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京北学園の授業中の対話と休み時間の「おしゃべり」

2004年7月29日
by 葛原 裕香

■ 2004年6月24日、京北中学校1年生の社会科(地理)の授業を取材した。取材日の2日前までは教育実習生が授業を行っていたので、担当のS先生は約2週間ぶりに教壇に立ったそうだ。久しぶりのS先生の授業で、生徒たちも「今日は何するの先生」「(黒板横の地図を見て)アフリカ?」と会話を交わす。しかし、こうした会話はただの雑談ではないのだろう。教師と生徒の対話の始まりであり、対話型の授業をはじめるにあたって欠かせない「導入」となっているようである。

■ 今回取材させていただいた授業の単元はアフリカ。「アフリカ大陸の形は、人間の何かに似ていると言われているんだけど何だと思う?」と、さっそく生徒の興味をひく発問で授業が始まる。「はいっ」と5〜6人の生徒がさっそく手を挙げ、「頭蓋骨!」「茶碗蒸?」「何かのフタっぽい」など、次々とユニークな意見が出てくる。このように、教師の発問に対してすぐに生徒から反応が返ってくる授業は、生徒と教師の間で普段から親密なコミュニケーションがとれているからこそであろう。それはまた、休み時間の生徒の様子からもうかがえる。京北学園では中1専用の職員室が設けられているのだが、その部屋に休み時間のたびに生徒たちがやってきて、教師と楽しそうにおしゃべりをしているのである。

■ 前回の取材http://eri.netty.ne.jp/eduinfo-rep/eduinfo/20040517.htmでは、中学2年生の数学の授業で、生徒と教師の対話から楽しい授業がつくられていく現場を見学させていただいた。まさに「数楽」の授業であったのだが、今回取材させていただいた中学1年生の社会科も、やはり教師と生徒の会話のキャッチボールで授業を進めていく対話型の授業展開であった。たとえば、アフリカ大陸の地図を見ながら次のような会話のやり取りがあった。

教師:「緑の部分はどう?」
生徒A:「少なーい」
教師:「うん、植物が少ないって事だね。何色が多い?」
生徒B:「茶色」
生徒C:「えー、黄色だろ」
生徒D:「てか、同じじゃん」

このように、京北学園では教師と生徒の対話型の授業を多く展開していると考えられ、それは、普段の学校生活におけるきめ細やかな指導にも直結するものであろう。

■ とくに注目したいのは、教師と生徒の間だけではなく、生徒同士の会話のやり取りも活発にみられる点である。前述のアフリカ大陸についての発問の場合もそうであったが、授業中における生徒同士の言葉の投げかけは、教師の講話を聞いて個人で学習していく受身の授業ではなく、クラス全体で考えながら課題を解決していこうとする授業スタイルといえるかもしれない。後者であるとすれば、自分なりに考える学習であり、クラスメイトの意見を聞くことで多様な視点があることに気づくであろうし、授業についていけない生徒のフォローにもなるだろう。

■ さて、そんな京北学園に通う生徒たちと、昼休みに学食で一緒に食事をとる機会に恵まれた。休み時間では、生徒たちは授業の時とはまた異なる「おしゃべり」をしていることに改めて気づかされる。授業のこと、部活のこと、家族のこと、テレビの話、その他習い事や趣味などその内容は多岐にわたる。取材者から質問を投げかけなくとも、「先生、部活何に入るの?オレ、テニスだよ(※取材者を教育実習生と勘違いした模様)」「帰宅(部)。(学校外で)アメフトしてるから」「どこ住んでんの?」「こないだ帰りに自転車こいでたらさ…」と、会話がどんどん弾んでいく。この生徒たちは、取材したその日の授業中に発言する場面は特に見られなかったが、休み時間ではこのように友達同士楽しく会話をしている。

■ イギリスの教育社会学者ジェフ・ウィッティーは、著書「教育改革の社会学」で、「生徒はみな教科の言説と、彼らが直接的に教科には関係ないと考えている会話とを強く意識し」、「仲間集団や家族の文脈と結びついたこの種の『おしゃべり』は、学校の授業とは明らかに異なるもの」と述べている(※イギリス中等教育における「カリキュラム横断型テーマ」と日本の総合学習http://eri.netty.ne.jp/eduinfo-rep/eduinfo/20040303.htm参照)。教科言説と休み時間の「おしゃべり」を、生徒たちはどのように区別しているのだろうか。それは通常、気にも留めない「当たり前」のことなのかもしれないが、授業中の対話と休み時間の「おしゃべり」ではどの点で違いがあるのか、会話の構造的な違いに注目してみるのも面白いかもしれない。いずれにしても、先に紹介したアフリカの授業例のように、複数の生徒たちと教師の対話で展開される授業は、学習する生徒たちにとって興味を惹きつけられる授業だといえるだろう。


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