NTS教育研究所NTS教育研究所
ホーム編集者コラムデンマークの"Learning Style"に見る子どもたちの学び

NTS教育研究所スタッフによる【学び】をキーワードにしたコラム

デンマークの"Learning Style"に見る子どもたちの学び
NPO法人School Design Net主催のセミナーで、Svend Erik Schmidt(以下シュミット)氏の「ラーニングスタイルとは」という興味深い講演を聴いた。シュミット氏はデンマークのSISアカデミーでチーフコンサルタントとしてLearning Styleの啓発・研究活動をされている。欧米で提唱され、デンマークでは25%の学校が取り入れているというLearning Styleとは、「個々の学習者が、新しく難しい情報に対して集中して取り組み、獲得する方法」と定義されている。

要するに、「ひとりひとりの学習者にあった学習環境を」ということなのだが、Learning Styleではその学習環境を、いくつもの細かい要素の組み合わせとして捉えている。

まず、学習者の思考スタイルを「分析的思考タイプ(Analytic)」と「大局的思考タイプ(Global)」に大きく分け、それぞれのタイプが好む学習環境の違いが述べられた。

  (1) 音・光・温度などの「環境的要素」
  (2) 動機づけ・粘り強さなどの「感情的要素」
  (3) 自分と他者(友達、先生など)とのかかわり方についての「社会的要素」
  (4) 知覚、動き、食物摂取といった「身体的要素」

など、多重知能(Multiple Intelligence)と重ね合わせた観点から、具体的な学習環境について分類がなされている。自分や身近な人たちが学習や仕事をしている姿を思い浮かべながら聞くとなるほど、と当てはまる点がいくつもある。

まず「今やっていることが何につながるのか」という結果を先に見通すことでモチベーションが上がる子ども、先生の「よくできたね」という言葉で達成感を確認できる子ども、音楽の流れる部屋でゆったりしたソファに座り友達と会話しながら学ぶのが好きな子ども、静かな涼しい部屋で何かを書きながらひとりで勉強するのが好きな子ども。

多様な特性を持つ子どもたちに対応するよう、開発された教材、教室内のレイアウト、豊富なデザインの机や椅子など、実際の学校の様子がスライドで紹介された。

もちろん、個々のLearning Styleを把握したからといって、子どもをタイプ別に分類して完全に異なった方法で学ばせることが目的ではない。異なる特性を持った子どもたちがいるということを前提に、多様なメディアを使いながらコミュニケーションのしかたを柔軟に変える工夫が求められているということなのだろう。

学力低下議論を受けて「子どもに何を教えるか・どんな力を身につけさせるか」が話題になる中、一貫して「子どもはどのように学んでいるのか」を語るシュミット氏の視点は興味深かった。世界の急速なグローバル化やIT技術の普及の影響など子どもたちを取り巻く環境がめまぐるしく変化する中、シュミット氏の「時代を経て社会や技術が変化しても、人間のありかたは基本的には変わらないもの」という言葉もまた印象に残った。

将来、新しい技術や知識と向き合う時、自分の学び方を知っていることは子どもにとって大きな財産となるだろう。多様な学び方を尊重し、その環境を整えるための丁寧な心配りやコミュニケーションこそが、「ひとりひとりの学習者にあった学習環境」を創っていくのではないだろうか。

吉井 千花
2006年6月27日更新

このページのトップへ▲
ホーム編集者コラム