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ホーム学校リサーチ:教育情報レポート2005年6月23日 第10回OECD/Japanセミナーから(1) 〜学校における教育の質の向上:学習到達度調査の役割と影響

2005年6月23日 第10回OECD/Japanセミナーから(1)
〜学校における教育の質の向上:学習到達度調査の役割と影響

2005年6月27日
by 石井 麻美

◆ 6月23日、第10回OECD/Japanセミナーが開催されました。このセミナーでは、2004年12月に発表されたOECD「生徒の学習到達度調査」(PISA: Programme for International Student Assessment)の2003年調査の結果から、(1)OECDにおける各国の教育の現状と課題及び質の向上のとらえ方、(2)主要国の成績向上のための取り組み方策、(3)教育政策立案のための国際比較調査のあり方等について、議論が行われました。世界的視野の中で、日本の今後の教育を考える興味深いセミナーだったので、ともに日本の教育の今後を模索するための情報を共有するために、簡単にまとめてみようと思います。

◆ 【日本−山中伸一文部科学大臣官房審議官】は、日本の現状について山中伸一文部科学大臣官房審議官は「読解リテラシー」の調査において、「テキストの解釈」と「自由記述(論述)」に課題があると述べています。テキストの解釈とは、書かれた情報がどのような意味を持つかの理解・推論が必要な問題です。そして、自由記述とは、答えを導いた考え方や求め方、理解説明など、長めの語句で答える問題です。この2点の無答率がOECDの平均より5%以上高い問題数の割合が、解釈は35.7%。そして自由記述にいたっては60%という結果です。

◆ 質問紙調査の結果でも、すでに周知のことですが、学意欲や学習習慣に課題があるようです。例えば
(1)先生は生徒が静まるまで長い時間待つ 日本13.5% OECD平均31.2%
(2)数学で学ぶ内容に興味がある生徒  日本32.5% OECD平均53.1%
(3)学校以外の勉強時間が短い    日本6.5時間(週) OECD平均8.9時間(週)

◆ この課題に対する主な取り組みとしていくつかの提案が検討されていますが、その中からポイントを選択して取り上げます。

(1) 全国的な学力調査を実施
  子どもたちの学習の到達度、理解度を把握し、検証することで指導方法の改善に向けた手がかりを得ることが可能となり、子どもたちの学習に還元できる。また、子ども達に学習意欲の向上に向けた動機付けを与えていく指標とする。

(2) 教師に対する信頼の確立
  優れた教員の養成のために、教員養成・免許制度の改革を検討している。
  ○専門職大学院の設置の検討
  ○免許更新制の検討
  優れた教員の確保のために次のことを検討。
  ○義務教育費国庫負担制度
  国が小中学校教員の給与の半額を負担することを検討

◆ 【OECD教育局のアンドレア・シュライヒャー指標分析課長】は、シュライヒャー課長はPISAの結果を「教育制度の質と平等性の観点」から2003年度に行った数学的リテラシーの調査について、(1)教育システムの総合的な結果(2)学習機会の公平性(3)学校間格差の有無(4)男女差(5)生涯学習のための基礎の5つの判断基準に基づいて各国のスコアを分析しています。その結果、「社会経済的背景における格差は、教育システムに重要な課題をもたらしている。親の収入が高い生徒は良い教育をうけている、あるいは家庭に多くの文化的財産がある生徒は成績が良い傾向にある」とまとめました。

◆ また、生徒の成績の格差を、「学校内の成績格差」と「学校間の成績格差」の双方から分析した結果、アイスランド、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、ポーランド、デンマーク、アイルランド、カナダ、デンマークでは学校内格差はあるものの、学校間格差はほとんどみられませんでした。一方で、韓国、チェコ、オランダ、ドイツ、イタリア、日本、トルコなどは、学校内格差とほぼ同等に学校間に成績の格差が見られました。

◆ 読解リテラシーと数学的リテラシーを比較した結果、次のような男女差が見られました。
(1) 読解力では女子が圧倒的に成績が良い。
  ○どの国でも、読解力では女子が男子を大幅に上回っている

(2) 数学では男子がやや上
  ○ほとんどの国では男子が女子を上回っている
  だが、ほとんどの場合は僅差
  成績上位者のなかには男子が多く、"危険"グループは男女がほぼ同数であることが、その主な理由
  学校内、学級内での男女差が大きいケースが多い
  ○「問題解決能力」で女子が優れていることが意味するもの
  数学で男子を有利にしているのは、数学の根底にある認知プロセスではなく、むしろ学校内でどのように数学が扱われているかによる
  ○数学に対する関心や態度における男女差は、調査結果でみられる成績の格差よりも格段に大きい
  女子は、数学に対する本来的な動機付けが低く、数学に対して否定的な態度が強く、抱く不安がずっと大きいと回答している
  数学関係の教育や職業への進路選択にあたって男女差が大きいのは、この影響がある可能性も考えられる

◆ このように、経済格差、学校間格差、学校内格差、男女差など様々な分析結果が得られていますが、これはあくまでも国際比較であって、各国の状況や課題を的確にとらえたものではありません。そこで、OECDは国際比較調査結果に基づく政策・施策を次のような枠組みに分類しています。この指標は、自国がどこに課題があるのかを把握するには的確な指標といえます。

    領域1 領域2 領域3
    アウトプットと結果学習の影響 政策・施策教育成果の形成 教育政策を状況に合わせる、または強制する
レベルA 学習者個人 知識・技能の質と分配 個人の姿勢、取り組み、態度 学習者の社会経済的背景
レベルB 指導環境 指導の質 指導法、学習週間、学級の雰囲気 生徒の学習、教師の職場環境
レベルC 学校、他の機関 機関のアウトプットと成績 学校の学習環境 地域社会と学校の特徴
レベルD 国または
システム
社会的・経済的教育成果 構造、資源の分配、政策 国家の教育、社会的・経済的背景

◆ シュライヒャー課長は教育水準を上げるのは、経済的な支援も必要だが、それ以上に向上心とモニタリング(評価・査定)の必要性、そして何よりも教師の高い期待と努力をしようという姿勢にあるとしています。中でも、教師と生徒の関係と教室の雰囲気に関する生徒の認識は教育水準と強い関係を示すようです。具体的に、成績をあげた各国の指導の進め方を見てみると、

◆ 注目されている国では

  (1) 学校と教師が能力の異なる学習者に対して、明確な戦略と取り組みを持っている
  個別学習が比較的頻繁に行われている
  社会経済的要因と移民に関連する格差の問題は、主要な課題として認識されている
  (2) 生徒には様々な課外活動の機会が提供されている
  (3) 学校は、生徒の状況に応じた支援システムを提供してる
  学校心理専門医、あるいは進路カウンセラー
  (4) 教育機関の分化は導入されているが、あったとしてももっと後の段階で行われる
 ・ これは結果として生徒の社会経済的な背景の影響を抑えることにも貢献している

◆ また、支援システムと教師の職能開発においても、注目している各国では

  (1) 効果的な支援システムが、個々の学校や専門的な支援機関に設けられている
(2) 教師の研修計画は選択式
(3) 就学前の教育職員に対する研修は、教師の職能開発と密接に統合されている
(4) 継続的な職能開発はシステムの根幹と位置付けられている
(5) 学校の管理職に対する職能開発には、特別な注意が払われている

◆ 今、注目されている国々は、学校や教師が行動に移す権限と自立性を持ち、かつその判断は必要な知識と情報の裏付けの上に成り立つ専門的な判断であるとシュライヒャー課長は語ります。「実証的なデータに基づかずにものを言う人は、ただ単に個人的な意見を述べているのにすぎない」と最後の資料に記されていましたが、この実証的なデータをもとに、どのように課題を解決していくのかという具体的なプランを日本も提示し、行動に移す時ではないでしょうか。

◆ 次回は、主要国の成績向上のための取り組み施策についてレポートします。



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