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● 2050年問題
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第7章 2050年のアメリカ Part1

by葛原 怜

§0 はじめに

■ 21世紀の幕開け、アメリカ経済は株価暴落後の景気後退や9.11テロ攻撃などの困難に直面することから始まった。前世紀末の10年間は冷戦体制の終了とともに、アメリカが軍事面の超大国として、また社会主義に勝利した資本主義のリーダーとしてその地位を世界で確固たるものにした。経済面でも、長期にわたるインフレ加速のない成長を維持し、情報通信技術の新たな応用や株式市場の活性化などを併せてその力を印象付けた時代であった。

■ 以下のグラフからもわかる通り、アメリカ合衆国だけで世界の30%ものGDPを叩き出している。もはや、グローバルスタンダードを形作っているのはアメリカという意見も的を射ていると言わざるを得ない。政治、経済、文化など全ての事においてアメリカなくしては語れない。アメリカを見ずにはいられないだろう。


[総務省統計局より参考]

■ しかし、ここで考えてほしいのは、50年前のアメリカはここまでの国家であったのかということである。戦後間もない頃はイギリスやドイツを初めとした西欧諸国の存在も大きく、アメリカの一人舞台とまではいっていないのではないだろうか。50年という月日は国際情勢を変えるには十分な時間で、我々が考える2050年の世界ではアメリカが今から想像もできないような地位にいることも当然起こりうる。さて、これまで2050年の様々な分野のことを論じてきたが、本章からはそれらを踏まえた上で、特に各国の人と産業と軍事を中心に2050年を考えていきたいと思う。

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§1 人口の高齢化

■ 現在、アメリカ合衆国の人口は3億人にもうすぐ手が届きそうなくらい増加している。このままのペースが持続すると2050年には4億人を越えるとまで言われている。その人口増加の一つの要因としてヒスパニック系の民族の影響があると言われている。ヒスパニックは、民族的に非常に多くの子供を作ることが特徴で、以下のグラフのように2050年にはヒスパニック系の人口の占める割合は増加すると考えられている。

[参考:U.S. Department of Commerce、 Bureau of the Census、 The Official Statistics]

■ しかし、もちろんアメリカ社会の人口の増加は、出生率が増加しているからというわけではない。世界的な問題となっている少子高齢化の影響である。これに伴い、アメリカ合衆国でも日本と同様に社会保障の問題、労働力人口減少の問題などが挙げられている。

■ アメリカ経済の長期的な見通しは、一つの要因すなわち、高齢化および人口構造の変化に対処するためにどのような政策をとるかに大きく依存している。今後40年間にアメリカの人口構成には大きな変化が生じる。高齢者が大幅に増加する一方、労働人口の伸びが鈍化する。労働年齢の者1人に対して、65歳を超える者の数がほとんど倍増するという。アメリカでは出生率が比較的高く、また移民も入ってくるので、アメリカの高齢化は他の多くのOECD諸国に比べると遙かに緩やかなものになると予想されているが。それでも、経済的な影響は重大である。

■ また、主として労働力の伸びが鈍化することから、景気拡大も鈍化することは否めない。そうなると、高齢者の消費が労働人口より多くなるので、個人貯蓄が長期的に減少し続け、資本流入にもかかわらず、資本ストックおよび生産性の伸びの低下につながる可能性がある。これは、生活水準に影響を及ぼす可能性がある。

■ アメリカにとって幸いなことは、民間部門では年金貯蓄産業が発達しており、少なくとも他のOECD諸国に比べれば、財政に対する負担は軽いということだ。最も重要なのは、国民が退職に備えて資産を蓄積するよう1978年に導入した401(k)/確定拠出型退職手当制度が成果を上げていることである。1997年末で1兆8000億ドルを超える額が401(k)やその他類似の制度に投資されているが、これは、社会保障信託基金の資産のほとんど3倍に相当する。この「成功談」の2つのプラスの側面が注目される。

※ 401(k)・・・アメリカの確定拠出型年金の一。従業員が個人ごとに勘定をもち、企業から提供される運用プランの中から自分でプランを選び運用する。

■ 第1に401(k)の制度により、転職の際に退職貯蓄を維持するのが容易になったので、労働弾力性が向上した。第2に、退職のための投資方針決定について、個人の責任を重くしたことである。しかし、財政に対する負担もある。公的な予測によると、今後40年間に、高齢者に対する社会保障年金支払いおよび医療コストは、それぞれGDPの2.25%および4%の率で増加する模様である。このため、保険計理上の見積もりによると、2034年には、社会保障信託基金の資産はゼロになる。他方、社会保障やメディケアでは多額の赤字が出るかもしれないが、連邦予算の他の部分は大幅な黒字を計上する見込みである。

※ メディケア・・・アメリカ・カナダの六五歳以上の高齢者や身体障害者などに対する政府の医療保険制度。入院に関する保険と医薬品に関する保険とがある。

■ 極めて長期的には、政策の変化がないとして、社会保障およびメディケアは、GDPの0.8%および1.3%に相当する赤字を出している可能性がある。高齢者のためのメディケイドの増加も赤字をGDPの0.3%分増加させ、結局、高齢化による赤字合計は、GDPの2.4%に達する。他方、予算の他の部分は、議会が大統領の支出計画を支持することを前提として、GDPの1.6%に相当する減税を行う余裕があるという。

■ いずれにせよ、出生率の低下という問題はいまだ解決されず、何かしらの手を打たなければならないことは確かである。日本でも働く女性を支援する動きがようやく始まり、女性が子供を産み、育てやすい環境を作ってきている。それに対し、遅れをとっているアメリカや日本は今後10年で整備し、2050年にはその成果で出生率を向上していかなければ、15億人の人口を持つ中国やインドに労働生産性で負けてしまう恐れがあるのではないだろうか。

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§2 21世紀の産業

■ アメリカ合衆国の代表産業として思い描けるものはなんだろうか。自動車メーカーか、石油メジャーか、映画産業か。どれも重要な産業ではあるが20世紀後半から現在にかけてアメリカ合衆国が世界に大きく影響を及ぼした産業としてIT産業か挙げられる。IT産業とはごく単純化すれば半導体とコンピュータ、通信などの各業種がインターネットを媒介に融合して成立したハイテク電子産業の総称である。

■ IT産業を支える第一の基盤は半導体であった。1980年代半ばに日本勢とのDRAM競争に敗れ、深刻な危機に陥った半導体産業は、90年代半ばに景気回復とドル安、そしてパソコンブームによるMPUの開発・生産に特化したことで復活した。米系企業は93年には約7年ぶりに販売シェア世界主意の座を取り戻したのである。

■ 第二の基盤として、コンピュータ産業がある。1980年代に米国のコンピュータ産業は従来の大型汎用機から、より小型・低価格のパーソナル・コンピュータ中心へのかつてない転換期を迎えた。パソコンの本格的な普及では大型汎用機の代名詞であるIBMが新製品を開発し、事実上の標準を作り上げ、同社は心臓部のOS(マイクロソフト)、MPU(インテル)をはじめ多くの部品を社外から調達し、技術情報を公開するオープン・アーキテクチャー戦略をとった。

■ これにより多くの新興企業が現れ、パソコン業界では熾烈な価格競争や性能の向上が行われた。それと並んで、ソフトウェア・サービスの開発もパソコンの普及を促した。まず、コンピュータ内部のオペレーションを制御する基本ソフトであるOSでは、マイクロソフトのウィンドウズがたび重なるバージョンアップを通じて支配した。また、データ処理・検索など標準的用途から特定用途向けまでの多彩なアプリケーションソフトが各社から開発された。

■ 第三のベースはインターネットの誕生であった。この開発の起源は1960年代半ばに国防総省の高等研究計画局が当時希少であったコンピュータの計算処理能力を有効に利用し、かつ核攻撃によってホストコンピュータが破壊されても、軍事情報を支障なく全国に伝達できる通信システムを開発することを目的に、コンピュータの相互接続、ネットワーク化の実験に資金援助を始めたことにあったという。インターネットの普及とともに通信需要の増加が予想され、それに対応する通信インフラの整備が要請された。

■ このアメリカで生まれたIT産業はインターネットの普及により世界中に広まっていった。インターネットが世界に及ぼす影響は計り知れないものがあり、その貢献は非常に大きいと言える。アメリカでも2000年においてIT産業の経済全体に占める割合は12%にもなっているという。

■ 20世紀初頭にアメリカで作られたT型フォードの力は、現在に至るまで約100年間アメリカの経済の主軸として自動車産業を世界に誇ってきた。もしも、インターネットやパソコンの普及が、自動車が世界に及ぼしたのと同じ影響力を持つならば、たった50年後にはIT産業が世界の中心的産業で、その中枢に存在するのがアメリカ経済という構図は容易に想像つく話かもしれない。

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§3 まとめ

■ 20世紀終盤に登場したインターネットの存在は人類の進歩の中でも大きな分岐点であることは間違いない。その立役者がアメリカで、現在ゆるぎない地位を世界に示しているということは誰もが疑わない事実である。文頭で論じた通り、現在のアメリカは政治的にも、経済的にも、文化的にもグローバルスタンダードと思われている。世界中にある「M」の文字をしたファーストフード、毎日のようにメディアに取り上げられる大統領の顔、世界中の都市で見られるアメリカ企業の名前・・・etc。

■ しかし、ここではっきりさせておかなければならないことは、本当のグローバルスタンダードはアメリカだけではないということである。もちろん、アメリカが世界に及ぼす影響は目に見える範囲で明らかに大きいが、悪い意味で世界的に問題となっていることが多い。世界の渦中の話題である平和への考え方、HIVの感染、宗教に関する価値観、いい意味での自由の裏にある影、そしてアメリカ中心主義的な考え方など、資本主義を突き詰めてきたアメリカには解決していくべき問題は多いと言える。

■ 2050年の世界のGDPを考えてみるとアメリカが中国に抜かれ、世界での地位を奪われることになっているかもしれない。その時アメリカはどうするのか。今アメリカには先に述べた高齢化やIT産業の更なる発展などに加え、自国の状況を客観的に判断し、世界のリーディングカントリーとして改善していくことが要求されているのではないだろうか。

参考サイト :国際連合HP(http://esa.un.org/unpp/)
  :統計関連インターネットサイトリンク
(http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/tokeidb-links.html)
参考文献 :「アメリカ経済」 著 春田素夫・鈴木直次 2005年 岩波書店
  :「今われわれが踏み込みつつある世界は・・・2000-2050」 著 猪口孝 藤原書店
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