§0 はじめに
■ 21世紀になっても、世界で起こっている武力紛争や人権侵害は止むことはなく、暴力と憎悪の負の連鎖が続いている。そのような中で、真の平和を求め、今多くの議論が行われている。平和とは、何か。平和の意味や平和をつくるための方法をめぐり、世界中で意見が飛び交う。
■ 平和を築くためには、様々な方向からのアプローチが必要となるが、国際平和を考える上で、最初に頭に浮かぶのは「国連」の存在だろう。そこで、今回は「国連」にスポットを当てて、平和について考えてみたいと思う。国連が、どのような目的で設立され、今平和構築のためどのようなアプローチをし、また時代の変化に伴いどう変化していくべきか、様々な視点から考察していきたい。
§1 国連の成立
■ 第2次世界大戦中から、国際平和を維持し得なかった国際連盟にかわる新たな国際機構を設立する構想があり、1945年4月から6月にかけて行われたサンフランシスコ会議で国際連合(国連)憲章が起草され、6月26日に調印された。同年10月24日国連憲章が発効し、国連が正式に発足した。
■ 国連を設立しようという考えは、第2次世界大戦の惨禍の中で生まれた。この戦争によって、数百万人の人々が犠牲となり、また数百万人の人々が避難を余儀なくされた。戦争を終わらせるために協力していた世界の指導者たちは、平和をもたらし、将来の戦争を防止するような国際的組織の必要性を強く感じていた。すべての国々が協力しなければ、平和は実現しないことを悟ったのだ。そして、生まれたのが国連だった。
■ 第1次世界大戦後の1919年にも、国連と同じく世界平和の維持を目的として国際連盟が設立されたが、残念ながらすべての国が国際連盟に加盟していたわけではない。たとえば、アメリカは最後まで国際連盟に加盟しなかった。そして、各国の協力を得られず、また、その決定を強制する権限のなかった国際連盟は失敗に終わった。その結果、紛争は一層激化し、第2次世界大戦が勃発した。国際連盟は、それ自体は失敗したが、世界的な機関への夢をもたらし、それが国連へとつながったとも考えられる。
■ 「United Nations」という言葉が初めて用いられたのは、1942年1月1日の「連合国共同宣言」においてであった。第2次世界大戦において、枢軸国と対立した国家連合の名称として使われていたが、フランクリン・ルーズベルト米大統領による提案で、戦後の国際的な平和組織の名称として用いることとなった。
■ 国連の本部は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市に置かれた。これは、決してアメリカ自身が望んだことではなかった。西ヨーロッパ諸国はヨーロッパに本部を置くことを望む一方で、多くの非ヨーロッパ国がアメリカに置くことに賛成したのだ。なぜなら、アメリカの加盟拒否がもたらした国際連盟の失敗をまた繰り返さないためにも、アメリカに本部を置くことがよいと考えたからである。
■ 公用語は、英語、フランス語、中国語、スペイン語、ロシア語、アラビア語の6言語である。公式会合での発言は最小限これらの公用語に翻訳され、また公式文書もこれらの公用語に翻訳される。
■ 国連は51ヵ国で発足したが、旧植民地等の独立により加盟国数は大幅に増加している。2005年12月現在、加盟国数は191ヵ国にのぼっており、世界中のほとんどすべての国が加盟している。なお、日本は、80番目の加盟国として、1956年12月18日に国連へと加盟した。
[外務省HPより参照]
§2 国連機関
■ 国連は、6つの主要機関(総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所、国連事務局)とその内部組織である補助機関からできている。また、国連と連携しながら独立した専門機関もある。専門機関は、政府間の協定によって設けられる各種の機関であり、主要機関とは非従属である。では、主要機関の主な働きについてみていきたい。
■ 総会は、全加盟国により構成され、各国が1票の表決権を持ち、国連の関与する全ての問題を討議する。国連の総会の評決では、重要問題に関しては3分の2以上、それ以外に関しては過半数で決する多数決制をとっている。ただし、総会の決議はあくまでも勧告までの効力しかなく、強制力や拘束力は持たない。これは、全会一致制をとったため機能不全に陥った国際連盟の反省を踏まえ、また国連からの過度の干渉を好まない各国に配慮した結果である。
■ 安全保障理事会は、アメリカ・イギリス・ロシア・フランス・中国の5常任理事国と、総会で選挙される10カ国の非常任理事国とで構成され、国際平和安全の維持を任務としている。常任理事国の5大国には拒否権が認められており、1カ国でもこの拒否権を行使すれば決議は成立しない。主要機関の中で、安全保障理事会の決議のみ、法的強制力・拘束力を持つ。
■ 経済社会理事会は、国連総会の選出する理事国の代表によって構成され、国際的な経済上・社会上・人権上の諸問題について研究・報告・提案・勧告を行う。具体的な活動については、国際労働機関(ILO)のような経済社会理事会と連携する外部の国際機関(専門機関)が行うことが多い。
■ 信託統治理事会は、信託統治に関する問題を処理する。信託統治とは、国連の監督の下に、その信託を受けた国(施政権者)が一定の領土(信託統治地域)に対して行う統治であるが、1994年に信託統治地域がすべて独立したのに伴い、活動を休止している。
■ 国際司法裁判所は、オランダのハーグにある常設の国際裁判所で、総会と安全保障理事会は、様々な法律問題について裁判所に勧告的意見を求めることができる。裁判所は加盟国間の紛争を処理し、加盟国はその判決に従う義務がある。
■ 国連事務局は、各国の利害を離れて中立的な立場から国連の運営を行う機関である。近年、財政難によりその規模は縮小されつつある。
§3 国連の目的及び活動
■ 国連憲章第1条は、国連の目的として以下のものを掲げている。
| (1) |
国際の平和及び安全を確保すること |
| (2) |
人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること |
| (3) |
経済的、社会的、文化的又は人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること |
| (4) |
これらの共通の目的の達成にあたって諸国の行動を調和するための中心となること |
■ 国連が、目的達成のために行う活動についていくつか例をあげていきたい。まず、重要な任務の一つとなるのが、「軍備管理と軍備縮小」である。1945年の国連憲章は、「世界の人間および経済資源の軍事転用の最小化」を保証するシステムを思い描いた。核兵器の存在が、軍備制限と軍縮の概念を一挙に強めたのだ。実際、国連総会の第1回会合では核問題について取り扱った。
■ 国連は、多国間の軍縮問題に取り組むためにいくつかのフォーラムを設立した。主なものは国連総会、そして国連の軍縮会議の委員会だった。 協議事項には、核実験の禁止、宇宙軍備制限、化学兵器を禁止する努力、核と従来の軍縮、核兵器自由地帯、軍事予算の縮小および国際的な安全保障を強化する手段の考察などが含まれる。
■ また、「平和維持」は国連の最も重要な任務であり、憲章の冒頭である第1条1において国連の目的として定められている。そこで行われたのが、国連平和維持活動(PKO)である。PKOとは、国連が受入国の同意を得て、加盟国の提供する部隊・人員を現地に派遣することである。主な活動内容は、停戦の監視、治安維持、選挙監視などである。
■ そもそも国連が安保理の決定によって平和の維持・回復のために軍事的措置を含む強制力を用いることは憲章第7章によって許可されている。しかし、冷戦において常任理事国である米ソが対立したため、安保理が全く機能せず、憲章第7章によって国連軍が結成されることはほとんどなかった。
■ そのため国連軍にかわる平和維持の手段として、国連平和維持軍が創設された。その最初の例となるのが、1956年に勃発した第2次中東戦争の停戦監視を目的とした国連緊急軍(UNEF)の派遣である。こうした兵士たちの貢献が認められ、国連平和維持軍は1988年のノーベル平和賞を受賞した。
■ 三つ目に、国際連合を設立した主要な目的の一つである「人権」に関わる活動があげられる。第二次世界大戦が残虐行為と虐殺を引き起こしたため、このような悲劇の再発防止は新しい国際機関の任務として当初から合意されていた。初期の目的は、人権侵害の申し立てを吟味し、行動を起こすための法的な枠組みを構築することだった。
■ 国連憲章は加盟国に「人権の普遍的な尊重及び遵守」を促し、これを達成するために「共同及び個別の行動」をとる義務を課している。世界人権宣言は、法的拘束力はないものの、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として」1948年に国連総会において採択された。国連総会は定期的に人権問題を取り上げており、経済社会理事会の下にある国連人権委員会は、主に調査と技術的な支援を通じて、人権の推進を直接担当する。また、国連人権高等弁務官は、国連の全ての人権に関する活動を担当する。
■ 国連とその下部機関は、世界人権宣言に銘記された原則を支持し、実施する中心的な存在である。その一つの例は、民主制へ移行する国々への国連による支援である。自由で公正な選挙の実施、司法制度の改善、憲法の草案作成、人権担当官の訓練、武装勢力から政党への移行等について、国連による技術的援助が世界における民主化に大いに貢献している。また国連では、女性が国内の政治・経済・社会活動に完全に関与する権利を支援するための議論も行っている。
■ この他にも、国連及び関連機関の活動は多岐に渡り、その存在は世界平和を実現する上でなくてはならないものと考えられている。
§4 まとめ
■ 上記の通り、国連は世界平和に向けて様々な方向からアプローチをし、最大限の努力をしているであろう。もちろん、ある程度の成果もあげている。しかし、国連が発足して半世紀以上がたとうとしているが、いまだに世界平和への道のりは長いように感じられてならない。
■ 現在の国連が抱える限界や課題は、まだまだ数多く残されており、世界中で国連改革に関する議論が行われている。世界規模の組織であるがゆえに、改革となると時間がかかるだろうが、時代の流れに伴って対応する柔軟性が国連にも必要とされているのかもしれない。第2章では、国連の現状を踏まえたうえで、どういった問題が取り上げられているのか検証していきたい。
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