那須高原海城中学校 SAP 〜Nasu-Kaijo Study Awakening Project〜
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 【発 表】

■ いよいよ最終日です。生徒たちは朝食を食べた後、ぞくぞくとホールに集まり、早速プレゼンテーションの準備を始めます。本日の正午12時の開始まで残り3時間半を切り、真剣な面持ちで話し合っています。
いつものようにLAからスケジュール確認が始まります。SVからは「プレゼンテーションの持ち時間は、発表時間は1チーム7分、質疑応答3分。内容だけでなく手法、時間配分、役割をしっかり詰めていきましょう。」と説明があり、リハーサルが始まりました。
順番はくじ引きで決められました。トップバッターがチーム2、二番目がチーム1、三番目がチーム3、トリを務めるのがチーム4です。各チームのプレゼンの後、質疑応答の時間が3分設けられ、全員の発表後に投票があり優勝チームが決まります。

■ 各チーム、プレゼン会場を使ってパワーポイントやマイク、照明、レーザーポインター、音響等を駆使しリハーサルをしています。しかし、中には発表内容を話し合っている際に、様子を見ていたSVから「当初のテーマとぶれてきているが本当にそのままで良いのか、“こんなもんでいいや”じゃなくて、残りの一時間を有効に使ってもっともっと練る必要があるのではないか」と指摘があり、どう改善していくべきかを真剣に考え直しているチームもありました。また、発表のスタイル、演出について「ここでライトを当てなくて良い?」「話す人がこっちにいた方がわかりやすいよ」と、湧き出るアイデアを試みているチームもありました。

■ さあ、いよいよ発表の時間です。会場は、パワーポイントが見やすいようにライトダウンされ、準備万端整っています。保護者の方々が数名お見えになっており、生徒たちに対する期待値もぐっと高まります。

■ 発表テーマは、チームごとにこの2泊3日の中で、自分たちなりの視点と感性と思考によって、見つけ出しまとめ上げたものです。
タイトルが会場に書き出されました。
チーム2「俺達の考えるホンダの真実」
チーム1「変わるもの、変わらないもの」
チーム3「進歩〜違い・共存〜」
チーム4「ウナギ発電法」
タイトルを読んだだけでも、彼らの独創性や感性の豊かさを感じさせてくれます。さあ、プレゼンが始まりました。

■ チーム2「俺達の考えるホンダの真実」の発表は、生徒のクラシックギターの前奏で始まりました。このあとの展開を予感させる心憎い演出で幕を開けます。
Hondaスピリットのひとつである「人が移動し、人と出会い、たがいに学びあうとき、新しい文化・価値が生まれる。『モビリティ』の持つ利便性、楽しさ、価値を追求し、より多くの人の生活や活動の中に根付かせ、社会の中により豊かで安全なモビリティ文化を創造する」という使命によって生まれたMHO2に代表される飛行機の開発や、ASIMOに代表されるロボット技術の開発について、まずリサーチしたこれらの優れた技術・意義を紹介し、更に共通点を「ホンダの夢」「人のためになる」「進歩」と並び「(一歩間違うと)危険」というキーワードを挙げました。そして、そこから導き出た疑問が「人のための商品を作っているのか」「戦争に利用されないのか」「資金を使うことに意味があるのか」という危険性を訴えてのしめくくりで終了しました。

■ 続く生徒たちからの質疑応答では、「疑問の後の結論がないから主張になっていないと思います」等、早速鋭い指摘がありました。チーム2の生徒たちも「いや、絶対危険とは言い切れなかった」と反論し、「危険と考える理由がはっきりしていないのではないか」と更に追及が続きます。そこで、SVから「鋭い視点で仮説を提示したことは素晴らしいが、更にその仮説に対して自分たちはどう考えたのかを結論付けられたらもっと深みのある発表になったと思いますが、どうですか?」とのコメントに、チーム2の生徒たちも集まって相談します。その後「危険かどうかはまだはっきり分からないが、可能性を追求したいと思いました」とチーム全体で確認し合った主張を述べて、時間終了となりました。

■ 質疑応答で闊達にやりとりされるということは、提示した内容が他のチームの生徒たちにとっても興味の惹かれるものであったということであり、質問に対して自分たちなりに反論ができている証であり、自分達の発表で何に留意すべきなのか、何が重要なのかをきちんと考えてきた故に、他のチームに鋭い指摘も生まれるのでしょう。

■ チーム1「変わるもの、変わらないもの」の発表は、舞台で討論し合うという一風変わったスタイルで開始しました。今回のプログラムの中でHondaの様々な製品作りや時代背景・ものづくりの精神をリサーチしてきた結果、「変わる方が良い」と「変わらない方が良い」という二つの主張の立場で討論しながら「変わるのもと、変わらないもの」の論旨を展開していきます。

■ 例えば、「変わる方が良い」と主張する立場の生徒は、車や電子機器、ロボットが時代の大衆のニーズや技術革新によって刻々と変化してきた事実があり、変わることによって社会生活が豊かになり進歩していることを指摘しました。
一方、「変わらない方が良い」とする立場の生徒は、スーパーカブなどの郵便配達などに使用されているオートバイや鉛筆や靴などは大きく変わることはない、逆に変わると使い手に不便となり、生活に支障が出て困るので変わらない方が良いという意見を主張します。
討論形式なので、「変わらないものとはたとえばどんなものですか?」など相の手が入り、「はい。例えば・・・」というやりとりで、聞く側もすんなりと耳に入ってきます。
そして最後に「消費者のニーズが新しい技術を生み、新しい技術が夢を刺激し叶え、更なるニーズを作り出すという循環がおこっている」ということを図解しまとめ、「変わらない、変えない、ということもひとつの行動であると思う」と締めくくりました。

■ 続く質疑応答では、「バイクは変わらないと主張しましたが、具体的にどこが変わらないのですか?」という質問が出てきました。チーム1の回答は「例えば全自動運転ではなく自分が運転するスタイルが変わらないというような点です」と返します。
それ以上質問が行き詰まったところで、一人の生徒が「これは意見というより感想ですが・・、とても素晴らしい発表だったと思います」と述べました。SVから「具体的にどこが良かったと思うのかな?」と聞かれ「結論からリサーチ、主張の筋が通っていたと思います」と言葉が出てきました。別の生徒からも「討論形式というのがとても分かりやすかったと思います」と感想が述べられました。SVからは「確かに討論形式であったことが、伝わりやすく良かったと思います。具体的にどこが変わり変わらないのかをもっと具体的に上げられるとわかりやすく更にレベルアップしますね。」とコメントがありました。また、「質問するということはとても重要で、質問し答えてもらうことで発表内容に深い理解が増すので自分の理解のためだけでなく、発表者チームのためにもなりますよ」というSVの言葉が印象的でした。

■ チーム3「進歩〜違い・共存〜」の発表は、まず「進歩」というキーワードから幾つかの事例をあげ「森のトイレはバクテリアという分解者がいることによって浄化され、きれいになっている」「虫はその時その場所によってそれに適した姿に進化してきた」「地球に有毒ガスが溜まるとそれを栄養分にする虫の種類が多くなって、酸素が少なくなると体が小さくなるかもしれない」「ロボットも二足歩行からE1、P1、ASIMOへと進化し続けている」といった共通点から、自然・人類・ロボットの進化のスピードが違う点を指摘し、「更に人型ロボットから人工知能が開発されている段階にある」ことを紹介し、更に「ロボットが人間になった」と未来を予想し、人間はロボットの制御不能になることを示唆しました。

■ 続いての質疑応答は矢継ぎ早に手が挙がりました。「森のトイレのバクテリアは排泄物をどうやってきれいにしているのですか?」という質問に「バクテリアが排泄物を食べる際にきれいになるんです」と答えます。「虫の進化ということですがカブトムシなどは昔はどんな姿だったのですか?」いう質問には「僕たちは虫の進化を説明したかったわけではなく、進歩、違い、共存の関連性をテーマとして主張したかったので、それについては調べていません」と胸を張って反論します。しかし負けじと「虫の進化は分かりましたがバクテリアの進化ということも主張したのですか?バクテリアの進化ってどんなものですか?」と相次いで追及が入ります。また、「人間とロボットの関係についての主張はわかりましたが、虫とロボットの関係は未来にどうなるのかは予想しなかったのですか?」という鋭い追及も出てきました。更に「人工知能とロボットの世界につながりがよくわかりませんでした」「本当にロボットが人間に危害を加えたりするのですか?」という質問に「人工知能は今現在はロボットに取り付けられているわけではありませんが、そもそもロボットが作られたきっかけは人間にとっての友達が欲しかったわけだから、ただ人間の操作通りに動くロボットよりも人工知能がつけられたロボットだって需要が出てくるはずだからです」と答えます。そこに「人間が最初にプログラミングするわけだから人間の制御を超えることはないと思います」と更なる反論が続き、「いえ、人工知能というのは人間の制御を超えて勝手に思考するということなので、人間に危害を加えることはあり得ます」とチーム側から主張がありました。前のチームの発表の時にSVから質問をすることの重要性を指摘されたからでしょうか、議論が白熱し、お互い一歩も引きません。

■ SVから「この議論はとても面白いものになっていて、素晴らしいですね。不明な点は、ロボットが人間になったという主張なのですが、ロボットと人間の立場がはっきり示されていなかったように思います。両者の共存とはどういうことですか?共存とは難しいけれども非常に深いテーマ性をもっており、議論しがいのあるテーマです。これを掘り下げることができるともっともっと良い発表になると思いますよ。」とコメントがあり、チームからは「発表では話しませんでしたが、ロボットが人間の介護に活躍するとか、蚊なども人間の注射器などの医療器具にヒントを与えたりしているという事例のことを示していました」と答えがありました。

■ チーム4「ウナギ発電法」の発表は、パワーポイントの横で、話す内容を担当制にし話す生徒がバトンタッチしていくスタイルです。まず、今回のプログラムでいろいろリサーチするうちに「エネルギー」の問題につながっていくことに気が付いたことと、もともと中学生になった頃からエネルギーの問題に興味が湧いていたので、今回はエネルギーについての調査・発表をしようと決めた経緯が話されました。

■ 現状使われている「火力・原子力・水力・風力・潮力・音波発電」等のエネルギー発電法、またそれぞれが抱える課題点の「石油を消費してしまう、CO2の排出量が増えてしまう」、「放射性廃棄物の処理が完備できていない」「季節によって発電量に開きが出て安定しない」等を明示し、その利用割合を円グラフ等で数値化し分かりやすく説明します。現状を踏まえてもっと良い新しい発電法はないかと電気クラゲや雷や台風などいくつか考え、長所短所を挙げた上で、チームで最終的に「電気ウナギ」で発電をまかなうという方法を考察します。

■ 「現在一日一世帯あたりの消費電力の平均は9.8kwで、電気ウナギの発電量は一匹0.6〜0.8kwなので一世帯に13〜14匹必要ということになるが、電気ウナギの特性として1/1000秒しか発電が持たないため、実際には2億〜3億程度の数が必要な上に、飼育面積がかなり広くないと飼えないといった難点がある」ということまで考察しました。更に結論として「結局この時間の中ではなかなか実現可能な発電法に辿り着けなかったので、資源を大事に使おうということになりました。地球の資源についてずっと考えてきましたが、チームで話し合うとユニークなアイデアが沢山浮かんできました。“はさみとのり”というキーワードからヒントを得て、利用できることや良い点を切って張り合わせるように組み合わせる考え方が大事だとわかりました。今後は、もっと具体的に装置を作ったり方法を考えられたら良いと思います。」とまとめがありました。

■ 質疑応答では、「節電法は考えなかったのですか?」という質問があり、「自分達は新しい発電法を考えだしたかったので、節電という考えはありませんでした」とチームから回答がありました。「他に考えた発電方法はなかったのですか?」という質問に対し「太陽光や磁力もありましたが、今回は電気に変える方法が分からなかったので無理でした」と率直に答えます。また、「発電の利用割合の円グラフに書かれていることと、最初にあげられた実施されている発電法に違いがあるみたいですが」というかなり突っ込んだ質問があがり「この引用してきたデータは・・・」とチーム側からの弁明がありました。「そもそも電気ウナギってどんな生きものか全然知らなかったので、その生態をはじめに教えて欲しかったです」という指摘には、「身の危険を感じると電気を発するので発電するにはストレスを与えないといけなくて、ぎゅうぎゅう詰めにしてストレスを与えようと思ったのですが、ストレス状態に慣れてしまうと発電しなくなるかもしれません。」と考察が更に深く進んでいたことも伺わせました。

■ 「潮力発電・音波発電は具体的にどうやって発電させるのですか?」という質問には、「音波はよく分かりませんが、潮力は潮の満ち引きによって電力を発生させます」という答えがあり、それに対して「なら潮の満ち引きが盛んなところなら沢山電力が取れるんじゃないですか?」と議論が盛り上がり「風力発電の弱点が挙げられませんでしたが何ですか?」と鋭い質問に「やはりこれも安定しないことです」との答え。「ウナギ発電の実用化が難しいことはわかったのですが、実用化のために何がクリアできれば良いのか、他の方法まで考えなかったのですか?」という質問で、議論は最高潮に達しています。
SVからは「よくこれだけ調べられたと思います。こんなに沢山の質問が出たということは、多くの人達が興味を持った発表ができたからです。また、エネルギー問題というテーマは、人類の課題であり、エネルギーの発電法だけでなく、貯蓄法という視点でも開発や考察の余地が沢山あるテーマなので、是非今後も議論を続けて貰いたいです。」

 
 【評 価】

■ 2泊3日もいよいよ閉会式を迎えました。一人ひとりが自分のノートにSAP全体での自己評価を書き、投票するチーム名と理由を書いてから、一人2票を投票しました。結果発表です。優勝チームは、チーム1の「変わるもの、変わらないもの」でした。僅差だったようです。チーム1からは喜びの声があがりましたが、他のチームも負けないくらい立派に主張を展開していました。しかし、結果は結果として冷静に受け止めているように見受けられました。

■ 北川先生より「3日間、本当にお疲れ様でした。私達教員から皆さんに贈り物があります。」とすべてのチームに賞状が授与されました。先生方がそれぞれのチームの発表を踏まえて考えられたのでしょう。それぞれに受賞タイトルが違います。

チーム1は「劇的な融合を見せたで賞」
チーム2は「表+裏は調和で賞」
チーム3は「大きな夢で賞」
チーム4は「消費電力ナンバーワンで賞」
北川先生より閉会のご挨拶として「今回は4つのチームに分かれましたが、29人がひとつのチームになって話し合ったら、もっと様々な考えが生まれたかもしれません。現代は個人で考えるというよりはチームで物事を考える時代です。今後、高校、大学、社会に出てからこの経験を活かしていって欲しいと思います。」というお話がありました。

■ 各チームの生徒たちを見守り、励まし、行動を共にしてきた4人のLAからも最後にコメントがありました。

チーム1のLAからは「チーム1は楽しむことが得意なチームだったと思います。その得意を活かして掘り下げていくことをもっともっと楽しめると、更に良くなっていくと思います。」
チーム2のLAからは「皆本当に個性豊かで、バラバラでしたね。でもその良さが出ていて、絶対に多数決で決めず、最後まで徹底的に議論をぶつけて煮詰めるところが素晴らしいと思います。みんなのこれからの課題は、個性的な意見をうまく融合させていくことだと思いました。」
チーム3のLAからは「チーム3のテーマは進歩〜違い・共存〜でしたね。君達はこのテーマに取り組んで議論を進めるうち、チームとして自分たち自身が共存できているのかという根本的で重要なことに気がつきました。チームの進化とは、個性があってそれぞれが学び成長していくことでもあります。ここで学んだことは、決して抽象的なことではなくて、君達の身近な事柄だったと思います。」
チーム4のLAからは「チーム4の捉えたウナギ発電法のテーマは、議論を尽くしても尽くしきれないほど面白く、深いテーマだったと思います。中学生である今の君達では、具体的にこのエネルギーの解決策を導き出す知識はないかもしれないけれど、自分たちで考える力は充分に備わっていると思います。今後も考えることを続けていって欲しいと思います。」

とそれぞれコメントがありました。

■ 最後にチームごとに記念撮影をしましたが、LAも一緒になってどのチームも晴れやかな笑顔で眩しそうに写っています。
那須高原海城中学校の送迎バスが出発する際には、スタッフ全員が皆名残惜しそうに、いつまでも手を振って見送りました。