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頭脳流入が止まる米国≪2004年11月24日付 Newsweekより要約≫

2005年7月11日
by 井口 唯史

■ 9・11テロ後、アメリカは愛国法の下で、一部のビザ申請に対して特に厳重な審査を行うようになった。以来、商談が滞るなど苦情が後を絶たない。米企業734社を対象にした2004年6月の調査では、ビザ発給の遅れや発給拒否による損失は、2002年7月から2004年3月までの期間だけで推定300億ドルにのぼる。

■ しかし、短期滞在ビザの発給が遅れても、影響は文字通り「短期的」なもので済む。もっと気がかりなのは、セキュリティーの強化に伴い移民や留学生が減ることである。アメリカは、「誰にでも成功のチャンスがある国」というイメージを使い、外国の有能な人材をひきつけてきた。彼らの存在がアメリカの国際競争力を支える大きな力になってきたが、このままでは「頭脳流入」にブレーキがかかりかねない。

■ 短期滞在ビザに関しては、米政府も発給の迅速化を図っているようだ。ビザ申請・発給件数ともに9・11以降激減していたが、完全回復には程遠いものの、2004年前半には上昇に転じた。ただし、短期滞在以外については、依然として狭き門である。

■ 米国土安全保証省が選手発表したデータによると、永住権取得者数は2003年にも減り続け、2002年より34%減少した。さらに、短期滞在ビザから永住権への切り替えを申請し、認可を待っている人の数は昨年末時点で120万人にのぼる。この中には、アメリカが最も必要とする熟練労働者や研究者が含まれている。

■ 移民問題の専門家は、短期滞在から永住権への切り替えを新たに申請した人は2002年には68万人だったが、2003年には35万人に減ったと指摘する。これが有能な人材の枯渇につながるとはまだ断言できないが、「憂慮すべき事態」とみている。

■ 最近になって学生ビザの発給件数はやや増えてきたが、優秀な外国人学生が他の国に流れる「アメリカ離れ」が進んでいるようだ。とりわけ、教育水準と所得レベルが最も高いアジア系にその傾向がはっきり表れている。アメリカの留学生事情を調査している国際教育研究所は昨年11月、毎年着実に伸びていた留学生数が横ばいに転じたと発表。留学生でトップ20位に入る国々のうち、インドネシアやタイ、マレーシアなど13カ国でとくに減少が目立ったという。

■ 大学院に限ると状況はさらに深刻で、大学院評議会の今年のリポートによると、9割のコースで留学生の入学申請件数が大幅に減っており、とくに理工系で減少が顕著だという。その分、アメリカ以外の国への留学が増えていて、EUは2002年以来、アメリカに代わって、中流層出身の中国人学生に最も人気のある留学先になった。

■ イギリスが昨年受け入れた中国人留学生は4万2000人。イギリスやオーストラリア、カナダは9・11以降、積極的に留学生受入数を増やしている。

■ ハーバード大学のローレンス・サマーズ学長は、コリン・パウエル米国務長官に書簡を送り、中国人の入学希望者数が40%も減った学部もあると訴えた。「アメリカは最も才能ある科学者の一部を失い、技術革新の最前線から脱落しかねない」

■ 7月まで駐ヨルダン米大使を務めていたエドワード・グニームは、ヨルダンのある上院議員の息子にビザを取らせるのに、7,8ヶ月もの努力が必要だったと言う。ビザ発給が大幅に遅れたのは、似たような名前がアメリカのブラックリストに載っていたためだ。また、ヨルダン元首相の甥は、母親の葬儀のために一時帰国した後、なかなか再入国を許されず、学位取得が1年遅れた。この話は、ヨルダンの有力者のほとんどが耳にしている。

■ アメリカは閉ざされた国だというイメージが世界で強まっている。東欧の政府当局者は、アメリカの対イラク政策を支持したのに、ビザ免除の特定をもらえないと不満をもらす。アラブの富豪は、外国での治療が必要なとき、アメリカではなくドイツの病院を選ぶようになってきた。

■ チェコで学生向け雑誌の編集をしているバルバラ・ツェホバ氏は「多くの人は今も、映画やテレビでなじみのあるアメリカに大きな夢をいだいている。でも、今では、働くにも留学するにも、イギリスやアイルランド、スウェーデンのほうが手続きは簡単」と話す。

■ 米当局は先日、学生ビザに100ドルの新規手数料を課した。支払いにはクレジットカードか米銀行の口座が必要だが、外国の学生の大半はどちらも持っていない。そのため米政府は現在、インドと中国で、現地通貨での支払いを試験的に実施している。

■ アメリカはビザ免除27カ国に対しても、生体認証(バイオメトリックス)技術を2004年10月26日までにパスポートに導入するよう要求。イギリスやドイツ、フランス、日本などが抗議していた。米議会は期限を1年延長したが、イギリスなどはもっと時間が必要だと主張している。

■ 今も、アメリカでのチャンスを夢見る人の列は途切れることはない。アメリカの労働者の8人に1人は外国生まれ。96〜02年における労働者の増加分の半分を占めている。理工系博士号取得者の38%は外国生まれ。外国生まれの有能な人材がアメリカで活躍し続けられるかどうか。これはアメリカだけでなく、アメリカのライバル国の未来をも左右しかねない問題である。


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