近年日本の経済事情の長びく不況のなか、景気変動の嵐を受けて、経営にゆきづまり、あるいはリストラされるなど、子どもに私学での特色ある教育を受けさせることが困難な家庭が多く見られるようになってきました。「男は外で仕事、女は家を守る」という既成の概念では、子どもに豊かな教育機会を与えることが困難になるような事態が訪れてきたのです。女性といえども家の中で安穏としていては「家を守れる」時代ではなくなってきたのです。「女性の自立、社会進出」は以前から叫ばれてはいましたが、現在のこのような経済状態の中ではさらなる必要性を持ってより現実的に考えられなければならなくなってきました。
とはいえ、「女性の自立」は、まず精神的な面からなされなければなりません。柔軟な思考をもって旧態依然とした既成の概念から離れ、「精神的自立」をはかること、それがまず自立への第一歩と思われます。女性である前に一個の人間として、文字どおり、”自分の足で立ち歩む力”、その力を身につけさせることがこれからの女子教育の課題と考えます。
本校では、教育理念として「人の中なる人となれ」を掲げています。具体的には「生き方を考える」進路学習を中高六ヶ年を通して行っています。中学を自己実現の準備期、高校を自己表現への具体的な枠組みをする期間として、自分、自然、社会について深く学習し、社会の一員としての自分の「生き方」「在り方」を考え、将来の目標に向かって努力しています。どんな職業を目標とするかを、又どんな人生を送るかを早い時期から考えさせることにより、生徒たちの将来に対する意識を喚起させ、そしてその将来を社会の一員として確かなものにしたいと考えています。
次に女子校における女子教育について触れたいと思います。「男は男らしく」「女は女らしく」という意識は社会ばかりでなく、学校教育の中にもあるのではないかと思います。もちろん女性としての特性を磨くことはよいことですが、共学校では学校生活の中での役割分担などの際に、性差はないでしょうか。男女によって勉強への取り組ませ方に熱意の差はないでしょうか。日本人の心に定着してしまったこの「男は仕事、女は家庭」という意識は学校教育の中でも例外ではないのではないでしょうか。
女子高では、性差で役割分担をすることはできません。男子がいない分、女子生徒は全てを担わなければならず、甘えてしまうことはできないのです。勉強への取り組み方にも熱意にも性差はありません。そう考えてくると「女性の自立心の育成」には別学がより適しているように思われます。
アメリカで発行されている"Single-Sex Education"(Miller Bernal著)には、「共学校より single-sex
school のほうが教育効果が高い」ということが多くの調査統計により書かれています。日本とアメリカでは社会事情などの面で少しニュアンスが違うとは思いますが参考までにここに掲げてみます。
- 共学だと男子に比べ女子は先生からあまり注目されない。男子に、より多くの期待がかけられてしまい、女子は軽く見られてしまう。
- クラスの討論でも男子が議論を支配してしまい、女子は軽く見られる傾向がある。そのためか女子は自信が減少し、発言が少なく、「顔のない群れ」などと呼ばれてしまうが、女子校では女子は男子からからかわれる心配がないので安心して発言でき、発言数もずっと多い。(発言の量が問われるのは、アメリカの教育では自分の意見を発表することが重要視されているからだと思います)
- 女性の学問に対する態度やキャンパスの中でのリーダーシップ、また自信の程度は single-sex
school のほうが高い。
- 1986年に実施されたカリフォルニアの75校、1800人の女子を対象にした調査では、 single-sex
school のほうが研究の達成度が高い。特に女子校では効果的である。また、上級生になればなるほどその効果には差がでてくる。
- 共学校に比べると女子校のほうが性に対して昔の慣習を引きずっていないし、理系に進む生徒も多いし、より高い学位をとる生徒が多い。
- single-sex education の生徒のほうが学校生活に対してまじめである。300校以上の大学における20万人以上の生徒の調査(1977年)によると、事実上、大学生活のどんな面においても、友達関係も、知的好奇心も高い。また女子の、教室における発言もずっと多い。
- 女子校ではより真剣な、程度の高い研究が達成され、共学校では楽しさと興奮が得られる。
- 共学校では女性は女性より男性に多く話しかけ、男性がいるだけで、女性同士の行動さえも男性がいないときとは違ってくる
女子校としての利点を生かし、生徒たちが既成の概念にとらわれない柔軟な思考を持てるよう、また人間、女性、社会の一員として、主体的に生きる力を育み自己実現できるように、より進路学習に真摯に取り組んでまいりたいと思います。 |