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第1章 2050年の人口問題 |
by葛原 怜 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
§0 はじめに■ 「50年」という月日は想像をはるかに越えた変化をもたらすのに十分な時間である。特にブロードバンドに依存し始めた現代を考えるとその速度は、1000年前の50年とは比べものにならないだろう。1945年に終戦を迎えた第二次世界大戦以降に『戦後』という言葉が使用されるようになった。その大戦から約50年経った2000年は平成不況の窮地に立たされ、物価の下落や不可解な事件、企業のリストラなど暗いイメージのまま20世紀という一世紀の幕を閉じた。 ■ 今から考えれば10年も経っていない事実で、その変化に驚くこともないかもしれないが、1945年の終戦直後の状態から、現在の日本をあるいは世界を予想できたであろうか。第三次世界大戦になるのではないかと懸念されたイラク戦争やそれに付随する宗教観からのテロ行為。急激な原油高や、環境汚染による京都議定書の批准問題。地球は人類の進化の速度についていけず、資源は枯渇し、その痛々しい地表をあらわにし、温暖化という形で悲鳴をあげるまでにいたった。 ■ たったの「50年」という月日で46億年もの進化の産物を、壊滅的なものにできうるのである。それが現代の「50年」である。ではこれから、これらの感覚を踏まえた上で、今からさらに50年後の2050年のことを現代のデータや事実をもとに考えていこうと思う。予言ではない、確証的な発見を少しでも見出し、今後の世界を見る上で何らかの指標となれれば幸いである。
§1 日本の人口■ 上のグラフを参考に見て欲しい。日本の人口今後50年の予測推移であるが、2006年を境に減少の一途をたどる予定となっている。近年、我が国の合計特殊出生率は急速に低下し、平成2年(1990年)にはいわゆる「1.57ショック」という言葉を生んだ。その後、さらに出生率は低下し、人口を長期的に維持するために必要な水準を大幅に下回る状況となっている。このことは、低い出生率の下で子どもの数が減るという少子化が進行する中で、生産年齢人口が減少し、次いで総人口までが減少し続ける社会になることを意味しており、人口減少社会の到来は現実のものとなりつつある。
■ また、少子化の進行と平均寿命の伸長とが相まって急速に人口の高齢化が進んでおり、我が国は未だ人類が経験したことのない少子・高齢社会−若年者と高齢者の人口構成割合が従来とは極端に異なった社会−を迎えようとしている。少子化と高齢化の進行は将来の我が国の社会経済に様々な深刻な影響を与えると懸念されるが、少子化は我が国社会のあり方に深く関わっており、社会への警鐘を鳴らしていると受け止めなければならない。 ■ 平成14年(2002年)1月に発表された「日本の将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)」の中位推計によれば、出生率は現在の水準に比べある程度回復するものの、人口置換水準まで向上することは見込まれず、このような低い出生率水準の下で子ども数が減るという少子化が進行する中で、生産年齢人口が減少し、総人口が持続的に減少していくことが予測されている。具体的には、我が国の生産年齢人口は1995年を頂点にすでに減少しており、引き続き総人口も2007年を頂点に減少に転じ、その後も減少しつづける。そして、2050年には、総人口は約1億人と現在の約1億2600万人に対し2割程度の減となり、一方、65歳以上人口割合は平均寿命の伸長とあいまって2025年には27%、2050年には32%に達すると見込まれている。 ■ また、今後、出生率が現在の水準に比べ相当程度向上するとの高位推計の下でも、少子化の進行は避けられない見込みとなっている。出生率が現在の水準でさえも維持することはできないという低位推計の場合には、2050年の総人口は、9200万人と1億人を割るまでに減少し、現在の人口に比べ3割近い減となると見込まれている。 ■ 少子化の要因として大きなものは女性にとって育児の負担や仕事との両立が困難な状態なることが挙げられる。男女平等な雇用機会が与えられるようになった昨今では、女性の社会進出が当り前になってきた。そうした中で、同時に社会が整備していかなければならないものは、育児をやりつつも仕事ができるような環境である。徐々にではあるが各企業も様々な制度や施設を設けてはいるが、まだまだ働く女性にとっては不十分といえるのだろう。 ■ そして、それに加え『結婚』ということの自由度が以前よりも増していることもひとつの要因であるかもしれない。以前は結婚することが人生の条件の一つにあったかもしれないが、現代では結婚することが選択肢の一つに過ぎないというような感覚で扱われているのである。それよりも自分のライフスタイルの確立が優先的で、晩婚化しているのもそのことが関係しているといえよう。 ■ これらの要因で少子化が進んでいるとしたならば、就労意欲を持つあらゆる者が就業できる雇用環境の整備が必要であるといえる。女性はもちろん、高齢者や障害者などにも就業意欲が湧くような雇用環境が必要である。そしてさらに、少子・高齢化の進展に伴い、社会保障に係る負担の増大は避けられないが、介護に対する不安等新たな課題に着実に対応しつつ、現役世代と将来世代の給付と負担の公平が図られるよう、年金制度、老人保健制度を含む医療保険制度を中心に給付と負担の適正化を図ることが必要である。 ■ 特に、公的年金制度については、人口構成の変化により、将来世代の負担が過重にならない安定的なものとする視点が重要である。将来に向けて、介護や年金についての国民の不安を解消することは、次の世代を安心して産み育てられるようにするという観点からも重要なことである。
§2 世界の人口■ 現在世界の総人口は約63億人。毎年1億人前後の増加が見込まれ、2050年には90億人に達するものと予測されている。世界人口の8割は開発途上国、6割はアジア地域の国民でやはりその偏りは大きい。人口増加が最も多いのはアフリカ地域である。下図の表を見てもらえればわかると思うが、圧倒的にアジア・アフリカ地域の人口増加率が高いことが伺えるであろう。 【主要国の人口増加率と女性の非識字率の比較】
[データは2003年のもの/単位:%]
■ 人口の増加によって食料不足・エネルギー不足・環境破壊などの問題が生まれ、世界で人口が最も多い中国では人口増加の社会問題化によって「一人っ子政策」が推進されている。世界第2位のインドでも人口抑制に努めているものの、中国とインドの2国だけで世界人口の約4割近くを占めている。人口増加の割合は中東やアフリカ諸国が高く、低いのは東欧諸国である。その人口増加と識字率の関係も上の表は表している。 ■ 識字率の数値がなぜ人口増加率に関係してくるのか。女性の非識字率が高いということはその国の多くの女性は教育をしっかりと受けていないということになる。そのために女性は将来設計など考えずにむやみに子供を産み大量の人口増加をもたらすというわけである。しかも、教育を満足に受けることができない国は、開発途上国や貧しい国々に多く存在し、医療機関や衛生面での充実が得られないために、幼児の死亡率も高いため、沢山の子供を必要とするという現状も存在する。これらの人口増加率の高い国々は宗教的な理由も考えられるが、上記のような理由が多くを占めるため、衛生面や医療機関の充実や教育環境の整備が急務といえる。 ■ 先進諸国の中で最も人口増加率が高いといわれているのが、人口の3分の1を移民が占めるアメリカ。正規国民の増加率はヨーロッパ先進諸国の約4倍。絶えることのない不法入国者を入れると更に高い数字となり、米国の悩みのひとつとなっている。アフリカ諸国の人口増加は鈍化傾向にあるが、背景にはエイズによる死亡者の問題が挙げられている。また人口増加率の世界平均は1.3%。日本は0.2%と平均値よりかなり低いものの、ヨーロッパの先進諸国と比べると大差ない数字となっている。 ■ 日本の人口密度は約340人。世界のベスト10に入っていないものの、都市人口では東京が世界第1位で約2500万人。大都市ニューヨークは1700万人となっている。人口密度の低い国は、草原国家として知られるモンゴルやカナダ、オーストラリアなどである。また途上国では農村から都市への人口流入の傾向が強く、流入した人の25%が住居を確保できないことで、スラムとよばれる居住区を形成する結果となっている。 ■ 65歳以上の国民割合の世界平均は約7%。先進国平均は約14%、途上国平均は約5%である。医療や栄養摂取などの水準が高い先進国は寿命が長く、日本は17%を超える世界トップレベルの高齢化国となっている。しかし、高齢化に伴って同時に考えなければならないのは少子化である。高齢化の進展は少子化の進展にもつながる。世界各国がある一定水準の医療レベルに達したとき、世界の人口は死亡者の減少に伴って恐ろしい勢いで増加することであろう。
■ 上図のように2050年には世界人口は90億人を突破してしまうかもしれない。その頃には一次エネルギーの消費に伴い、多大なる環境破壊が行われ、地球環境は現在の比ではないくらいの危機に瀕していることであろう。世界人口を急に抑制することは、様々な問題が生じるために難しいかもしれない。しかし、このまま放置していてはいつか近い将来に人類は滅亡してしまうことは一目瞭然である。それではどうするべきか。やはり、現状のエネルギー使用の面で抑制することで環境維持をしていかなければならないのではないだろうか。次章では2050年の環境について論じたいと思う。
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