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大学院の時代が来た (1) ≪2004年10月27日付 Newsweekより要約≫

2005年7月14日
by 井口 唯史

■ 大学院の学費はばかにならない。にもかかわらず、アメリカをはじめ世界中で、大学院への進学ブームになっている。企業で出世したり専門職で成功したりするには、4年間の勉強だけでは不十分。今やホワイトカラーの大多数が大学卒の資格をもっている。

■ 米大学評議会によれば、1986〜2002年における大学院生の年間増加率は2%だが、現時点での最新データである02年だけを見ると、前年比7%増を記録している。米大学院適正試験委員会によると、今年の受験者の推計は37万5000人以上。00年より11万5000人増える見込み。

■ 「今の修士号の価値は、1946年当時の学士号と変わらない」「修士号ぐらい取らなければ、というムードが社会に広まっている。」と、ニューヨーク大学芸術科学大学院のキャスリン・スティンプソン院長は言う。

■ 80年代にアメリカでMBA(経営修士号)ブームが巻き起こると、金融業界や広告業界で働くためにはMBA取得が必須になった。その波は世界に広まり、フランスでも90年代にMBA課程が急増。いまロンドンからベルリンまで、いたるところでMBA課程が増殖している。

■ 日本の大学院は研究者を育てる教育が中心だったが、最近は実務教育に力を入れるところが増えている。昨年、専門職大学院制度が始まって以来、22大学が25の研究科を開校(法科大学院を除く)。デザイン経営(宝塚造形芸術大学大学院)から助産学(天使大学大学院)まで学べるようになった。

■ 文部科学省専門職大学院室の手塚剛推進係長は、政府もスペシャリスト育成の流れを推奨していると語る。「これまでは大学院の量を拡大する方針を取ってきた。しかしグローバル化などの社会的なニーズで、大学院の役割多様化してきたことにより専門職大学院が生まれた」

■ ニューヨーク大学は大学院課程を拡充しており、最近も博物館学のコースを新設。大学院全体を統括する「マスターズ・カレッジ」創設の計画も進んでいる。スティンプソンのみるところ、アメリカの大学は大学院課程を増やさなければ、国際的な競争で敗北する。「アメリカは、製造業やサービス業だけでなく、大学院についても世界を相手に競争しなければならなくなっている」と話す。

■ 50年代以降、世界最高との評価を得たアメリカの大学院には、世界中から優秀な学生が集まった。しかし、9・11テロをさかいに米政府はビザ審査を厳格化。その一方で、アジアやオーストラリア、カナダ、ヨーロッパの大学院課程が注目されはじめた。

■ 以前は大学院生といえば、学者になりたい人か、医師など専門職をめざす人が多かった。しかし最近は、社会人が大学に戻る理由はそれほど明確ではなく、さまざまである。人生の進路を変えたいから、という動機も珍しくない。

■ アメリカでは、教育にたずさわるために大学院で学ぶ若者も多い。専門家によれば、教育者を目指す若者が増えたのは、9・11テロの衝撃にさらされ、エンロンなど大企業のスキャンダルを目の当たりにし、やりがいのある仕事への関心が高まったためだという。そのため、高い学費を払って以前より収入の少ない仕事に就く人もいる。

■ もちろん、大学院で学ぶのは自分の利益のためという人の方が、実際には多い。大学卒業者より大学院修了者のほうが収入が多いのは、統計に表れている。米国勢調査局による02年のデータによると、修士号を持っているアメリカ人男性の平均収入は7万4000ドルで、大学卒の男性より1万1000ドル多かった。女性の場合では、修士号取得者が4万6000ドルで男性より少ないが、大学卒よりは1万1000ドルほど多い。

■ もっとも、男女差は縮小に向かっているようだ。アメリカの修士課程では、今や女性のほうが多数派になっている。高学歴は、いい仕事を得るための武器になると、米教育評議会のジャクリン・キングは言う。
「仕事のレベルによっては、MBAは必須条件だ」


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