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| CALが提言する21世紀型「学習プログラム」 |
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2004年2月17日 |
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§0 はじめに ■1998年12月、「ゆとりの教育」の名のもとに文部科学省は2002年度より「新学習指導要領」の実施を提言した。完全週休二日制や「総合的な学習の時間」(以下「総合的学習」)の導入、学習内容を現行から3割削減するなど、戦後最大の教育改革であったといえる。しかしながら、大幅なカリキュラムの削減は生徒の学力低下につながると「学力低下論」が叫ばれるようになり、指導要領改訂後の現場の混乱もあわせて指摘されるようになった。今こそ学校教育の根本的見直しと、新しい「学習プログラム」の確立が求められているのではなかろうか。 ■そうした中で2001年6月、NTS教育研究所は、最先端の「学習プログラム」を学校現場の教師たちと協働で研究していく勉強会を開催した。その会の名は「最先端学習センター(Center for the Advanced Learning)」、略して「CAL」である。そのCALが2002年8月に出版した本が、『私学の挑戦―The 授業―』である。「学校の枠を超えて他校との授業交流、さらに異業種の人達が『授業』という切り口から教育を見直して行こう」とするCALの試みは、今後どのような形で体系化され、発展していくのか。本書をよめば、私学の教員たちが従来の「チョーク・アンド・トーク(対面式知識注入型授業)」から脱却し、生徒と教師のコミュニケーションによって成立する授業―新しいカリキュラム―を模索していることがわかるであろう。以下では、すでに学校現場で導入されているCALの授業実践例を紹介する。 §1 CALの授業実践例 1−1 ジグゾー法によるグループワーク授業 ■まずは、明治大学付属明治高等学校中学校教諭・松田孝志氏による「ジグゾー法によるグループワーク授業」である。松田氏は、ジグゾー法によるグループワーク形式の授業を教科授業において実践している。グループのメンバーとの協同作業や発表は、生徒にとって自己発見や意欲向上につながるとともに、対人スキルが身につき生徒一人一人の「居場所づくり」が期待できるという。ただ、一斉授業に慣れている生徒たちにとって、グループ学習は全体的に一歩引いてしまう傾向があるので、動機づけの工夫や、協同作業が苦手な生徒のフォローなど、教師の最小限の介入が必要である。 ■グループのメンバーと協力して一つの課題に取り組む過程では、生徒は自分一人で責任を負わなければならないこともあれば、自分自身と集団との折り合いをつけていくために、丁寧なコミュニケーションが求められることも多々あるだろう。そこで身についた柔軟な判断力と行動力は、学校生活のみならず生徒たちが社会に出た時に大いに役立つものであるに違いない。
■つぎに、共栄学園中学高等学校教諭・諏訪啓太氏が「総合的学習」について述べた「Kyoei&Honda 最先端学習」が挙げられる。共栄学園では、中学1・2年生という感性の豊かな時期から生徒の興味・関心を広げるため、学校内外での体験学習活動を積極的に導入している。なかでも、ホンダのサーキットコース「ツインリンクもてぎ」(栃木県茂木町)周辺にある教育施設を利用した「最先端学習体験ツアー」では、グループ単位での体験・リサーチ・議論・発表をとおして、生徒たちの高度な情報処理能力・プレゼンテーション能力の育成を図っている。 ■さらにこのツアーでは、全日程を通じた活動プログラムを当研究所が引き受けるなど、従来の学校教育の範疇ではなし得なかった「企業連携」という道が、ここに新たに開かれたといえる。共栄学園では、こうしたさまざまな体験学習活動を、高校に入ってからの各自の課題設定とその探求活動へつなげるとともに、最終的には生徒一人一人に適した進路設定にも役立つものと期待している。
■そのほか本書では、共立女子中学高等学校教諭・中城芳裕氏の「中学2年次における想定自画像の実践」という論文も記載されている。中城氏は、美術の授業で自画像制作を取り入れ、生徒の自己肯定感や個性を引き出そうとする。生徒たちが描く多くの自画像からは、自己評価が低く、肯定感の希薄な様子がうかがえる。中城氏は、授業では生徒たちを外面的に一つの集団にまとめるのではなく、自画像制作という「個」を見つめる作業をとおして、自己肯定感の獲得と自立の第一歩につなげていくことが教師の役割だと述べている。 ■ただしその際、教師が生徒の絵を見て「ここはこう描いた方がよい」と限定的な答えを与えるだけでは、生徒たちの意欲も個性も引き出せない。自画像制作は一見、個人作業に思えるかもしれないが、中城氏は自画像制作の過程で、教師が生徒と共に悩み、共に「個」を追い求め、生徒をゆったり導いていく指導を行っている。このようにしてできた生徒たちの自画像は、まさに生徒と教師の相互作用から生み出されたものといっていいだろう。 §2 新しい「学習プログラム」の確立を目指して ■以上の3例は、いずれも私立学校で行われているもので、授業実践の内容や展開方法に各校の建学の精神や教育理念が反映されていて興味深い。加えて、どの実践例に関しても、生徒と教師の間に「(1)高度で丁寧なコミュニケーションが行われること、(2)いま、ここでという瞬間を大事にする、(3)互いに協力しながら自己成長を促す関係を作る」という3つの共通点があることに気づかされる。 ■上記のCALによる授業実践報告以外でも、たとえば2003年、東京大学大学院教育学研究科、東京大学大学院教育学研究科基礎学力研究開発センター、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科の共同研究として、中学校入学後の学習環境の形成過程に関する研究報告が挙げられる。これは、ある私立中学の1年生を対象に調査したもので、生徒の学習習慣が学校・家庭環境の相互作用によって形成されていく構造を明らかにするとともに、授業中の生徒と教師の談話や、仲間という人的資源の活用が、生徒の学習意欲ひいては学力に影響を及ぼしていると指摘している。 ■21世紀の教育には、子どもたちの視野を広げ「生きる力」を育むために、これまで以上に学校が、地域や家庭、企業、民間との連携を深めていくことが重要となるだろう。そして教師には、先にも述べたような、生徒とのコミュニケーションを主体とした新しい授業実践がますます求められている。では、生徒と教師の相互作用によって作られる授業とはどのようなものなのか―そのメカニズムを解明し、新しい「学習プログラム」を確立するためには、今後さらなるリサーチをすすめていくことが肝要である。 参考文献:「私学の挑戦―The 授業―」(2002年 銀の鈴社)CAL編 |
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