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第4章 魅力的な都市を目指して |
by飯田 耕平 | ||||||
§1 観光立国を目指す動き■美しい木造建築や特異な文化遺産など、日本には世界に誇れるものがたくさんある。京都や奈良の寺院や浅草などの観光名所には、毎年たくさんの外国人旅行者で溢れかえっている。歌舞伎や能といった伝統芸能に対する外国人の興味・関心も高く、歴史的な文学作品や日本文化は多くの人の心を惹きつけて離さない。 ■しかしながら、我が国はこうした観光資源を本当に有効活用しているのだろうか。おそらくまだまだ潜在的な資源や魅力が多く存在するように思えてならない。これは訪日する外国人の数にも表れている。日本の外国人旅行者受入数は524万人である。これは世界35位の数字で欧米などと比べて非常に低い。一方、日本人の海外旅行者数は、約1652万人で世界10位という実績を持っている。ちなみにこうした受入数と旅行者数のギャップによって、我が国の国際旅行収支は約2.9兆円の赤字となっている。
■このような現状を踏まえ、日本でもようやく観光立国を目指す取り組みが行われてきた。小泉総理は日本を訪れる外国人旅行者を2010年までに1000万人に倍増させる目標を掲げている。観光産業をこれからのリーディング産業と位置づけ、国を挙げて支援していく方針だ。 ■また観光立国は観光資源を有効活用するためだけに留まらない。観光は地域活性化や経済効果を生み出し、さらには相互理解から生まれる信頼を基盤とした新たな安全保障としての役割も担うことができる。こうして紛争抑止力も軍事力というハード・パワーから、国際交流というソフト・パワーに代わっていくことが期待される。
§2 日本の問題点■日本が観光立国として他国に遅れを取っていた理由は3つ考えられる。まずよく指摘されるのは、日本人は自国の魅力を十分に認識していないという点だ。世界有数の観光立国であるフランスやイタリアでは、自国の文化を語れる人が当然のように存在する。こうした国民レベルでの意識の差は、個人のPR活動や情報発信などが盛んな現代において大きく影響するはずだ。やはり日本人にはもう少し自国の文化を見直すことで、魅力のある日本の財産をアピールしていくことが望まれる。これがソフト面でのボトムアップに繋がるからだ。 ■2点目に、我が国は美しい景観などの日本独自の魅力を維持する努力をしてこなかったことが挙げられる。前章で見てきたように高度成長期の開発は、美しい田園風景や伝統的な建築物の多くを失わせてしまった。都市部には無機質なビルが立ち並び、日本独自の良さが上手に宣伝できているとはいえない。 ■3点目として考えられるのが創造性の欠如だ。都市の整備などは進めていたものの、例えば旅行者にも優しいグローバルな街づくりの様な取り組みはあまり行われてこなかったのではないだろうか。残念ながら新しい魅力を創り出す努力が乏しかったことは否めないだろう。 ■海外からの観光客を大挙として呼ぶ為には、常に新しいイベント、芸術、技術、都市、産業といった対外的な魅力を絶えず創造・発信し続ける必要がある。そういった意味では現在、愛知県で開催されている万国博覧会「愛・地球博」は、日本の文化や感性を海外に強く発信する理想的なものである。特にアニメやロボット技術などは世界も注目するところであり、我が国としては大いにアピールするチャンスである。
§3 観光立国へのストラテジー■世界観光機関(WTO)によれば、世界の外国旅行者数は1970年から2000年までの間に、1億5900万人から6億9700万人に増加したようだ。そして2010年にはさらに10億人にまで増大するといわれている。観光産業への期待も益々高まるばかりである。 ■そのため政府としては「観光立国懇談会」を開催し、観光立国を実現していくための課題と戦略を提言している。観光立国には自国の文化や魅力を発信していくことが重要であるため、どういったイメージで日本を売り出していくのが良いのかを国として示す必要性がある。つまり「日本ブランド」のイメージ戦略である。仮にこれがうまく機能しなければ、効果的な宣伝活動はできない。そのため政府は、日本の魅力をどのように発信していくべきかを試行錯誤しているのである。 ■また国・地方・民間の密な連携はやはり必要不可欠だ。国が規制緩和を進めるなど国際観光の環境を整え、民間企業が協力して情報発信やサービス改善に努めることが求められる。そして地方公共団体は、その地域の特性を活かしながら、関連産業がスムーズに事業展開できるように行政的に支援するべきだ。このような連携の下で、日本国民全員が海外に対して日本の魅力を伝えていくことができれば、日本ブランドの強化に繋がるはずだ。 ■観光という観点から最近の都市開発を考えてみると、なるほど六本木ヒルズや秋葉原プロジェクトなどは従来とはコンセプトが多少異なる印象を受ける。外国人旅行者をターゲットとした取り組み、例えば看板や切符などの英語表示やインフォメーションセンターの設置など、都市開発に「観光」や「グローバル化」という要素が織り込まれているのが見受けられる。特に六本木は昔から歓楽街として、秋葉原は電気街として、それぞれ外国人旅行者に人気のスポットであったため、これからの一層の発展を期待したい。 ■六本木は超高層のビルや複合施設が近代的な日本をイメージさせることができるし、日本が誇る食文化についても有名なテナントを誘致することでアピールできている。秋葉原は最先端の家電を揃える電気街以外にも、アニメやコミック文化、さらに最近では複合施設も建設されており、文化発祥の地としての性格も強くなってきている。こうした都市づくりを今後も進めることで、日本の都市の魅力を高めていくことができるだろう。 ■最もホットな話題では、中部国際空港セントレアも観光をキーワードに含んでいると考えられる。「エアポートからエアシティ」へというコンセプトからもわかるように、空港自体が観光都市としての魅力を兼ね備えている。空港内にはレストランやショッピングは勿論、お風呂やエステ、イベントホールまで用意されているというから驚きだ。これにより外国人旅行者は空港に降り立った瞬間から、快適な日本を堪能することが可能となる。空港からのアクセスも多彩で、そこから名古屋や愛知万博へ訪れる客も多いようだ。
§4 観光産業の将来性■政府が観光産業をリーディング産業にしようとするのは、大きな経済的効果が見込めるからである。旅行などの直接効果だけでも年間約20兆円を超える規模で、さらに波及効果まで含めると年間約49兆円にものぼり、これは国内生産額の5.4%を占めるほどだ。同様に雇用創出効果も直接効果だけで約181万人、波及効果では約393万人となる。これは国内総雇用数の5.9%にも及ぶ。
■このように観光産業は旅行業、宿泊業、輸送業、飲食業、土産品業等、極めてすそ野の広い産業であるため、その経済効果は極めて大きい。従って日本経済を活性化させる可能性と将来性のある産業として大きな期待が寄せられている。 ■さらに日本にはまだまだ未利用の潜在観光資源が存在する。例えば日本の美しい山々や海岸などは観光的価値が相当高いと思われる。また石原都知事が以前から提案しているカジノの合法化や、首都移転問題など、ビッグビジネスの到来を予感させるニュースも多々ある。国の支援を受けて地方自治体や民間企業が有効利用できれば、観光産業はさらなる一大ビジネスへと転身するはずだ。 ■観光は総合的な知的文化産業であるため、人材育成にも力を注がなくてはならない。現在でも高等教育機関において、観光学部など関連学部が開講されているが、今後はますます需要が高まってくると思われる。企業と国と研究機関による「産学官」の連携体制を強化していくことなどが求められている。高度な教育を受けた観光のスペシャリストが、日本経済を牽引していく日が訪れるのもそう遠くないかもしれない。
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