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● これからの社会展開

第2章 これからの環境対策への姿勢

by 葛原 怜

§0 はじめに

■ 環境問題と一言に言ってもその範囲は膨大である。グローバルな問題として、温暖化、オゾン層、砂漠化等があるし、ローカルな問題としても産業廃棄物や公害など環境問題は数え切れない。そんな膨大な問題を現在はどのように解決していこうとしているのであろうか。目に見える中でも、温暖化世界会議やその他のサミットは近年その回数は増えているし、国内でも徐々に様々な分野で規制が始まっている。

■ しかし、地球の環境問題が解決され始めているのではないかという印象を持つ時があるであろうか。確かにメディアを通じてや地域の活動などを見る限り、様々な所で環境についての取り組みや会議などが行われているようには感じる。しかし、その成果が表れている所やこれから成果が表れるであろうと感じさせるような所は、非常に少ないのではないであろうか。それはもちろん、環境問題というのは短期的なものではなく、何十年や何百年とかかるため、簡単に成果が表れにくいということもあるであろう。

■ しかし、それ以外にも環境問題に対する各々の対策自体が問題であったり、我々の認識や社会構造自体に大きな問題があったりと、その原因は複雑に絡み合っているのではないかとも考えられはしないであろうか。つまり、環境問題を解決するためにはその対策自体が、現状のままではいけないのではないであろうか。本章では「環境学習資料」を読み、ある程度の環境問題の現状を理解した上で、どのような社会構造や考え方持たなければならないかを考えてみたいと思う。

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§1 エコマネジメント戦略

■ ところで、現在地球上ではバクテリアから動植物、人間まで、あらゆる生命体が太陽光と大気と水を利用して生きている。その空間のことをバイオスフィア(生命圏)という。その空間は直径一万三千キロメートルの巨大な広がりであるが、その厚さは地球直径のわずか0.16%に過ぎない。この空間で生命体と環境とが共働している持続循環システムがエコシステム(生態系)である。

■ 人類の歴史と地球環境との関係を論じるならば、地球上の多くの森を切り開き、農耕地・都市空間などの様々な開発を行ってきたのにも関わらず、大気中の酸素や二酸化炭素の濃度、気温がほぼ一定に保たれ、そして安定した水供給ができたのは、バイオスフィアにおける生命系のシステムすなわちエコシステムが有効に働いていたからである。

■ 視点を変えれば、自然改変・開発が拡大されてきたのにも関わらず、全体として破綻することなく地球環境が維持されてきたのは、自然エコシステムに加えて半自然エコシステム(里山、農耕地など)によって補完的にマネジメントされてきたからとも言える。さて、ここで21世紀環境と人間活動を支えるエコマネジメント戦略、すなわちエコシステムと整合性のある人間活動の指針について考えてみる。

■ 第1は、エコシステムという環境システムに対して、人間が自己の効用に従って自分本位に行動すれば、必ず負荷として跳ね返ってくるという自己回帰性に対する認識を上げることである。「自己回帰」とは、バイオスフィアが有限な閉鎖空間であり、廃棄物や有害物質を発生させると環境システムの負荷として人間と地域に降りかかってくるということである。

■ 第2はエコシステムの多様性・多価値性の追求である。化学肥料・殺虫剤・除草剤など石油化学製品に依存して生産性を高めた現代農業は、特に穀物生産はハイブリット種子の導入によって飛躍的な生産性向上に成功した。同時に、穀物の品種の選別・単一化が進み、歴史的に農民が育んできた栽培に関する多くのノウハウと環境改変や病害虫問題を解決できる遺伝子資源を永遠に失っている。生産性の高いハイブリット種子へと穀物を間引くことは、エコシステム生物多様性の劣化という点からも多くの反省がなされている。

■ 第3は地球を「生きている環境」と位置付けることである。自然であれ、半自然であれエコシステムは「生きている環境」として、生産―消費―分解還元という自立的循環システムの中核的技術を持った環境工場なのである。現代社会においては、人間活動は消費を中心として進化してきたが、環境工場では、農林水産業における循環性と同じように、3R(Reduce、Reuse、Recycle)、廃棄物処理など分解還元にかかわる部分が必須なことも理解されてきている。

■ では、エコマネジメント戦略はなぜ必要なのであろうか。それは、環境との関連では、地球も地域も企業も人間もすべて、地球系―地域政策―企業戦略―人間行動と、同心円状に広がる環境システムの一部に過ぎず、個別的対応では破綻するという重層性を有しているからである。地域・企業は、外なる環境と内なる環境にまたがって活動しており、地球という外なる環境が劣化・破綻すれば地域・企業そのものの存続が保証されていないからでもある。

■ 環境を常に配慮し、真剣に環境への対応を行う戦略は、環境汚染や負荷を可能な限り減少させることでもあり、地域や企業のステイタスが向上するだけでなく、結果的に計画的で適切な投資と技術開発を推進できるというマネジメント利点も生まれてくるのである。現在の環境問題は高度経済成長期の公害問題とは異なり、その解決に対して明確な答えがないことが特徴である。このような明確な答えのない問題の解決はどのような問題を設定するかにかかっている。適切な問題設定が適切な答えを引き出すことにつながる。この問題設定と答えの積み重ねが持続可能な社会を作り出すのである。

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§2 情報共有活動

■ 環境問題の解決を考える際に良く出てくる話として、「一人一人の自覚」というものが多いように感じられる。確かに、世界中の人が各々環境問題に対し深い認識を持ち、日々の生活で少しばかり気をつけるだけでどれだけの効果があるかなどということは、もはや言うまでもなく、それこそ世界中の人がわかっている。しかし、それが出来ないでいるのは、他の原因があるからに違いないであろう。その一つとして、環境に関する正しいデータや情報が市民の耳にどれほど入っているのかということも大きな問題であろう。

■ 環境問題は国家間が世界会議で話し合い、各国が何か法律を定める事で企業が何らかの規制をされる。つまり、一部の人間だけが必死で考えている問題のように見えてしまうのである。これを解決しない事には、市民が環境問題に対し責任を持つことなど、到底無理な話である。現在は世界中に環境問題に取り組むNPO・NGOがあるが、そのレベルはまだ満足のいくものではない。そこで、どんなシステムを地域単位でこれから作っていかなければならないかという事が重要になってくる。

※参考NPO・NGO:
(http://eri.netty.ne.jp/honmanote/kyozai/economy/004npo_ngo/index.htm)

■ 一言で言えば、地域に住む者の意識を変え、主体的な参加「自律的な地域づくり」への取り組みが社会全体の共通理解となっていく事が重要なのである。しかし、このためには地域住民が参加し、地域住民多数の意思が決定に適切に反映される仕組みを伴わなければ、共通理解などは得ることは出来ないのである。このような意味での共通理解を得ることは、住民の一人一人が判断するのに必要な情報の共有が不可欠である。

■ そこで、開示請求があって初めて情報が公開される、いわば消極的な「公文書公開」システム以上に、行政による積極的な「情報提供」こそが、情報公開システムで重要な位置を占めるべきという事になるであろう。なお、環境面に着目して言えば、環境情報は歴史・文化まで含めた地域の特性や価値観と深く関わりがあるものであり、「情報共有」のためには、立法・行政側からの一方的発信にとどまらず、地域住民からの情報発信の持つ意味が大きいとも言える。

■ ところで、これまで地域の住民は、地方公共団体の意思決定へその首長を選出する事、議会の議員を選出する事を通じて、間接的に参与するシステムがとられてきた。もっともこれとは別に、住民には、議会への請願の形で直接意思を表明する権利と有権者の五十分の一以上の賛同を得ての条例制定・改廃を請求する直接請求権等が与えられている。その他にも住民にはさらに議会の解散や、首長あるいは議員の解職を請求する権利があるため、住民投票の結果によっては退職する首長や議員に代わって、新たな首長や議員が選挙される事もある。

■ しかし、住民の間でも意見が分かれる個別の問題ごとに住民の意向を直接反映させるためには、これらのシステムは必ずしも十分でない事は明らかである。このために最近では様々な工夫が生み出されている。その一つが住民投票システムの採用である。住民投票はエネルギー供給施設や迷惑施設の立地の是非判断などにおいて、その地域内で行われつつあるものである。しかし、この方法をさらにより多くの意思決定に拡大させようとする動きは今後さらに広がっていくものであると思われる。

■ そこで、この手法を環境マネジメントに応用する事も十分に効果的ではないかと考えられる。住民投票をする事で、市民がより環境問題について興味・関心を持ち、情報を自ら積極的に得ようとする姿勢が見られるようになることは、確かに予想がつくであろう。しかし、実際に住民投票を環境問題に使おうとする時には、投票は賛成や反対といった単純な選択肢だけでは価値をあまり持たないであろうし、どの範囲住民を対象とした投票を行うかということにも留意しなければならないのも事実である。

■ また、地域での合意形成に資するために、きめ細かく住民意見を反映させる方法として、最近では住民投票以外にも、審議会など意思決定に参画する第三者機関への公募委員の登用や、各種計画策定への住民参加による説明会、公聴会、討論集会、ワークショップや協議会の開催とその意見の尊重などの工夫が行われてきている。いずれにしても、環境問題を地域単位で取り組むに当たっては、これからの地域での情報共有システムには注目しなければならないであろう。

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§3 循環型共生社会

■ 以前より市民の間で身近な環境用語としてリサイクルがある。このリサイクルは学校や各地域団体が空缶や新聞紙など生活用品をまた使えるようにするということで、手軽に環境保全に協力できる一つの手段でもある。先述した3Rというのは、リサイクルを含め、モノを再利用することで新たな資源の消費を減らすことで「循環」した社会構造をつくろうというものである。

■ 循環基本法が2000年6月に制定されて、今日循環型社会のイメージも広く社会に普及してきたと言える。このように法的基盤が整備され、さらに基本計画もでき、社会ではモチベーションもかなり高まってきている。重要な事は国民の環境への意識を高めるということだけではなく、多用な技術オプションを豊富につくり、それをどう選んで循環型社会にたどり着くか、そういう循環型社会をどのように定着させるかということである。基本法が整備されればすぐに循環型社会が形成される事はないのである。戦後から今日まで50年以上続いてきた大量生産・大量廃棄の社会システムを直すには、また50年くらいかけて循環型社会を成り立たせる事が必要であろう。

■ しかし、「循環型」社会ということで、リサイクルの手段としての物質循環が強調され、その背後にある環境保全、資源保全を配慮しながら、3Rと適正処理を図るというトータルな視点から、循環型社会を実現する事に目がいっていないのではないだろうか。つまりトータルな視点とは、健康で文化的な生活を営め、人類の福祉に貢献できる社会の実現のために、人間が自然の生態系、開発途上国の人々、我々の子孫と「共生」できるように資源保全・環境保全に配慮しながら物質・エネルギーを循環させる事である。

■ 現在、世界中で環境保全を強調しているがこれは、今から30年前までは、生産のスピードを遅くするものだとか、むしろそれに対立するものだという見方があった環境保全が、今や環境共生型社会のグランドデザインづくりが最も重要な国家戦略になっているということの表れである。21世紀初頭における環境政策展開の方向は、循環・共生・参加・国際的取り組みという長期的目標と同時に環境政策の指針となる四つの考え方がある。すなわち、(1)汚染者負担の原則、(2)環境効率性、(3)予防的な方策、(4)環境リスクといった具体的な環境政策の手段を展開する事が求められている。

■ また、環境戦略的プログラムということで、それぞれの課題について今までのように目標をただ立てるだけというのではなく、解決するための明確なプログラムを持たなければいけない時代になった。さらにそのプログラムを展開するための政策手段・環境教育・環境学習・環境システム・環境投資、そしてそれらにおける色々な取り組みの方法をより「明確」にしなければ環境は変わらないというのが今日の潮流である。その一つの例として、環境基本法がある。

■ 環境基本法の一番重要な考え方は、「持続可能な開発」や「持続可能な社会」というような抽象的な表現ではなく、何をどのように目指しているのか、どういう方法でどういう社会をつくるのかという具体的な目標を設定していることである。「持続可能な社会」のイメージは「環境が人類の生存基盤である事を前提に環境はもとより経済、社会の側面からも高い質の生活を保障する社会」つまり、これは日本を中心に考えているが、環境はもとより、快適な生活をどのように実現するかということである。

■ 1992年にリオデジャネイロで開催された世界会議で掲げられた「持続可能な開発」という言葉の解釈は様々であるが、現在21世紀に入りその言葉の意味は循環型社会への移行を示唆しているように思えてならない。現在、20世紀の発展を支え続けてきた産業構造も大きく変化しつつある。いやむしろ、変化しなければならないのかもしれない。そう考えると今日ますます、今ある消費・生産システムや都市構造など、環境問題を中心に見据え、変えていかなければならないのかもしれない。

■ 現在では皮肉にも環境産業という「第四の産業革命」という新しい時代が到来していると言える。つまり、環境問題と経済成長は相反するものであるという1970年代頃の考え方は、完全に覆り始めているのだ。もっと言えば、環境問題を中心に経済を考えていかなければならない時代になっている。経済と環境の調和、すなわち持続可能な経済成長、循環型社会・環境共生型社会の構築が21世紀の重要なテーマになっているのではないであろうか。

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