私立中高一貫校研究 私学Bracketing 学校選択を考える 入試について 学力を考える 学びを考える
教育と経済 フランク・ロイド・ライトとの対話 これからの教材 企業と経済研究 入試に役立つ読書 未来を創る学校





宮台真司の学校選択論

2003年3月25
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

■ 宮台真司は、麻布から東大に進学して、現在都立大学助教授として社会学を研究している。著書の数は大変多く、研究対象が少年少女に降りかかっている様々な事件性の濃い問題であるがゆえに、大いにマスコミウケしている有名人である。そのせいもあって、氏の文体は研究者のあのお堅い文体ではなく、テンポの速い歯に衣着せぬ文体で痛快極まりない。

■ もちろん、それは大衆に多角的な思考の誘因を企てる戦略であって、学問的パラダイムはしっかりしている。新保守主義にまみれた学者でも、リバタリアンでも、福祉国家主義者でもない。現在の教育学のリーダーである佐藤学氏とも違うようだ。宮台真司は、彼のことを次のように表現するぐらいだ。「佐藤学のような『進歩的』な―実際は無教養で前近代的な―教育学者」だと断言しているのである。

■ では、宮台真司はいかなる立場に立つのか。それは、氏の「学校が自由になる日」(雲母書房 2002年)という著書で明らかにされている。「市民社会で要求される尊厳形式のプロセスは、自分で試行錯誤し、その成果を自己信頼に結びつけ、その自己信頼をベースにしてさらなる試行錯誤をし、その成果を……という循環です。そういう市民社会的な尊厳=自立的な尊厳を育て上げるための循環的な成育プロセス」を実行するという「リベラリズム教育論」の立場である。そして、この立場は次のような思想を重視する。「共同体主義を打破するために必要なことは、個人の責任で選べる選択肢が増えることです。選択肢が増えるといっても、どれを選ぶかで、結果にそれなりの差が生まれるようでなければ、意味がありません。行き過ぎた格差は問題を生みますが、どの選択肢を選んでも差が生まれないように、『結果の平等』原理に従って結果を均すのでは、社会システムの存続維持に必要な動機づけが生まれないし、そもそも選択肢をつくったことになりません。」つまり、本質的選択動機の拡大を主張するのである。

■ 宮台真司は、このような思想前提を確認したうえで、学校選択ができるインフラを作ることを提案し、選択に値する学校のポイントを6つ列挙している。

(1) 初期段階では反復練習や朗読記憶のような営みを大事にし、成長にしたがって徐々に試行錯誤チャンスを増やしている。
(2) 個人カリキュラムや授業選択制など多様な選択肢を用意している。
(3) 安易に成功を望まず、むしろ失敗を奨励し、試行錯誤を促進している。
(4) 無条件の包括的全体的な「承認」が幼少期に与えられる必要性を提唱している。
(5) ゲストティーチャー制度や体験学習制度を通じて、親や教員以外の大人たちと接触する機会を増やし、「そういうふうにしても生きられるのか」と学べる「モデル学習」が用意されている。(試行錯誤コスト削減策でもある)
(6) 学びの動機づけは、「わかる喜び」(条理に納得する)と「憧れる」(不条理に感染する)の両方を巧みに活用されることで生み出だされている。

■ 以上のような6ポイントを有している学校が多数加われば、学校選択の幅も広がり、リベラルな教育を支える市民社会も育つであろう、共同体主義的学校群に一石を投じられるであろうというのである。

■ 大いに賛成であるのだが、このような6ポイントを備えている私立学校がすでにあるではないか。それは麻布学園。宮台真司は、社会学者だけあって、自分の優れた経験をデータ化、抽象化しているのである。「学校が自由になる」。過激な表現は、差し引いて読んでみてはいかがだろう。学校選択を考える上できっと役に立つはずである。


私立中高一貫校研究の目次へ