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学校説明会から見える青年へのまなざし


◆ 10月14日・15日・21日と三回にわたって麻布学園の学校説明会が開催された。同学園のwebページ (http://www.azabu-jh.ed.jp/) によると三回でおよそ4,300名ほどの参加者のようである。

◆ 10月14日の説明会に参加してきたが、やはり麻布には特有の雰囲気がある。中高の6年間を人格の核となる土台作りの時期と捉え、その6年間を「青年の友」として過ごしたいと語る氷上信廣校長からは、同校の考える生徒と教師の関係性、生徒が自由に出入りするという教員室の雰囲気が思い浮かぶし、各教科の説明からは、生徒の知的好奇心に真っ向からぶつかろうとする教師陣の真剣さが伝わってくる。参加した保護者の方々にもその雰囲気は伝わったのではないだろうか。

◆ 麻布には「自由な学校」というイメージがついている。歴史上、学校として自由を明確に標榜したことはないはずだが、自由な雰囲気は感じられる。その一端が今回の説明会でも感じられた。

◆ 氷上校長による麻布の教育についての話では「二兎を追う教育」というのが印象的であった。授業という学問への道と、クラブ活動や文化祭などの自治活動を通しての人間形成への道。知的好奇心への絶え間ない刺激と、クラスや学年を越えた仲間との活動。妥協なくこの2つの道を歩む必要性を語っていた。そして自由について。生徒が自らの責任において自発的に活動することを重んじ、その試行錯誤の過程に「立会い、見守り、必要ならば手を貸す」という言葉からは、同校の持つ懐の深さが感じられる。「自由」には「逸脱」がついてまわる。社会的に赦されざることへの厳しさはもちろんだが、麻布の自由とは、創設者である江原素六から連綿と続く青年への「寛容」さであるのだろう。

◆ 教育理念に続いて、スライドを使って普段の学校風景の紹介があったが、淡々とした語り口調の中にふと笑いを誘うような瞬間を創り出すうまさはさすがである。最も会場が沸いたのが公式野球部のスライドで、「今年一回戦、突破しました、13年ぶりです」「二回戦も勝ちました、これは30年ぶりです」「期待して挑んだ三回戦、コールド負けでした」会場の雰囲気が一気に変ったのが印象的である。少し眠たげにしていた子どもたちが、理科の実験の場面や部活の紹介で目を覚ますのも見ていて非常に面白い。前列に座っていた子はチェスなどのボードゲームに興味があるようで、チェスの日本一がいるという話に大きな関心を示していた。

◆ 入試問題も、その学校を映し出す鏡になる。説明会において入試問題そのものについて深く触れることはなかったが、一点、「周りのことに気づき、考えるプロセスを見ます」という話が印象的であった。与えられた知識の活用にとどまらず、それをベースに自身の生きる社会、身の回りの空間にどれだけ興味を抱けるか。麻布学園の入試ではそこを見極めようとしている。それは言い換えれば、入学後の六年間で生徒として取り組むべき一つの課題の提示といえるであろう。実際今年の入試問題に関しては、当研究所のwebサイトでも取り上げたが(入試に見る学びhttp://eri.netty.ne.jp/nyushi/index.htm)、紙や新聞という媒体を一つのテーマに取り上げた社会の入試問題などはその一つの例といえるだろう。

◆ 聞いていて非常に「楽しめる」説明会であったが、その後の校内見学も面白かった。中学2年生の学年行事をテーマにした壁新聞や、毎年創っている論集は、待ち受ける教育を想像させる重要な素材である。子どもたちにも大きな刺激になったのではないだろうか。図書館前では同校の教員やOBの執筆した『麻布文庫』の販売がなされていたが、飛ぶように売れていた。何冊か読んでみたが、麻布での授業や教員の研究などが垣間見える非常に興味深い内容である。受験生の保護者ならずともぜひ一読をお勧めする。今年の説明会はもう終わったが、麻布学園の新しい魅力が見えてくるのではないだろうか。


川頭 邦晴
2006年10月27日更新

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