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第3章 巨大市場獲得競争(2) |
by飯田 耕平 | ||||||||||||
§3-2 後発組(トヨタ、日産、フォード)■ 続いて進出時期の少し遅いグループにスポットを当てていく。中国市場がその特殊性を失い、欧米の商慣習が普及し始めるのは2001年頃からである。その時期を境に単なる一部の富裕層のみをターゲットにした販売というものは通用しなくなった。このような変革の過渡期に進出したメーカーはどういった戦略を持っていたのであろうか。以下では後発組を代表して3社をピックアップしていく。
◆トヨタ自動車 ■ トヨタ自動車が中国に本格進出した当時は、競争激化による既存国産車の価格低下が進行し始めていた時期であった。そのためトヨタは先発組とは少し異なった高級車戦略を採ることになる。微妙に変化する市場のニーズをキャッチするべく、当時の中国ではまだ一般的でなかった入念な市場調査を行った。その結果、最新鋭のモデルで先発組よりは価格設定の低い車種を開発投入することを決定。一方、内装やオプションなどはグレードの高いものを選ぶなど、高品質ではあるが一般市民にも手の届く価格を設定し、購買層の拡大を狙ったのである。 ■ また製品の質が良くても販売ネットワークが整備されていなければ事業は成功しない。そのためトヨタは独自の専売店を多数設けるなど販売力の強化にも重点を置いている。部品など関連各社も中国進出させコスト削減にも積極的だ。生産と販売が一体となった戦略で、出遅れた市場でのブランド構築を目指す。
◆日産自動車 ■ 日産自動車は他社とは異なった提携戦略で中国市場に乗り込んだ。同社は2002年に東風汽車と包括提携で最終合意したが、この提携は単なる提携とは異なり、中国政府の積極的な支援の下での大型提携であった。その最大の特徴として、
◆フォード ■ フォードも各社とはすこし異なる形態の「グループでの共同進出」という形を採っている。同社は当初こそ単独での進出を行っていたが、ここにきて方針を転換、傘下のマツダと共同で合弁会社を設立した。また「生産拠点としての中国」という見方を鮮明にしていて、同社の主要な部品供給源とすることを目標としている。2010年までには中国からの部品調達額を100億ドルにまで伸ばし、全体の15%を占めるように目指す。販売ではポジショニング戦略を徹底していて、小型車、小型セダン、ミニバンに力を入れ、新たな市場を開拓していく。まさに自社の競争優位性を第一に考える傾向の強いフォードらしい戦略といえるだろう。
§4 市場攻略のために■ さて、ここからは中国進出メーカーが直面している問題を整理していこう。具体的には販売価格の下落によるコストの削減、購買層を拡げるための自動車ローンの普及、販売・サービス網の整備、マーケティングの徹底などであり、各社その対応に追われているのが現状だ。以下では課題ごとに見ていこう。 ☆マーケティングとコスト削減 ■ まずはコスト問題だ。中国政府は関税を段階的に引き下げる事を明らかにしており、そのため現在は値下げ圧力が高まっている。さらに参入の増加がさらなる販売価格下落を招き、今後も一層の低価格化が進むだろうと考えられる。販売価格は毎年5〜10%のペースでダウンしている。このままの割合で推移すると、欧米と比しても利益率の低い市場となってしまいかねない。これまで異常ともいえる程の高い利益率を享受できていただけに、各社とも市場展望を慎重に見直すのと同時に、大規模なコスト削減に取り組む必要がある。 ■ 例えば、生産コストを下げるために部品メーカーを現地に呼ぶ動きが拡がっている。これには中国政府による段階的な規制緩和も影響していて、日本でもブリジストンやデンソーなど本格進出する企業が増えている。こういった動きがさらに活発化すれば、競争力のない中国国内メーカーから部品を調達する必要もなくなり、大幅なコスト削減が実現するだろう。 ■マーケティングも重要だ。これまでは作れば売れるという状況であったため、各社とも市場調査というものにほとんど力を入れてこなかった。しかしWTO加盟を契機に、価格競争と顧客至上主義に基づいた欧米の商慣習へと市場は確実にシフトし始めている。そのためこれからは中国独自の環境に合わせた、中国人好みのモデルを開発していく必要がある。年齢、家族構成、ライフスタイル、地域、経済、インフラ状況など、様々なニーズに合わせた製品・サービスを提供していくことが重要となってくるだろう。 ☆環境対応車とブランド構築 ■ 最近、ニュースなどでも大きく取り上げられ注目されているのが環境対応車の生産だ。各社とも競争力を高めるために生産開発を進めている。これには中国政府も積極的な支援をしていて、税制面で優遇されるなど特典もある。特に環境汚染問題が深刻な中国では、モータリゼーションの加速は一方で排気ガスによる大気汚染、さらには消費エネルギー問題など多くの問題を生んでいる。そのため政府としても、技術力のある外資メーカーが自国で環境対応車を開発することを奨励しているのである。 ■ メーカー側も中国で環境対応車を開発できれば大きなブランドイメージの向上につながる。圧倒的な技術力をアピールできるし、環境問題に取り組む姿勢はCSR(企業の社会的責任)経営としても評価される。この分野ではハイブリッド車や燃料電池車など、現在日系メーカーのプレゼンスが際立っているが、先進的なイメージは中国市場攻略にも大きな役割を果たすであろう。 ■ このように中国においても商品力、コスト競争力、マーケティング力、ブランド力が自動車メーカーの勝敗を分ける時代になったといえる。他にも製品管理や在庫管理、信頼できるサプライチェーンづくりやアフターサービスの充実などが重要となってくるが、裏を返せば特段の秘策はないということだ。そう考えると中国自動車市場がその特殊性を失い始めたという事実は、巨大な資本主義の波がいよいよグローバルスタンダードとなってきたということの象徴のように思えてならない。
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