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■ 多くの識者は2007年を日本の転換点・岐路と見ることで一致しているようだ。転換点を転機(チャンス)としていくのもまた我々自身であるならば、彼らの2007年展望をのぞいてみよう。
■ まず第1には「2007年問題」、団塊の世代が定年を迎えはじめることが挙げられる。定年を迎える正規雇用者は07年に84万人、08年、09年は各89万人と推計されている。彼らが新しい人生を踏み出すことになるのだが、他の世代の倍近くの人口を有するこの世代には無論この他に専業主婦など非雇用者もいる。退職金を含めた彼らの総資産は175兆円に及ぶという試算もあり(『週刊東洋経済12.30-1.6号』p.73)、人口の約6%にもおよぶ680万人(800万人とも言われる)の今後が注目される。
■ もっとも団塊の世代の方は退職後も働く意欲を持つ方が多いそうである。その結果として非正規雇用者への圧力要因(給料や雇用者数の低下を導く)になるという推測もある。また45兆円といわれる彼らの退職金も半分は貯蓄等金融資産にまわる見込みだという。しかし彼らの多様なライフスタイルを実現し、また彼らの持つ経済的・経験的・知識的貯蓄を活用する方法には常に目を向けているべきだろう。
■ 2007年が日本経済の分岐点であることでも識者の見方は一致しているようである。しかし、何の分岐点となるかに関しては見解に相違があり、「景気」・「経済成長」などのほか、より広く「グローバル経済における位置付け」・「『日本的基準』の確立」などの見方がある。
■ 景気・経済成長に関しては、経済成長・デフレ克服・税の自然増収の「好循環シナリオ」とその反対の「悪循環シナリオ」の可能性があると竹中平蔵氏は述べているが、ここに福祉の問題も関わってくることになる。しかし「好循環シナリオ」に入ったとしても、労働者・消費者に利潤が還元されなければ、我々の生活に大きな変化をもたらすことはないだろうし、「グローバル」が現在のような文脈で語られるならば、中央集中・地方低下の潮流は今年も続くのではなかろうか。
■ そうであるとすると、「グローバル経済における位置付け」・「『日本的基準』の確立」という観点が俄然重要視されてくることになるが、グローバル世界における一地域として、日本という国家の枠をも相対化しながら未来を考えていくことが、転機にある我々にとって重要になってくるだろう。「転換点」とは我々の目指す方を定めることである。
■ また、経済の先行きにおける変動要因としては、米国経済の失速を挙げる人が最も多く、原油高、地政学リスク、円高がそれに続く。輸出(貿易黒字)が下支えする日本経済の長期景気回復であるゆえに、これら懸念要因が現実化したときにはいくらかの影響は免れず、「転機」における判断を左右することになろう。
■ 現代の子ども達が長い時間を費やすものとしてテレビゲームがある。昨年は任天堂の「DS」が大ヒットした。「脳トレ」はゲームに無関心だった世代の注目も集め、昨年の流行語に選ばれた。昨年末には「プレイステーション3」や「Wii」が発売になり、今年はその普及が想定される。新型ゲーム機の普及は子ども達の生活に変化をもたらす契機となるだろう。
■ 一方で「プレステ3」と「Wii」では販売戦略が対称的であるようだ。「プレステ3」は一貫して性能を追求し、「Wii」は家族みんなが一緒に遊べるような簡便さ・敷居の低さを目指した。販売価格にも差がある。昨年の「脳トレ」は「遊び」・「学び」という概念を脱構築するようなインパクトを持った。学びと遊びの相関性や連続性は「楽しく学ぶ」という以上に根底的だ。新たなゲーム機が「学び/遊び」、「子ども/親(家族)」あるいは「バーチャル・リアリティ/現実」をどう取り持つのか取り持たないのか、そして取り持たせられるのか注目される。
■ 文化面における大きな変化は六本木地区にある。1/21には国立新美術館の開館、3/30には東京ミッドタウンが開業を迎える。六本木地区には現在、現代美術を中心に取り組む森美術館があるが、ミッドタウンには古美術に定評のあるサントリー美術館が移転、三宅一生デザイン文化財団の21/21 DESIGN SIGHTもオープン予定である。国立新美術館のコンセプトは曖昧であるが、東京都美術館のような新たな「ギャラリー」機能を担う目的があるようだ。伝統に裏打ちされた上野に対して、六本木は最先端スポットである。「ヒルズ族」を生み出してきた六本木は今年はどのような文化を発信していくのだろうか、その六本木をどのように理解し利用していくのか。
■ 昨年はマグロの漁獲規制が大きな社会問題となった。食糧問題は今年も幾度となく取り上げられることになろう。2006年10月、シカゴ穀物市場では小麦が10年ぶりの高値をつけ、トウモロコシや大豆も大きく値上がりしたそうだ。穀物の在庫水準は世界的に低下しており、トウモロコシは期末在庫率(期末在庫量/世界総消費量)は歴史的低水準にあるそうだ。その背景には、中国・インドなどの人口大国が本格的な経済成長に突入し、「人口爆発」と「所得爆発」により食糧需要が急増したことがあげられている。しかしその含意としてあるのは社会構造の矛盾だろう。
■ 我々は世界一の農産物輸入国であり、その多くをアメリカに頼っている。それ故にアメリカ市場・世界市場の動向に強く左右される。しかし、年間輸入量6000万トンの国内生産量1800万トンのうち、2000万トンを廃棄しているという。2000万トンは、1.2億人の人口を6000万トンの食糧でまかなっていると考えれば、1年で4000万人分の食糧を廃棄していることと同様である。あるいは一日消費量1.8キロの食糧のうち、450グラムを食べ残している計算になる(人間一人を養うのに必要な穀物の量を1とすれば、同じ牛肉を得るのにその10−20倍の穀物を必要とするという)。
■ 環境技術の開発やCSR (Corporate Social Responsibility)によって環境への経済的関わりも引き続き高まるだろう。廃材からバイオ・エタノールを生産するプラントが大阪に誕生した。バイオエタノールを使ったバイオ・ガソリンの導入が叫ばれて久しいが、技術面や経済面、主導権争いなどで普及は限定的という声もある。
■ 今年から大学全入時代を迎えるといわれる。特に地方の大学で、淘汰が進むと推測されている。初等・中等教育の附属化・系列化が進むと考えられ、「弱肉強食」による二極化が進行するとされる。各大学が個性を出し生き残りに必死だが、日本の高等教育就学率は各国に比べ低い。これからは親世代や退職者にも目を向けた「生涯教育」を意識する必要があり、子どもとお年寄りをつなぐような、学びのデザイン力も問われるだろう。
■ 今年は統一地方選と参議院選挙がある。昨年の教育現場での問題や教育基本法案改正を受けて、教育が争点になることもありうるだろう。教育委員会の問題や、また教育改革においてはすでに教育再生会議と中央教育審議会の綱引きがはじまっている。教育バウチャー制度の導入など政策論議の行方が注目される。
■ また選挙後は消費税率引き上げ、社会保障改革が政治日程の上に乗ってくることが予想される。法人税率・地方財源と、未来へのヴィジョンへと、我々の選択する道が問われることになろう。
■ そして選挙後に安倍首相の靖国参拝があるとすれば、改善方向に向かいつつある対中・アジア関係にも影響が出てくるかもしれない。年末には韓国の大統領選もある。最近隣国二国との関係は、中学校・高等学校の国際交流のありかたにも、影響を及ぼすかもしれない。
■ いくつかのテーマから2007年を展望してみたい。
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