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| 私学の先生方の教育コラム15 |
| 国際共通シラバス作製の意義 中村学園三陽高等学校教諭 石原 忍先生 |
| 3月20日(火)午前10時、本校教頭、古川敏男氏を団長とする中村学園三陽高等学校訪問団はニュージーランド、オークランド市に着いた。まず、市内至る所、緑に覆われていることに感心する。風光明媚といった景観上の美しさもさることながら、ヒートアイランドに代表される、現代都市問題への対応といった意味でも極めて優れたものである。 しかし、空港から一歩足を踏み出し、外に出た瞬間、私はなんともいえない気分になった。「何なんだ、この日差しの強さは。」暑くもあった。しかし、それ以上に日差しが肌を刺すようなのなのだ。南半球にあるニュージ−ランドの今の気候は、日本でいえば、9月 20日、そしてオークランドの緯度は日本の北陸付近なのである。なのに、この日差し。 「なるほど、確かにオゾン層は南半球で薄くなっている。そして、その原因を作ったのは北半球に住む、それも、先進国の私達・・・。」私は、改めてニュージーランドに来て、現地の教員と話せる機会を持つことが出来てよかったと思った。そして、私達の目指す国際共通シラバスを作る意義についての確信を得た。 前置きが長くなったが、私がここに来たのは、オークランド・グラマー・スクール(以下A.G.S.と略記)と中村学園三陽高等学校が、昨年度結んだ提携事項に基づき、国際共通シラバスの作製内容の検討を現場の教員同士で行う、いわば“実務レベル”での交渉を行うためである。本校とA.G.S.の関係、あるいは目指す教育内容については、すでにこのホームページにおいて本間氏の紹介(私立中高一貫校研究〜21世紀型私学を求めて〜中村三陽とニュージーランド教育事情 (2000年5月26日))に詳しいのでそちらを参照していただきたいが、浅学非才な私のような者でも、ソビエト連邦の崩壊によって東西問題に一応の終止符が打たれた今、次に問題になるのは南北問題であり、またイデオロギーの対立が終焉を向かえれば、これまで顕わになることが少なかった民族の対立が再び大きな問題になってくることぐらいは容易に予想がつく。 そのような状況下、20世紀型のパラダイムを超克しようとする時、北半球に位置し、アジアの一員でありながら、西側のメンバーとしての行動を求められることの多い日本と、南半球に位置し、西側の文化圏にありながら、アジアの国々と強い絆を持とうとするニュージーランド、この何から何まで対照的でありながら、しかも互いに相補性を有する二国が語り合うとき、なんらかの突破口Breakthrough”があるのではないかというのは、きわめて刺激的な仮説である。 今回、到着早々、私が遭遇したオゾン層破壊の問題も、北半球にいる私達にとってはまだ単なる知識だが、南半球の人たちにとっては自分達の生存を脅かす切実な問題なのだ。また、逆に今、我々が直面しているヒートアイランド現象は、当分オークランドでは起こりそうも無い。ただ、互いが苦しんでいるその思いを共有できなければ、互いの環境問題は解決できない。そのことがわかっただけでも今回の訪問は価値があったといえるのではないかとの思いを胸に、私はA.G.S.を訪問した。 A.G.S.において、私は、理科主任であるStevens Lorenz氏の知遇を得た。氏は明るく情熱的であり、しかもアカデミックな雰囲気も兼ね備えた、いわゆる“いい先生”であり、その誠実な言動とあいまって素晴らしい人物であるとの印象を強く持った。きっと生徒からの支持も絶大であろう。(レセプションパーティで教頭のVella氏に尋ねたところ、まさにそうであった。) まず、私達は互いの教科書を交換し合い、内容の検討を行った。いくつかの相違点はあるものの克服可能ということで私達は一致点を見た。ただし、彼らがこれから進めようとしているA.I.C.E.プログラムにおいては、さすがにケンブリッジ大学に直結するだけの物であり、レベルが高く、英語を“mother tongue”としない人間にとっては、なかなかハードな物であることは間違いないだろう。(だからこそ挑戦のし甲斐があるのだが。) ただ、若干逡巡したように見えたのだろう、ローレンツ氏は最後にこんな言葉を私にくれた。(ただし、私の英語力は大したものではないので、“大意”ということでご理解いただきたい。)「ミスター・イシハラ、心配要りません。私は、あなたの国の教科書を見ました。私は日本語がわからない。ただ、化学式を見れば何が書いてあるのかはわかる。私達と変わりない。それは、扱うものが同じ自然である以上、当たり前です。やれますよ。私達もA.I.C.E.においては、始めたばかりであり、絶えず改良を重ねている段階なのです。たとえば、見てお分かりのとおり、このテキストは演習問題が少なすぎる。だから、私がプリントを作って補強しているのが現状なのです。日本に帰ったらE−メールを下さい。語り合いましょう。」この言葉を聞いたとき、私は洋の東西を越えた理科の教員同士としての一体感を強く感じた。 これから私達は国際シラバスの作製に入る。その人間が世界のどこで学ぼうと、確かな学力と世界的な視野で科学を考えることの出来る能力を育成するシラバスを。やれるのだろうか。いや、やらねばならないのだろう。今、この世界の到る所に閉塞感が漂っている。特に日本はそうだ。この閉ざされた状況に風穴を開けること。私達の取組みはささやかな物かもしれないが、アリの一穴からでも巨大なダムは崩れ落ちる。そんな”Breakthrough”にこの取組みがなることを信じて。 |
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