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情報教育と学校選択

2002年03月01日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

■ <Mainichi INTERACTIVE Mail>(2002年2月28日)によると、マイクロソフトの研究部門であるマイクロソフトリサーチ(MSR)アジア研究所(中国・北京)と東京大学は、ITの共同研究や学術交流を進めるそうである。マイクロソフトの研究所が日本の大学と包括提携するのは初めてのようである。

■ この<Mainichi INTERACTIVE Mail>のニュースでは、このようなIT関連ニュースが大量に発信されている。こういうのもある。女性向けサイト「Cafeglobe.Com」運営のカフェグローブ・ドット・コムが、20〜30代女性のインターネットへの意識調査をした。それによると、 「この1年間に、旅行やグルメなどのネット情報をきっかけに行動したことのある人が8割に上ったほか、4割がネット広告に引かれて買い物などをした経験があると答えた。 一方、自宅のネット環境が常時接続となっている女性が25%あり、ブロードバンドへの関心の高さをみせた。 」

■ こんなのもある。BSフジは、「日本で初めて連続テレビドラマのブロードバンド配信をすることを明らかにした。昨年12月、開局1周年記念として5週連続で放送したドラマ『医者と患者』を、3月1日から有料配信する。インターネット上の映像配信は、テレビ番組の新たな流通市場として放送業界の期待を集めており、民放キー局各社はブロードバンドに対応するための新会社を発足させている。」

■ また「米紙ニューヨーク・タイムズのネットワークにハッカーが侵入し、社会保障番号などの機密情報にアクセスしたことが明らかとなった。」というニュースや「NTT(持ち株)とNTT東西は28日、2002年度の事業計画を総務相に認可申請した。光ファイバーを中心とするブロードバンドビジネスへのシフトと『構造改革』による収益改善が中心」というようなニュースなどIT関連記事が目白押しなわけである。

■ たった1日でこういう状況であるし、毎日新聞だけではなく各紙で競い合って同じようなIT関連記事を流しているところからもわかるように、IT不況があろうがなかろうが、IT産業は邁進せざるを得ないようだ。

■ 学校教育にも、この世の流れに対応し、情報教育が着々と進んでいる。しかし、上記のような記事の内容は一見多彩だが、結局ITの技術的側面しか語っていない。マスコミの記事内容に書かれている事態に対応することが情報教育を進めることだと考える初等中等学校があるとしたらそれは少し違う。もちろん技術的なことや活用術的な点は無視できない。しかしそれ以上に無視できないのはサイバーカルチャーに対するものの見方である。インターネット普及率や自宅にパソコンを所有している割合において、アジアの中でかなり遅れているという議論は多いが、サイバーカルチャーに対するものの見方が議論されていないという方が重要である。

■ Pierre Levy(ケベック大学教授で、サイバーカルチャーとコミュニケーションを研究。)はおもしろいことを言っている。

Cyberculture wouldn't be postmodern but firmly situated in the tradition of revolutionary and republican ideals of liberty, equality, and fraternity.(Cyberculture: University of Minnesota Press 2001)

■ サイバーカルチャーといえばポストモダンな考え方にぴったり合っているように思えるが、実は啓蒙期から20世紀初頭までの西欧の伝統的な思想に根っこがあるのだという考え方を展開している。

■ カナダでは、あのマクルーハンが存在していたことからもわかるように、ITに関しては技術以上に思想的な側面もきちんと議論される土壌があるのだろうが、日本はどうだろうか。日本でも2004年までに教育にITを完全に浸透させようという動きがあるが、もっぱら技術的側面だけが強調されているように思われる。難しい能書きはいらない、補助金をゲットするために商売、商売とパソコン販売展開を行っている業者が多く見受けられるのは、その裏づけとなろう。そういう業者は質より量で、安価にパソコンを売りつけることを第一の行動原理としている。それに応じる学校や自治体にも責任はあるが、こういう構造的な部分が改革されない限り、情報教育の質などは高まらないし、こういう考え方が根底に横たわっているような学校の教育の質は極めて粗雑である。残念ながら公立学校はこの土建国家的な発想のもとにある。これは憲法上そうならざるを得ない状況があり、極めて不幸である。これについては高度な政治上の問題もあり、深入りはできないが。

■ そこへいくと私立中高一貫校は、もともとがPierre Levyが好む啓蒙期から20世紀初頭の思想に根源がある。官僚的近代化でも、ポストモダンでもない、もう一つの近代化に取り組んだ思想である。福沢諭吉も、内村鑑三も、新渡戸稲造も、高橋是清も、江原素六も、岡倉天心も、田辺元も、ドミニコ会も、イエズス会も、多くの宣教師も、渋沢栄一も、五島慶太も…この思想に大いに影響を受け、同時に影響を与えた思想家や政財界人である。もちろん、パラダイムは共有していても考え方や価値観はそれぞれ違うのは言うまでもない。

■ こういう建学の精神を持っている学校は、伝統を文化的な背景として情報教育を実践していける環境にもっとも近いところにいるのである。ただし、情報教育と建学の精神を自覚的に結合する学習プログラムや環境を構築しているかどうかは別問題である。この点をきちんと見て学校を選択することが肝要である。さてそれでは何を見れば判断できるのであろうか。それはさしあたり学校のホームページである。学校のホームページと学校のパンフレットを比較して、ほとんど同じであったなら、まずはITと建学の精神は結合していないという推測が成り立つだろう。もちろん、これは学校選択の一つの要素でしかないが。

■ 私立中高一貫校の創立者が影響を受けたあるいは与えた思想や芸術感覚に触れるのはそんなに難しくない。関連書籍がたくさん出版されている。いくつかご紹介しよう。

「ウイーン世紀末の文化」木村直司編 東洋出版 1993年
「マッハとニーチェ 世紀転換期思想史」木田元 新書館 2002年
「二十世紀思想渉猟」生末敬三 岩波現代文庫 2000年(1981年青土社刊行)
「フィロソフィア・ヤポニカ」中沢新一 集英社 2001年
「メディアの預言者」服部桂 廣済堂出版 2001年
「エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する」ブライアン・グリーン 
草思社 2001年

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