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● 年金と税金
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第7章 フィンランドの情報社会モデル(3)

by飯田 耕平

§1 フィンランドの財政状況

■ 近年のフィンランド経済は堅調に推移している。下グラフは1995年以降のフィンランドのGDP(国内総生産)を示しているが、1995年-2000年は毎年4-5%成長、2000年以降は同2-4%成長を達成している。1990年代前半にはソ連や東欧諸国の崩壊、そしてグローバル金融市場での失敗(バブル経済)などが重なり、非常に厳しい経済情勢を経験したフィンランドであるが、昨今の国際競争力の向上や経済成長は見事な経済再生を果たしていることの証明といえよう。

注:2005年以降は予想値。
(フィンランド財務省より参考)

■ 失業率も改善傾向にある。1995年には15%を超えた失業率も2004年には8.8%にまで回復している。しかしながらスウェーデンなど近隣の北欧諸国と比べると2倍の水準であり、EU内の平均値をも下回っているという事実は依然として大きな問題である。特に高齢者層の失業や若年労働者の減少が顕著であり、これらはフィンランドの今後の喫緊の課題となっている。

注:2005年以降は予想値。
(Statistics Finlandより参考)

■ フィンランドの財政状況は主要先進国と比して良好である。下の円グラフは2004年のフィンランドの歳入であるが、ほぼ税収で賄われており債務補填は全体の約3.8%程度となっている。日本の平成17年度の一般会計予算が、その41.8%を公債金収入に依存している事実と比較すると、いかに我が国の財政事情が逼迫しているかが改めて認識される。

(Statistics Finlandより参考)

■ 債務残高の累積額も700億ユーロ弱にまで増加しているが、やはり相対的には低水準である。対GDP比率は改善傾向、あるいは近年は横ばいで推移しており、政府の債務削減努力と経済成長が寄与しているのであろう。

(Statistics Finlandより参考)

■ このような堅調なフィンランド経済を好感してか、外国資本の直接投資額も断続的に伸びている。2005年1月から法人税が29%から26%に引き下げられたこともあり、投資額も増加することが予想される。法人税率の引き下げは世界的な潮流であるが、フィンランドの26%という数値は相対的にも低くOECD諸国の平均を下回る。各国優遇税制の戦略的活用が求められるグローバル経済を意識した減税ともいえよう。また経済的な発展が遅れている地域には奨励制度もあり、外資も利用できる。そもそも外資に対する規制はほとんどなく、金融も自由化されているため資金調達にも規制はない。

(JETROより参考)

※青棒は法人税率。積み上げ分は地方税などを足した実効税率。
(JETROより参考)

■ 日系企業は参天製薬など6社(すべて製造業)が進出しており、二国間の貿易額も増加している。日本からの輸出(2004年)では自動車が36.4%と最大で、次いで映像機器、電子部品と続く。同じく輸入で最も多い品目は木材で24.4%、次いで木製品、通信機となっている。ただ日本はフィンランドの貿易相手国として輸出全体の2%(2004年)を構成するのみで、フィンランドの主な貿易相手国はスウェーデンやドイツとなっている。

(JETROより参考)

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§2 経済の持続的成長に向けて

■ 高齢化の進むフィンランドでは今後労働力の減少が懸念されている。高福祉国家の同国の持続的成長には経済成長の原資となる労働力の確保は不可欠であり、そのために政府も対応を迫られている。

■ 労働力確保の選択肢としては、移民や外国人労働者の受入、高齢者雇用などが挙げられる。その中の高齢者雇用に向けた取り組みとして、フィンランドでは5ヵ年計画のFINPAW(フィンランド高齢就業者全国プログラム)が1998年から開始された。これは1990年代の不況を乗り切るために実施した大幅なリストラ策(高齢者の早期退職制度など)から、高齢者を雇用し続けて経済成長を持続させていく方向へとシフトする政策上のターニングポイントでもあった。この計画は高齢者の就業率や退職年齢の上昇といった成果を見せ、その後の同国の高齢者雇用に関する大きな方向性を示す契機となったと評価されている。

(高齢者雇用開発協会より参考)

■ FINPAWの目的は45歳以上の年齢層の雇用を促進し、早期退職を防止することにあった。そのために高齢者のワークアビリティの向上を目指した教育学習プログラムの提供やエイジズム(年齢差別)に対する社会的理解の啓蒙活動、法改正による社会インフラの整備などが行われた。その結果として就業率の向上に繋がったのだが、上図にあるように55-59歳の就業率の上昇が顕著であり、2001年には経済不況以前の水準(1989年)を上回った。現在では高齢者就業率でEUの平均値を上回っており、高齢者雇用への社会的な理解は着実に拡がっている。

■ ただし90年代後半からのフィンランドはハイテク産業の成長や高度なIT化によって急激に経済回復を果たしているため、こうした経済情勢の好転がFINPAWにとって追い風となった点は否定することはできない。しかしながら政府と民間が協力して共通の社会的問題に取り組み、その動きが年金改正、法律改正さらには国民の意識を少なからず変えることにまでつながった点は間違いなく評価できるだろう。

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§3 まとめ

■ 資源の乏しい国土の特性からか、フィンランドでは人的資源に対する考えが強く、教育を重視する風潮がある。この「未来への投資」がフィンランドの国際競争力をさらに高めるという好循環を生んでいるわけだが、高齢者雇用対策にも教育を積極的に活用している。フィンランドでもデジタルデバイドは拡がっているが、PCスキルをはじめ、公的な教育プログラムは整備されつつある。

■ 一方、同じく高齢化が進んでいる日本では近く2007年問題として団塊世代の大量退職時代を迎える。それに伴い、メーカーではベテラン熟練技術者の技術継承問題が発生している。技術大国日本の危機が叫ばれる中、ようやく退職年齢の引き上げが本格的に議論され始めた。一部の企業の中では退職年齢を引き上げる動きも実際に出てきている。

■ また高齢化とともに日本は人口減少という問題も抱えている。もはや就業期間の長期化は必然とも思われるが、ただ単に退職年齢を引き上げるだけでは足りないだろう。年金制度から雇用形態、生涯学習環境などに至る様々な社会インフラの整備が求められるだろうし、ニートやジェンダー、ワーク・ライフ、移民の受入など今後ますます重要となってくる問題は山積している。これらの問題に対して早急かつ効果的な対応が迫られていることはいうまでもない。

参考サイト: フィンランド統計局 (http://www.stat.fi/index_en.html)
フィンランド財務省 (http://www.vm.fi/vm/liston/page.lsp?r=2622&l=en)
フィンランド大使館 (http://www.finland.or.jp/ja/)
JETRO (http://www.jetro.go.jp/indexj.html)
高年齢者雇用開発協会 (http://www.assoc-elder.or.jp/index.html)
参考文献: 「情報社会と福祉国家」
(2005年 ミネルヴァ書房) 著 マニュエル・カステル/ペッカ・ヒマネン
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