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私学の先生方の教育コラム26
「進路学習研究会報 第5号」より 
2002年対応と生徒確保
佼成学園 元教頭 徳矢 進 先生
2002年対応と生徒確保
 中学校の新学習指導要領実施を来年にひかえ私立学校の対応も5日制・6日制、現行教育課程型・新教育課程型・併用型などさまざまではあるがほぼ出そろい、私学への期待に応えようとしている。また各学校は生徒確保のために魅力ある新設入試を設けるなど入試日程・科目の変更を例年のように行っている。
 景気の先行きが不透明にもかかわらず、首都圏私立中学の応募数が増加する予想もあるが、三大模試(四谷大塚、日能研、首都圏模試センター)によれば、男子が増加し、女子が減少するようである(「月刊私立中学受験」11月号)。にもかかわらず、千葉(麗澤中)と埼玉(城北埼玉中)で新設校があり注目されている。
 当研究所の調査で、東京の私立中学の'01年の入試で応募数が募集数に満たなかった学校が14校(男子3、女子10、共学1)、受験数が募集数に満たない学校が25校(男子2、女子19、共学4)あり、計39校が中学の生徒確保に大苦戦を強いられていることが判明した(非公表の学校3校を除く)。その大半が女子校である。来春、女子の応募数が予想通り減少するとなればさらに苦戦する学校が増えるであろう。
 ところが、「私立といっても文部科学省に守られているから大丈夫」、「我校は一流校で伝統もあるから心配ない」という方がいるかもしれない。確かに補助金(多少減額されても)があり、一流校があす三流校になっても、学校の名前はどのような形にしろ残るかも知れない。しかし教職員の雇用が守られる保証はどこにもない。
 ここ3年余りで在籍数が3百名も減少したK女子校のように、近い将来、中・高ともに生徒を確保できず在籍数が年々減少し、教職員が無用の長物になる学校が増えるであろう。
 昔から学校の教員ほど潰しが利かないものはないといわれている。今からでも遅くはなく、知名度の低い学校ほど改造しなければならない。
 これには校長の指導力は欠かせないが、教職員の意思統一のもとで進取的に取り組まなければできないことである。
 その学校を変身させる10のポイントを『危ない大学・消える大学』島野清志著(エール出版社)を参考にして私立中高校用に挙げてみたいと思う。

私立学校を変身させる10の改革プラン
(1) 特待生制度で優れた生徒を集める

 最近、受験雑誌の学校広告には、『国公立大・難関私大を目指す』という大学受験を強調する学校もあるが、『人間形成=人間教育と学力形成』、『豊かな人間の育成』、『人間らしく生きる』、『生きる力を育てる』、『心を育てる』など人間教育を訴えるものが多い。学校教育には学力形成と人間形成は車の両輪で欠かせないが、人間形成の達成度は数値で表すことができないために、すばらしい教育であっても外部には分かりにくい。一方学力形成の一端である大学進学実績は数値で示せるので分かりやすい。私立中高に在籍する生徒はほぼ全員が可能な限り大学に進学したい希望を抱いているだろう。
 しかし、難関大学合格の実績を上げるのは容易ではないが、一人でも多くの優秀な生徒を入学させ、きめ細かい指導により可能となる。そのためには学費無料などの条件で優秀な生徒を入学させることである。

(2) 個性を生かす進路学習の徹底

 東大に1名合格させれば学校は10年はもつと言われた時代は終わった。すべての学校が東大など難関大学を目指すのは無理なはなしであり、成績が優秀であるから東大を受験するというのも、"当大卒がリストラされる時代"(「教育の論点」文芸春秋)には考え直さなければならない。
 これからは、福岡県立城南高校の『城南ドリカムプラン』にみられるような「個性を生かす教育」を実現し、自分の興味や関心をもとに、生徒自身が自分の将来設計をし、その実現に向けて自分の進むべき道を模索する「進路指導」から「進路学習」への転換が必要である(「高校が生まれ変わる」中井浩一著中央公論新社参照)。

(3) 社会人経験のある教師の採用

 大学を卒業してすぐに教職につき、長期間学校という狭いエリアで暮らしていると実社会と遊離し、複眼的にものが見られなくなり、組織がよどんでしまう。組織を活性化させるために社会人経験のある人を採用して外の風を入れることが大切である。優秀な人でも企業からリストラされる今こそ有能な社会人経験者が採用できる。

(4) 生徒による授業評価制度の導入

 教師は生徒を評価するが他者特に生徒から評価を受けることはなかった。「受験で上位の部類に入る私立に入学しましたが、高額な授業料を払っているにもかかわらず、やる気のない先生ばかりで当然のように遅れてきます。もちろん授業は面白くなく、生徒も内職するのが当たり前。何のために学校に行っているのか分からなくなります。『こんなハズじゃなかった』と考えると涙も止まりません。」(2001・10・22 朝日新聞)
 このような私立学校をなくすためにも「授業評価」の実施が必要である。また学力の低い学校ほど教師は勉強しなくても済んでしまう。教師が自己研修し、意識改革をせざるをえないように生徒による授業評価制を導入する。

(5) 進路担当者はもっと勉強して「進路に強い学校」に

 進路担当者は、進学先(大学・短大・専門学校)の内容について精通していなければならない。担当者は各大学などを丹念に調べて、強み・弱みや卒業後のどの方面の就職に強いかなどを知り、生徒の相談にできるだけ応えられるようにしておかねばならない。これは受験のための教科指導とは異なる。

(6) キャリアカウンセラーを置く

 最近「心のケア」のためのカウンセラーを置いている学校が多いが、都立晴海総合高校のように職業に関するカウンセラーを置いている私立学校は皆無である。大学等の進学が将来の職業につながる進路学習をより効果的にするためにはキャリアカウンセラーが必要である。実社会の経験ある有能な人材をスカウトすればよい。正規の職員でなくともよい。

(7) 専門家・卒業生などによる講演

 大学受験対策、大学での勉強・研究、大学卒業後の職業など専門家を招いて講演をしてもらう。招く際にはただ話をして終わりではなく、生徒にとって役立つ資料を提供してもらうことが条件となる。卒業生や在校生の保護者の中に専門家がおれば、「登録制度」を設けて活用するのがよいであろう。

(8) 生徒からアイデアを募って学校活性化を

 三流校、名も知られない学校というイメージを最も辛く感じているのは生徒だろう。最も切実な思いをしている生徒から現状打破のアイデアを募ると思いがけない妙案が出るかもしれない。

(9) 何か一つ強みを持った学校に

 高校の運動部が全国大会出場の常連であることもある意味では一つの強みであるが、これだけでは中学の生徒確保に結びつかない。大学進学に関しては、何か特定の分野(例えば、医療系・看護福祉系・語学系など)に多く進学することや、人間教育では、最近特に顕著だといわれている「指示待ち人間」を輩出しないこと、「○○校の生徒は社会常識があり実にすばらしい」と話題になるほどの躾教育を行っていることなどの強みを持つのである。東大卒でも「一親等という言葉を聞いたことがない」と恥もなく言うようでは困るのである(某テレビ番組でのこと)。

(10) あらゆる機会に学校をPRする

 まめに学校説明会、作品(演劇・音楽・絵画など)発表会、授業見学会を催し、受験雑誌などに取り上げてもらう。時には執拗と思われるくらいまで影響あるところに情報を流し続ける。大切なのは「何でも聞いてください。できる限りお答えします」の姿勢である。
 最近はどのような医者がいるかをホームページで公開し、さまざまな情報を伝えている病院が増えているという。学校も受験生・保護者が最も知りたいと願う教師の姿(特徴・趣味・研究論文・研修内容など)をホームページに載せてはどうだろう。


新たな提案―進学指導重点中学校―
 高校の定員確保には問題ないが、中学の定員確保がほとんどできていない学校にとっては、今後も明るい見通しがあるとは思えない。このような学校は、中高6か年一貫教育の一部方向転換を図るという英断も必要だろう。公立中学の改革がそれほど期待できないが、都立高校の改革が行われている今がチャンスである。

 中学3年卒業後は、国立・都立進学重点校(筑波大付属・筑波大付属駒場・東京学芸大付属・日比谷・戸山・西・八王子東)に進学させる中学校とする。

  1. 中学の特待制度を設け、10名は確保する。
  2. 他高校進学を重視した中学3年間のカリキュラムを編成する。
  3. 主要5教科には指導力のある教師を配置する。
  4. 課外補習を充実させる。
  5. 内部進学(併設高校への進学)を保証する。
  6. その他、他高校進学指導の充実に必要な措置を講じる。

 これは、景気不透明な現在、私立一貫校に入れたいが、6か年の学費を払い続ける心配と公立中学校の学力低下への不安がある受験生・保護者の要望に応えることになり、中学の応募数を増加させる方策になる。
 高校から大学への進学実績がそれほど期待できない中学校の生き残り策として考えてもよいのではなかろうか。


編集後記

 第5号は前回の「学力形成」に続き「人間形成」を扱う予定でしたが、2002年の新学習指導要領実施に伴い、学力低下の不安から私学への期待があるものの、昨今の社会情勢から生徒確保に困難をきたす学校が増えるのではと思われます。それらの学校の内部改革の参考になればと思い「改革」を扱いました。(T.S)。

2001年10月31日寄稿



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