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第9章 2050年のアメリカ Part2 |
by葛原 怜 | ||||||||||||||||
§0 はじめに■ あと1月でアメリカ同時多発テロから4年になる。今年の7月にもイギリスのロンドンで同時多発テロが起こったことにより、世界各国の首脳陣はテロとの戦いから逃げることもなく立ち向かっていくことを世界表明した。それと同時に、自国がいつテロの被害にあうのかわからなという現実と立ち向かっていくことになり、厳重な警備体勢を主要都市に敷いている。 ■ そんな不安定な現状のある中で、アメリカは未だイラクからアメリカ軍を撤退させることはない。そのアメリカの行動がテロ後何年にわたり続くのか、また2050年にはどのような国家へとなっているのかを前章の現状を踏まえた上で考えていきたいと思う。また、それと同時に、地球環境を持続させるためにはアメリカはこれからどうすべきか。あるいは、どうしていくのかということを2050年の現状を踏まえて、本章で考えてみることにする。
§1 2050年のアメリカ国防費■ 前章で国防費の推移について2003年までの動向をグラフ化したが、今回はそれを遥かに越えた2050年の国防費を予測したいがために今までのグラフの近時曲線を導き出し、2050年のアメリカの国防費の大まかな予想を立てることにした。まず、今まで傾向を読み取ると、2003年までに多少のゆれ幅はあるものの、右肩のぼりに国防費が増加していることはわかる。 ■ またさらに、ベトナム戦争が起こった1960年から1975年までや、湾岸戦争が起こった1991年、そして9.11が起こった2001年などの年では国防費が急激に増加していることがわかる。そして、さらに読み取れることとして、国防費を増強すればするほど以前増強した時よりも多大なる額になっているということである。もちろんその原因としては、世界最高峰の最先端兵器の開発や世界最強を誇示するために開発途上国やその他の中東アジア諸国に対して圧倒的な軍事力を誇示することも大きな狙いなのかもしれない。
■ さらに、もう一つのグラフとしてGDPに占める国防費の割合について2050年の値を同様に推測してみた。これによると、国防費とは異なり割合はどんどん下がっていくことになっているが、これはアメリカのGDPがこのまま増え続けていくことを前提としているためである。アメリカはGDPに占める国防費の割合では世界でも20位前後とあまり高くない。しかし、それはあくまでGDPが大きいというだけであり、世界一の国防費であることに変わりはない。 ■ いずれにせよ、2050年の国防費はこれまでの傾向を考えただけでも増加することは間違いないであろうし、5000億ドルの大台を超えることも考えられる。そして、身近な例で言えば、イラク戦争が長引けば長引くほど、アメリカの国防費は増え続ける。それは、前年度大きく下回るようなことは、世界最強の軍隊を誇示するアメリカにとっては軍隊を縮小するということになり、大きな抵抗感があるようである。
§2 2050年の戦争■ 今、革命的な変革が軍事分野に起ころうとしている。この変化は18世紀のフランス革命がもたらした軍事大変革以来のものといっていいだろう。この大変革をもたらしている根源は情報革命にあると考えられる。ここ、5・6年のうちにわれわれの戦争観が一変しても不思議ではない。 ■ 戦争が火力による殺傷・破壊行為を意味するようになったのは、わずかに200年前のことである。フランス革命以前、17・18世紀の戦争は、相手軍の退路を遮断することで勝敗が決し、無血のうちに終結することが多かった。ところが、新興国民国家の莫大な兵員動員力を背景として登場したナポレオンが敵軍隊を火力で殺傷・破壊することによって戦勝を獲得したためにこれが全世界の倣うところとなったのである。 ■ このナポレオンによる軍事的変革に匹敵する大変革が、今再び起ころうとしている。情報化社会の特質をつぶさに分析した軍事専門家は情報革命の衝撃によって、21世紀の戦争はまったく新しい戦いの形態や性格を帯びると予測する。欧米では、この軍事的大変革を情報型「軍事革命(RMA:the Revolution in Military Affairs)」と呼んでいる。 ■ 情報型軍事革命の核心は、登場する新兵器の問題ではない。軍事大変革の結果、21世紀の戦争は最終的に「どのような戦いの形態になるのか」ということが問題なのである。情報型「軍事革命」を積極的に推し進めている人は、情報革命の衝撃によって兵器技術そのもののみならず、兵器技術をどう使うかや、どのような組織が最適かについても大変革が起き、戦いの形態、さらには戦いの性格までも変わってくる。 ■ 1991年の湾岸戦争ではあまり見られなかったが、1999年に起こったコソボ戦争ではまったく新しい軍隊の運用方法や編成・組織が生まれ、戦いの形態までも変わり始めていた。例えばこの戦争では、NATO軍側はサイバー兵器やメディアを大々的に活用しユーゴスラヴィア軍を混乱させる一方、精密誘導兵器や非殺傷兵器を多用し、双方の軍隊と民間施設に対する物理的損傷を最小限に抑えようとしたのである。 ■ もしもこのように、情報技術や精密誘導技術を活用した兵器が次々と登場し、軍隊の運用法や編成・組織までも劇的に変化すると、戦いの形態や性格はナポレオン時代から今まで続いてきた工業化時代と異なってくる。工業化時代の戦いの性格が「消耗戦」とするならば、相手のポイントのみを最小限につく情報化社会の戦いは「麻痺戦」となるだろう。「消耗戦」は敵主力部隊の殺傷・破壊を目標に掲げる戦いであったが、「麻痺戦」の目標は、指揮・統制機能を無能にすることによって敵主力戦闘部隊の機能を麻痺させることにある。 ■ こうした軍事革命が起こることはもはや間違い事で、2050年では戦争の形態として当然となっている可能性が高い。それならば、大量の軍人や兵器を現地に送り込んで占拠するという必要もなくなり、いかに高度な技術と情報を構築するかということが全てになってくるはずだ。つまり、現在アメリカをはじめとする各国の軍隊が多大なる資金を投じている軍人や軍備の多くが必要なくなるというわけである。 ■ 唯一必要なものは、高度な技術を開発する技術と、それを操作する少数の軍人ということになる。先述した予想ではこれから益々国防費は増えていくと予想したが、RMAが起こっているということを考えるとあのグラフは大いに下方シフトすると考えられる。もちろん、RMAに伴って様々な研究が現在以上に盛んになるのではないかということも容易に想像できるため、一概に大きく減少するとは言えないが右肩があがりの現状からは脱却しそうである。
§3 2050年に向けてアメリカが取り組むべき環境対策■ 現在、60億人の人口が一年間に炭素換算で60億トンの化石資源を消費している。世界平均の一人1トンに対して、日本は2.4トン、イギリスは2.5トン、ドイツは2.6トン、アメリカは他の先進国の二倍を超える5.3トンとなっている。ちなみに、アメリカを除いた日本とEU諸国を合わせた先進国の平均は2.3で、2050年時点で80億人近いとされる途上国の人々が今のアメリカ以外の先進国と同じだけ消費したとすると、それだけで185億トンの化石資源消費量になる。 ■ さらにアメリカが現状のままの化石燃料消費量を続けるならば、2050年に人口が4.5億人と推定されるため、約24億トン(地球全体の9%)もの消費量をたった1国で出すことになる。現在の確認埋蔵量と年間消費量の比が40年である石油資源はこういった速度で消費が伸びるとすれば2050年には、ほとんど枯渇していることになるだろう。
■ アメリカの化石燃料消費量の圧倒的な多さの原因は、車社会にあると考えられる。広大な国土面積や安価なガソリン、鉄道網の未発達などが大きな理由で今から車社会を変えることは非常に難しい。さらに言うならば、車社会であるからこそ自動車メーカーがアメリカで発展したのであろうし、今からその主要産業をなくすというのは自国の経済を自ら失脚させることにつながるゆえ、アメリカもそれを容認しないだろう。 ■ もっとも、できうることの一つとして自動車メーカーが効率的な燃費のいい車を開発するということがある。これは現在、アメリカの自動車メーカーのみならず、世界を代表する日本メーカーも取り組んでいる重要課題である。 ■ 実はアメリカが2050年に向けて取り組むべきことのヒントがここにある。簡単に言えば現状の化石燃料消費量やCO2排出量を大幅に減らすということはかなり難しい。さらに結果として、一部の先進国しか取り組まなければ意味がないという京都議定書に対するアメリカの発言は正解であるかもしれない。途上国が経済発展をすることは止めることができないかもしれないが、経済発展をし終わり、ある程度の物質的な余裕をほとんどの発展途上国が2050年に得ることができたとしたらどうだろう。 ■ 過剰な人口増はそれにより減少へと向かうはずで、発展途上国の多くも環境への関心が高まると考えられる。その時のために、アメリカにとってやらなければならないことは、まずは自国のエネルギー効率をあげることと、その技術を発展途上国に伝えることである。以下のグラフを見て欲しい。
[※注1より参考] ■ 1994年のデータであるために若干異なるかもしれないが、ここにはのっていないロシアを含めた先進国が日本の並に効率的なエネルギー消費を行うだけで現在のエネルギー消費を約30%削減できるという。こうした効率性の差は単にその技術を導入するかしないかという点のみで、どの国でも可能なものである。今までは、確かに投資とリターンの関係で導入するメリットが小さかったかもしれないが、京都議定書を始めとする様々な規制などを考えると、経済的にも投資分を回収できるはずである。 ■ 以上のことから見てわかる通りアメリカは、2050年の地球環境を考える上で非常に重要な立場にある。しかし、同時にアメリカのみを環境問題を論じる際に相手にするのもおかしな話であろう。先ほども言ったが、「発展途上国が参加しない議定書は意味をなさない」というアメリカの発言は大きく間違っているわけでない。しかし、根本的な考え方の中でその他の先進諸国と違うのではないかと思わずにはいられない。 ■ それは、アメリカは2050年に完全に地球環境が温暖化を含めて改善されていることただひたすら正解とし、それ以外は意味をなさないと考えているのではないかということである。もっと言えばあと45年後に地球環境が完全に改善されていることは間違いなくありえないだろう。むしろ現状と変わらないか少し悪化している可能性の方が高い。 ■ 現実的な考え方は、右肩上がりの地球環境の悪化速度を一度止め、それから減少させ改善していくというものだろう。その一つの山の分岐点が2050年で、それに向けて地球全体で取り組んでいこうというわけである。世界最大のGDPを誇り、世界最強の軍隊を持つアメリカ合衆国が、「真」のリーダーシップを地球環境問題においてとってくれる日が、少しでも早くなることを願う。
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