず茶室がある。さっそく京都の寺を回った。茶室に行くまでのシークエンスから小さなニジリ口へ、そしてそこから相対的に広がる茶室の空間。わびさびの深遠な情報を空間に埋め込み、それを引き出せる仕掛けもまた日本流チームプレイのなせる業である。そして京都学派という知のチームプレイ。これをプロデュースした仕掛け人もまた偉大だ。

◆ 99年から年に1、2回ぐらい私立中学校の生徒獲得戦略を考えるセミナーを開催してきた(参照→http://eri.netty.ne.jp/seminar/semi_mokuji.htm)が、そこで出会った先生方と本当の魅力作りの本質は授業にあるという当たり前だけど難問に挑戦しようというワイガヤが始まった。2001年それはCAL(Center for the Advanced Learning:最先端学習センター)という21世紀型授業の勉強会として、手弁当で集まった先生方によって発足した(参照→http://eri.netty.ne.jp/cal/index.htm)。もう4年目を迎えている。勉強会で報告されたものを中心に毎年本にまとめているが、もうすぐ今年3冊目が上梓される。この勉強会でも、チームやグループ、ピアカウンセリングなど対話や議論ベースの授業が工夫されている。この勉強会を通して、OECD/PISA的には教科を横断するという意味で、最先端の脳科学では教科を超越して総合するという意味で、言葉やコミュニケーション、記号の理解と実生活へのその応用実践、そして新しい概念の創造ということがいかに重要であるかがはっきりと見えてきた。

◆ こうして私たちの中では、チーム学習は、異なる価値観や考え方がぶつかり合うグローバリゼーションの流れの中で、それをどのように横断的に超越的に統合し、共通の意思決定をしていくのか、そのための新しい知識や技術の概念をいかに創造していくのか、そしてその創出作業のための言葉と記号のマネジメントという意味のコミュニケーション行為能力をいかに育てていくのかという学習の拠点となったのである。


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