東京都立白鷗高等学校附属中学校「Honda『発見・体験学習』」
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 【開 会 式】

■11月6日、村上市立村上第一中学校の141名を乗せたバスがツインリンクモテギに到着しました。やや緊張した面持ちで生徒たちが降りてきます。今回、生徒たちは「本当の『豊かさ』とは?」というテーマを1泊2日をかけて取り組みます。
 



■まず、プログラム開始にあたって、開会式が行われました。最初に、本間校長先生からご挨拶がありました。

「今まで学んできたことを活かして、141人全員で本当の『豊かさ』をみつけましょう。」

次に、生徒代表から挨拶がありました。「これから1泊2日、皆精一杯やっていきましょう。」
生徒全員が起立し、スタッフへお辞儀をします。礼儀正しい生徒の様子が、とても清々しく感じられました。

■スーパーバイザー(SV)の挨拶の後、ラーニングアドバイザー(LA)が紹介されました。LAはプログラムの1泊2日、それぞれのチームにつき、生徒のみんなをサポートしてくれるスタッフです。生徒たちは、自分たちのチームをどのLAが担当するのか、興味津々で眺めています。

紹介後、各LAは担当のチームに行き、生徒たちにHonda発見体験学習のノート、そしてデジタルカメラ2台を渡します。これらは学習プログラムの重要なツールになります。続いて、今日一日のプログラムのスケジュールの説明がされました。生徒たちは、それらをノートにメモし、今日一日の青写真を頭の中で描きます。生徒自身による時間管理、これも大切なプログラムの活動になります。

さて、これから生徒たちは、ツインリンクモテギでの新たな学習空間へ向かいます。これから1泊2日、それぞれどのような「豊かさ」を探し出すのでしょうか?

 

 【体 験】

ハローウッズ(HW)  


■HWは人の手が入った山、いわゆる里山です。ここでは、キャストと呼ばれるスタッフの方たちが、山の案内をしてくれます。生徒たちは皆、朝起きるのがとても早かったようですが、その足取りはとても軽く感じられました。


■里山に入り、しばらくすると「森のトイレ」が見えてきました。キャストがこのトイレについて説明してくれました。

「ここのトイレは水洗です。でも、水道の水は使っていないんですよ。では、みなさんは、このトイレを流すための水がどこから来ていると思いますか?」

質問に対して答えが返ってきます。

「天然水」、「雨水」、「川の水」。

 しかし、これらどれも不正解のようです。

キャストの方が答えを教えてくれました。

 「実は、ここの水は皆が排泄した、糞尿から作られているのですよ。」

予想外の答えに、生徒たちはちょっと驚いたようです。


■そこで、生徒たちはトイレの裏に行って、実際にその浄化システムを見ることになりました。浄化システムの蓋を開けると、茶色に濁った水が見えます。しかし、不思議なことに匂いはありません。この装置では、土壌菌群と呼ばれるバクテリアを使って、排泄物を水、ガス、土に分解するそうです。それぞれのバクテリアには得意分野があり、その個々の力を集め、うまく協力することで糞尿を分解するのだそうです。

「みんなの中で、国語が得意な人、数学が得意な人、スポーツが得意な人がいるように、土壌菌群も個性の集まりなのです。」

 生徒たちは、なるほど、とうなずいて聞いていました。
色素を分解するバクテリアがいないため、分解された水は、うすい麦茶のような色をしていますが、それ以外は全く普通の水とかわらないそうです。むしろ、肌につけると水の中のバクテリアが老廃物を食べてくれるので、肌がつるつるになり、美容効果があるとのこと。もちろん、飲むこともできます。そこで、何人かの生徒が、勇気を出して、実際に手に触れたり、飲んでみました。


■次に、「森のトイレ」を離れ、少し歩いたところで再びキャストの方からお話がありました。

「60年〜70年前は、人々は薪や炭を燃料にして、お風呂を沸かし、料理をしていました。実は、この山はその薪を取り、炭を作るために使われていたのですよ。生活のために利用する、人の手が入った山なのです。」

 「木を切る」と聞くと、環境に悪いように思いますが、お話によると、必ずしもそうではないようです。むしろ、木が切られることにより、森に日の光が差し込み、草花など新しい植物が咲き、さらには、その植物に群がる虫が発生し、新しい生態系が育まれるのです。また、木は切り方によって、また再生し、さらに成長を促進させることもできます。木は老いると、二酸化炭素をあまり吸収しないようになりますが、伐採し、木が若返ることによって、より多くの二酸化炭素が吸収されるようになる、というメリットもあります。里山はこのようにして人の手が加わることで、生き生きとしているのです。
 生徒たちは、この話も意外だったようです。そこには、また一つ、新しい発見がありました。

■最後にキャストの方からメッセージが送られました。

 「みなさんは、私たちのように、ここで木を切ったりすることはありませんが、環境問題になっている二酸化炭素をどうやって減らすことができるのか、自分たちにできる方法を考えてみてください。」

 生徒たちはHWを後にし、次の学習空間に移動します。

 

Hondaコレクションホール(HCH)  


■ホンダコレクションホール(HCH)にやって来ました。この学習空間にはホンダの歴代の乗用車、レーシングカー、バイク、汎用機などが展示されています。

最初に、オリエンテーションルームで、Hondaの小林さんより「豊かな社会を目指して〔自動車燃費の進化〕」という講演がありました。車にまつわる様々な要素の中から燃費を良くするための方法論や、進化する自動車の技術、そして車を取り巻く社会などがその主な内容です。
   
一言に燃費といっても、それに関わる要素は実に多様です。空気抵抗を減らすための車の形状や素材。エンジン。使用する燃料。また、車それ自体だけが改良されればよいというのではなく、それを運転する人間、さらには社会のシステム、インフラなどを総合して考えられるという問題であるということでした。



■講演が終わったところで、SVより生徒たちにトリガークエスチョン(TQ)が投げかけられました。

「小林さんの講演内容が表されているモノを、館内から見つけてきてください。そして、具体的に製品のどういうところから感じたのか、考えてください。」


 15分のリサーチ時間が与えられました。生徒たちはHCHの館内をめぐり、今聞いた小林さんの話を思い返しながら、展示されている車、オートバイなどを見て回ります。パネルを眺めている生徒たちもいます。また、実際に、展示されている車やオートバイに乗ってみる生徒たちもいます。各々、何かしらの方法で、短い時間ながらも燃費に関して、情報を集めようとアンテナを伸ばしています。


■リサーチの時間が終わり、全員がもう一度オリエンテーションルームに戻ってきました。まとめた内容について、発表してくれる生徒を募ります。しかし、挙手をする生徒は誰もいません。まだ、恥ずかしいという気持ちがあるのでしょうか。SVがマイクを向けると、やっと発表をしてくれました。

「空気抵抗が少ない最新の車から、燃費軽減の取り組みが感じられました。」
「パネルの情報から、低燃費の車を見つけました。」

 また、中には、バイクの形状の変遷をたどり、空気抵抗が少なくなるように進化をしているのではないかと、過去と現在とを比較して、仮説を立てて考える生徒もいました。まだ皆の前で積極的に発表できないながらも、生徒一人ひとり、いい着眼点をもって課題に取り組んでいるようです。
 乗り物は、ただ乗るだけのものだけではない。今回のように、燃費という視点からみても、様々な切り口を通していろいろな見方ができるように、物事は決して一義的ではない。HCHでの作業を通して、ものの見方に少し広がりがもてたようでした。

 


ファンファンラボ(FFL)  

■次に、生徒たちはファンファンラボ(FFL)に向かいました。FFLはホンダの最先端の技術が紹介された学習空間。環境にやさしい水素電池自動車や、人間型ロボットASIMOなどが展示されています。
 「なぜなに教室」に集まった生徒たちに、早速SVからTQが投げかけられます。

「館内で見てきたものから『豊かさを感じたもの』を説明してください。」

生徒たちは25分間、リサーチに向かいます。館内を巡り、メモを取る生徒、写真を撮る生徒、パネルを読む生徒。皆、情報収集に集中します。
ここに来て、チームの状態にも変化が見られてきました。

「『豊かさ』があるというものを見つけたら教えて」

チーム内のコミュニケーションも生まれてきました。徐々に、お互いにチームとしての意識も高まってきているようです。


■25分のリサーチが終わったところで、今収集してきたデータを持ち寄り、まとめの作業に移ります。議論が進み、話がまとまってゆくチームもありますが、反対になかなか議論が進まず、まとまらないチームもあります。しかし、最後の段階になって、どこも何かしらチームとしての結論を導き出せたようです。
 人間型ロボットASIMOから「豊かさ」を捉えたところが多くありました。

「高い技術力」
「より人間に近づいた」
「人間の生活が便利になる」
「介護ロボ、福祉ロボ、先生ロボ、買い物ロボとして、人の役に立つ」

などの理由が挙がりました。
また、Hondaの開発したジェット飛行機については、

「人間もようやく空を飛べるようになった」
「重たい機体を浮かせる技術ができた」
「飛行機を利用することで人々がよりよい生活を送れるようになった」

などの理由がありました。
 技術それ自体の進歩を「豊かさ」と捉えながらも、さらに広げて、技術の革新によってもたらされる社会という視点からも、「豊かさ」として捉えられているようです。

 

■発表は隣のチームとペアで行いました。発表後、聞いていたチームから、今の発表に対してアドバイスが行われます。「もう少し声を大きく話した方がよい」、「もう少し簡潔に話した方がよい」。いろいろとアドバイスが飛びます。中には、「チームで話した『豊かさ』って一体何ですか?」などという、鋭い意見もあがりました。

■FFLでのプログラムの最後にもう一度「相手に伝えるためにはどのようにしたらよいか」ということをチームで話し合いました。SVから、「どのような話がチーム内で出たのか発表してくれるチームはある?」と聞くと、生徒の手がさっと挙がりました。その後も、また別のチームの手が挙がりました。先ほどの、HCHでの状態と比べ、ここにきて少しずつ変化がみられるようになりました。また、発表が終わると、聞いていたチームからは自然と拍手が起こります。相手のチームのことも考え、認め合う気持ちが芽生えてきたようです。
 
 さて、ここでひとまず全学習空間での体験学習は終了です。ホテルに戻り、小休止。そして、待ちに待った夕食です。次のプログラムに備えて、腹ごしらえします。