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学びを考える

新しい学び時空(1)〜ヨーロッパの旅から

2005年12月12日
by 本間勇人(honma@netty.ne.jp)


◆ 今回ヨーロッパの学び探しの旅は大きな収穫を得られそうだ。「新しい学び時空」のデザインができそうだという予感である。それにしても、意外だったのは、パリへ向かう飛行機の中には、静岡県のある公立高校生200人弱が修学旅行のために乗り込んできたことと、コルマールのリセ・バルソルディ(高校)とは広島の公立高校生がヒロシマについて国際交流を実施しているということを知ったことだった。

◆ ルーブルでは、おそらく私立高校の修学旅行と思われるグループにも出会った。ヨーロッパという場所を活用している日本の学校を身近に感じた。私の知っているデータでは、ヨーロッパを活用している学校は少ないはずだ。クリスマスシーズンということもあって、たまたま訪れている学校が集中していたのかもしれないが、目の当りにすると、ずいぶん感じ方は変わるものだ。

◆ しかし、今回見つけられそうな「新しい学び時空」とは、実はそういうヨーロッパという場所を言うのではない。今年は日本・EU交流年のイベントの時期にあたり、NTSでは3回に渡り、≪未来を創る学校≫セミナーをやってきた。このセミナーは、ヨーロッパの日本学研究の拠点であるCEEJAともコラボレーションし、実際に3回目は、CEEJA会長であるクライン氏に来日してもらい講演もしてもらった。

◆ 今回の旅はマルク・ブロック大学で4日間に渡り行われている日本研究の大規模なコンファランスに出席することも目的の1つであった。事務局はCEEJAで、会長クライン氏がコーディネートしている。このイベントもまた日・EU交流年の一環である。NTSとCEEJAは日・EU交流年の共通のロゴを持って活動しているわけであるが、これからも一層深いコラボレーションを行っていく予定である。

◆ さて、ストラスブールに入る前にパリに寄った一番の理由は、ユネスコ本部を訪れることだった。ここには世界の平和を祈る時空であるイサム・ノグチが創った日本庭園がある。庭園の存在は万国共通であるが、そのデザインの視点が、特に日本は違うようだ。そんなこともあって、日本研究の大きなテーマに、日本庭園の研究がある。今回のコンファランスでもこのテーマが扱われている。講演を聞く前にユネスコのイサム・ノグチを体験しておきたかった。

◆ 予想は見事に的中。講演者たちは、直接イサム・ノグチを扱っていたわけではないが、庭園の持つクリエイティビティの可能性をイサム・ノグチに見ていた。イサム・ノグチの日本庭園は、ともすれば京都の庭園の影響を受けていると見られがちだが、今回のコンファランスの講演を聴いて、どうもそうではないなという日ごろ抱いていた感覚が実際にあってもよいという確信に変わった。

◆ 特にANDO TOSHIO教授の「西洋のための日本庭園:ジョサイア・コンドルの日本庭園論」はそういう感覚を一層強いものにした。ジョサイアといえば、明治政府の擁した外国人学者である。日本の建築史に功績を残したのみならず、日本の文化をヨーロッパに広める貢献を果たした。しかし、今回の講演で、具体的にどのような功績を残したのかその1つを確認できた。

◆ ジョサイア自身はあの竜安寺や桂離宮をヨーロッパに広めたのではなく(実際に紹介していなかったようだ)、むしろ中心は東京エリアの大名庭園だったのだ。これは驚きだった。今の欧米人の日本庭園はどちらかというと京都の庭園で、宇宙のメタファーであり、瞑想の空間であり、鑑賞用の庭園である。それがジョサイアはイベントや芸術性、自由に散策できる大名庭園を日本庭園の美として紹介していたというのである。つまり宗教的芸術性ではなく実用的芸術性ということか。

◆ イサム・ノグチは竜安寺を相当意識していたし、モダン京都庭園を創作した重森からも相当影響を受けている。しかし、決定的に独自性があるのは、それでいながらイサム・ノグチの庭園は自由に散策できる空間なのである。イサム・ノグチにとって庭園は、地球の彫刻であり、この彫刻の上でロールプレイする人々の動きがなければ地球の彫刻は完成しないということだろう。しかもそのロールプレイの中で人々は何かを感じ、何かを考える。これがイサム・ノグチの彫刻作品なのである。

◆ イサム・ノグチノ彫刻作品は偉大なトリガースペースで、そのトリガーが創りだした人々の気持ちや思想までも含めて彼の作品なのである。だからイサム・ノグチの作品はいつもコラボレーションであり、そのコラボレーションは永遠に続く。なぜなら実際に制作した当時の関係者のみのらず、そこに遊びに来た子供たちもイサム・ノグチにはおっては協働者だからだ。つまり訪れる人は過去も今も未来もみなイサム・ノグチプロジェクトのステイクホルダーというわけである。

◆ 帰国したらISAM NOGUCHI(IN)プロジェクトを創ろう。このINプロジェクトは、イサム・ノグチが創った作品をトルソーに見立て、目に見えない部分を子供たちの豊かなイマジネーションで描きつづけるプロジェクトだ。クライン会長とかわいらしい街イクサイムを歩きながら、フランスと日本は、アメリカとはまた違う共通点がある、それは古い国家だということだという話になった。ただし、それは単純に伝統を意味するのではない。伝統はトルソーなのだ。そこに目に見えない未来を描くことができる。そういう意味では伝統はいつもコンテンポラリーアートかもしれないと。

◆ イサム・ノグチは日本とフランス(もちろん世界)の文化をつなぐ永遠の古くて新しい芸術である。そしてそれがゆえに経済と平和の両立が成り立つグローバル・ベーシスを生み出すことになるだろう。グローバル・ベーシス、これは女子聖学院の小倉校長先生からいただいたキーワードだ。女子聖学院の近くにジョサイア・コンドル設計の旧古川庭園があるし、有名な大名庭園六義園がある。旅はつながりを広げつづける。いや広げつづけるために旅をするのかもしれない。



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