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Honda「発見・体験学習」プログラムの基礎(1)〜プログラムの背景

2005年4月15日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

◆ 2000年から徐々にHonda「発見・体験学習」プログラムの開発が始まった。セミナーなどの企画イベント、学校との協働実施を振り返ってみると、50以上の数のイベントやプログラムを実施したことになる。今年は5月から日・EU市民交流年イベントとして≪未来を創る学校≫セミナー(参照→http://www.ntsinc.co.jp/seminar/ja_eu_event/index.htm)を3回行う予定だが、これもHonda「発見・体験学習」推進チームは大いにかかわっている。

◆ 当教育研究所もHonda「発見・体験学習」推進チームのメンバーとしてあるいはパートナーとして、プログラム開発・編集・運営・分析全般に渡ってかかわるチャンスを頂いている。リサーチは、国内外に及び、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ボストン、ニューヨーク、ロンドン、ストラスブール、フィンランドのヘルシンキも訪れたりした。OECD/PISAの報告書も当然読みあさった。プレップスクール、チャータースクール、ロサンゼルスやヨーロッパの公立学校にも足を運んだ。

◆ しかし、何よりもこのプログラム編集制作で大きな影響を受けたのは、本田宗一郎氏の考え方で、本田流儀の仕事のメカニズムである。初代CIVICの企画提案過程のドキュメンタリータッチのビデオは感動した。そこにはHonda流儀のプロットタイプがあった。NSXのエンジンを設計した偉大なるスタッフの方ともいっしょにプログラム作りができた。養老孟司先生が大好きなネイチャリストがプロデュースしている里山もプログラムの学習空間として活用させてもらっている。Hondaの人事部の方々にも大いに協力してもらっている。ピアジェやデューイ、ブルーナー、ヴィゴツキーなどの教育学の古典も大いに刺激になった。中でもピアジェの流れを汲みながら新しい試みをしているMITラボのシーモア・パパート教授のコンストラクショニズム理論とハーバード大学のハワード・ガードナー教授のMI理論は、欧米のリベラルアーツ的な素養を現代バージョンに仕立て上げたもので、それぞれ大いに参考になった。

◆ 一方で、リサーチをしながら、多くの学校の先生方と対話をしながら、それぞれの学校の特徴に合ったプログラム編集・実施・改善をしていった。そうこうしているうちに、プログラムの中で欠かせないWeb based Empowerment Evaluation (Honda「発見・体験学習」の中では自己評価とCILO分析、先生評価に相当する)のデータも40000件ほど蓄積された。

◆ 昨年の秋からは、プリントを活用していたものをまとめて、生徒1人ひとりに≪プロセスフォリオノート≫として新しいツールを提供できるようになった。これはプログラム終了後、いったん集めて、語彙分析をしてからすべてお返しするようにしている。作品として固定したある1点から子どもたちの理解領域を予測するのではなく、瞬間瞬間の連続プロセスを見ながら子どもたちの理解領域の小さな変化を把握しようという試みである。とにかくデジタルデータとアナログデータのマトリックスからある仮説が成立することを期待して当教育研究所の所員が地道に分析している。

◆ そんなわけで、そろそろHondaと学校のステイクホルダーのみなさまに、Honda「発見・体験学習」の活動のある成果、それは子どもたちの世界を広げる成果であると期待しているのであるが、冊子としてまとめようということになった。OECD/PISAの報告書のように膨大ではなく100ページに満たないカラフルな小冊子であるが、この手の報告書としては本邦初の試みだと自負している。5月のセミナーにはなんとか間に合わせたい。今初校を再編集している真っ最中なので、何とかなるだろうとは思うが。もちろん当教育研究所でもネットで販売する予定。ぜひご期待いただきたい。

◆ さてこの小冊子のタイトルであるが、「世界を変える学習」と名づけた。「世界」とは果たして何なのかは、皆様それぞれに考えていただきたい。トリガークエスチョン。これはHonda「発見・体験学習」プログラムの大事な構成要素の1つであるが、タイトルがすでにトリガークエスチョンなのである。このクエスチョンの機能は、ヴィットゲンシュタインの「あひる―うさぎ」と同じ構造だと思う。

◆ 「世界を変える学習」はあらゆるステイクホルダーを対象にしているので、バックヤード的なことは書くことができなかった。私がかかわっている部分で、教育の世界では当然共有すべき点もあるので、そこは少し私のページで徐々に公表していこうと思う。

◆ それとHonda「発見・体験学習」のメカニズムの基礎はできあがり、次のステージが見えてきた。今のところはHondaとは全く関係がないが、女子聖学院の小倉校長先生と広い意味での教育において最も重要な(おそらく何よりも大事で、これを解決しなくては日本は21世紀を乗り切れないだろうという)あるプログラムを作りたいと話が盛り上がった。2010年に向けて動きたいが、パーフェクトに真摯なスポンサーが必要だ。現状では、このプログラムが結びつくかどうか、まだ誰もわからないが、おそらくこれはHonda「発見・体験学習」と理念的には結びつくと思う。そういう神の一手があると確信している。

◆ そして、それは本田宗一郎氏の「技術が世界に通じる限り、われわれの視野は常に世界に注がれていなければならない」という信念に完全に通じることだろう。


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