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学校選択指標フィルター

2002年01月07日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)

■ 現代の日本において、中学・高校時代という期間は、知的な面でも、精神的な面でも、身体的な面でも、人生における基礎をつくる重要な時期である。この時期に総合的な視野を持ち、美学的素養を育み、ディスカッションができるという意味でのコミュニケーション能力を養うことができ、矛盾を受け入れられる度量をつくれるならば、あらゆることに好奇心が旺盛になり、開放的な心が持て、批判的な思考力も身につき、自己否定即自己肯定的な社会的自己を確立しながら生き抜いていくことができるであろう。

■ こんなことは当然で、どこの中学校でも、高校でも、そういう人材育成のためのカリキュラムやシラバスが作られていると叱られそうだ。しかし、実際の教育現場では、それほど総合的な視野は育っていないし、美学的素養なども顧みられていないし、井戸端会議的なコミュニケーション能力ぐらいしか養われていないし、まして矛盾を自己同一化できるタフな精神などは形成されていないというのが現状である。これではモチベーションなどあがらないし、自己中心的な言動しかとれなくなる。つまり、実際目の前で起きている出来事に無関心だし、遠くで起きている凄惨な出来事の問題性を共有共振することができないでいるのである。こういう日本人が多くなり、国際社会やネット社会の拡大の中で、日本人はリーダーシップを発揮することができないのである。

■ かつては、東大を頂点とする学歴が人生を保障してくれたが、外資系の経済がおそらく日本の経済の4分の1を占めるようになってきた現在では、日本の学歴が生活を保障するとは限らなくなってきている。だから、自分の子の未来を案ずる親にとって、学校選択は非常に重要である。東大を頂点とする学歴に代わるものを身につける学習の場はどこなのか、それが問題なのである。

■ 学校選択指標のフィルターは、いくつかの項目で織り成される。その項目は次の通り。[1]生徒の自己実現の質、[2]教職員組織の質、[3]生活文化変化対応戦略の質、[4]大学改革対応戦略の質、[5]論文編集の質、[6]授業の質、[7]英語活用の質、[8]IT活用の質、[9]教育空間の質、[10]進路実績の質、[11]生徒募集戦略の質。

■ この質の違いを測る基準は、コミュニケーションのスタイルである。すべては習慣や規則に縛られ、その枠組みの中で井戸端会議をやっていればそれで安穏とできる抑圧的コミュニケーションなのか、オープンで双方向的にディスカッションができ、どんどん新しいものを生み出していこうという状態やもっと学習しようという姿勢を作り上げていける創造的コミュニケーションなのかによって分析できる。

■ 学校選択指標フィルターを以下のようなマトリックスで表現してみよう。そして麻布を例にこのマトリックス表の記入を試みてみる。×は「なし」を、○は「ふつう」を、◎は「たいへん」を意味する。そうすると麻布という学校は、圧倒的に創造的コミュニケーションが行われていることがわかる。抑圧が悪で、創造が善であるということを言おうとしているのでない。ただ、子供たちの潜在的な能力や個性を開発する環境は、抑圧するところは抑圧しながらも、全体的には創造的な雰囲気が充満しているという環境であることだけは確かだろう。抑圧的コミュニケーションが全くない学校は、無政府状態であり、大きな問題をはらむ。逆に創造的コミュニケーションが全くない学校があったとしたらそれは全体主義的で極めて危険である。学校選択フィルターは、このバランスの状態を確認するための簡易マトリックスとして役に立つだろう。

■ 麻布選択指標フィルター
項 目 抑圧的 創造的
[1]自己実現 ×
[2]教職員組織
[3]生活文化変化対応戦略
[4]大学改革対応戦略 ×
[5]論文編集 ×
[6]授業
[7]英語活用
[8]IT活用
[9]教育空間 ×
[10]進路実績 ×
[11]生徒募集戦略 ×

■ 上記の麻布選択指標フィルターを眺めて、ある保護者は進路実績にもっと力を入れてほしい、いくら創造的な環境が大事だからといっても、現実的には東大に入れるためにがんばってもらわなければと思ったとしたら、麻布を選択しなければよいのである。いやそれ以外はOKなのだがという場合は、東大については自助努力でなんとかする覚悟で麻布を選択するのがよいだろう。また、麻布を選択し、実際に通ってみたら、確かに、論集のような論文編集能力を育成する環境はあるが、必ずしも生徒全員が参加しているわけではないということに気づいた場合は、もっと力を入れるように学校に対し発言をするとよい。ただし、ただ要求するのではなく、麻布における自由とは何かを考えたうえで言論を戦わせるのでなければ有意義ではないだろう。

■ とにかく学校選択指標フィルターは、学校を選択するかしないか、どの程度妥協して選択するか、選択して入学後学校のどの点を改革すればよいのかなどを知るうえで役に立つはずであると同時に、消費者の賢い選択眼と正当な要求が、学校のクオリティーを向上させるのにも役立つのである。各学校クオリティーが向上すれば、それだけ子供たちの未来をかなえる学校の選択幅も必然的に増えるのである。人生のもっとも大事な時代を過ごす環境をよりよくするのは、結局消費者としての保護者の選択意識、選択眼なのである。


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