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私学の先生方の教育コラム23
「進路学習研究会報 第2号」より 
自分探しの進路学習
佼成学園 元教頭 徳矢 進 先生
 従来の「進路指導」から「進路学習」への転換は、"自分探し(自己発見)"をしていき、"将来の夢を持つ"ことにある。これからの中高校生は、先行き不透明な社会に不安を抱くのではなく、21世紀を担う自信と誇りが湧出する自分探しの旅に出発しなければならない。この自分探しの旅に出る準備と旅の途中における軌道修正をする役目の一端を担うのが学校である。そのために学校は、自分探しの進路学習に適した教育環境を整える必要がある。買い手市場となっている中学受験においては、この教育環境の良し悪しが学校選びの一つのポイントになるであろう。

自分探しの進路学習

 進路学習に適した教育環境とは

  (1)教師集団の意識改革
 教育の効果を上げるに最も重視されるのは、校舎などの設備面ではなく生徒と直接かかわる教師である。その教師集団が進路についての見方・考え方を変えて、教師の立場からの「指導」ではなく、生徒の立場からの「学習」へと転換しなければならない。文部省が「個性を生かす進路指導を目ざして−生徒ひとりひとりの夢と希望を育てるために−」(平成5年)という冊子においてもその内容は従来の指導という概念から脱しきれていない。これでは教師の意識改革は望めず、「指導」からは「個性を生かす」ことは出来ない。指導という言葉を使う限りは、「教える」から「学ぶ」へと変わることも出来ず、「学ぶ=学習する」ことから培われる「自立」と「自己責任」や「問題解決力」ある生徒は育ってこない。したがって、教師集団の意識がどこまで変われるかが問われるのである。

  (2)組織と設備等の充実
 「教える」から「学ぶ」への意識改革ができれば、次がそれを実践する組織づくりとなる。一例として従来の進路指導部を次のように再編成してみる。


 まず、指導という言葉を使わず「進路部」という名称にする。進路部の役割分担を教科学習・進路学習・進路相談の三部門とする。教科学習は、中学入学後から高校1年までの4年間の学習習慣・学習方法に重点を置く。進路学習は、高校1年までの4年間、将来につながる夢と希望を育む学習となる。進路相談は、主として進学先とその準備学習の相談が中心となる。この三部門は独立したものではなく、相互に関連してこそ効果が発揮されることは言うまでもない。進路部の役割はあくまでも生徒の立場からの学習であり相談なのである。
 次に設備であるが、教科指導においては教科学習室を設け、生徒は自由に学習し、放課後の質問などはここで行う。職員室の近くに設けることが望ましい。校舎改築の際にこのような学習室を職員室に隣接して設置している学校があると聞いている。
 進路学習に関しては、特に専用の部屋を必要とせず、進路相談室との共有とし、進路室に職業に関する資料を充実させることが大切である。進路学習は施設面よりはカリキュラムとのかかわりが大きいのである。
 進路相談に関しても進路に関する資料が充実した専用の部屋が必要である。各学校の現存の進路指導室を進路相談室とし、大学受験校選定や受験対策が主であるためにそれに適する人材を配置しなければならない。大学・短大の学部学科、専門学校の内容や資格取得の有無、合格難易度などに精通している相談員(教師)はもちろんであるが、試験の傾向と対策に応えられる教科の相談員(教師)がいなければならない。関西の某私立高校では、毎年生徒が多数受験する大学の出題傾向を十分会得した教師を擁していると聞いている。予備校に頼らずに、自前で優秀な人材を育成し、生徒の相談に応じるのが私学の努めである。

  (3)カリキュラム
 カリキュラムの行き着く先は人間教育であると言われるほど、カリキュラムは学力形成だけでなく人間形成において重要な役割を果たすのである。カリキュラムの編成は単に配当時間のみではなく、教育内容の編成でもあり教育内容こそ最も大切なのである。したがってカリキュラム編成に当たって、進路学習をどのように位置付け、中学1年より行うためには学年に応じた学習内容をどのように吟味しどのようなシラバスを作成するかで進路学習に当てる時間配当が変わってくる。
 進路学習の内容とシラバスが決まれば、次は配当時間である。総合的学習の時間を当てるかLHRの時間を利用するかなどでカリキュラム全体における進路学習時間の位置付けが決まってくる。

 進路学習の効果を上げるために
 進路学習はいずれかの教科に属するものではないために教師たちが学び育ち合う連帯の構築が欠かせない。教科を超えて交流して進路学習に関する見識を育てなければならない。そのためには、教師たちを分断し孤立させている教室の壁と教科の壁を砕かなければならない。学校では、教科組織、学年組織、校務分掌組織などによって、教師たちは分断され、独自の王国を作っており、お互いの専門領域に口出しすることも、お互いの職務の責任領域に口出しすることも不文律で禁じられている(佐藤学著「教育改革をデザインする」PP.130〜132参照)
 進路学習のような教科組織を超えての学習においては、このような壁を打ち破った学年・教科間の連携が重要である。
 さらにこれに加えて、地域住民や親たちの「学習参加」が有効な方法である。親や地域住民が教師・生徒と協同で学習に参加し、その実践を通して学び合うのである。
 2002年に向けての改革を行う際に、保護者や地域住民が参加できる「特別講師登録制度」を設けては如何だろうか。
 これが進路学習における自分探しの旅をより楽しく効果的なものにするのである。

都立高校学校説明会報告
9月3日(日)の進路指導研究会(代表幹事平松享)主催の都立高校学校説明会(参加校:都立日比谷・戸山・新宿・国立・八王子東)および10日(日)の東京私塾協同組合(理事長岡田保雄)主催の説明会(参加校:都立科学技術・九段・駒場・新宿山吹・墨田川・晴海総合・農芸)に出席した。出席された各校の校長や教頭から都立の生き残りにかけての改革に取り組む情熱をひしひしと感じたので、その要点をお知らせします。

 国立・戸山・八王子東・日比谷高校の場合
 生き残るためには、大学進学実績特に国公立大学への進学実績を上げることであると各校とも言う。各校の要点は次の通りである。
  1.国立高校(普通科)
 進学指導の徹底、国公立大学受験の推進を軸に、理数系のカリキュラムの編成、徹底した授業の充実、授業のオープン化、大学入学後に伸びる授業を行っている。教育は教師につきるので、教材研究に力を入れている(特に英語)。また家庭・OB・大学との連携と相互の協力に力を注いでいる。
 挑戦は公立私立共であり、企業的感覚でやらねばならないのは公立も同じである。意識改革しないと生き残れない。日本人の真のエリートを育てなければならない。私学とは対等であってよい。
 学校運営の根幹にかかわることは校長が決定する。

  2.戸山高校(普通科)
 進学実績を上げられない学校は生き残れないという考えのもとに、出口を重要視している。キャッチフレーズは"知の森 戸山へ"である。授業は50分授業とし、単位数の減少対策として選択制の導入と週29単位+アルファを検討中である。大学進学については現在のカリキュラムを生かし、文理分けはしない。部活動重視は続ける。
 校舎改築後の2003年が新しいスタートとなる。自主自立がモットーであり、課外講習も生徒の自主性で実施している。
 伝統的に進路部がなかったが設置した。都からのさらなるドラスティックな改革への対応も考えている。

  3.八王子東高校(普通科)
 平等主義の弊害を感じている。1〜2年生には選択制を導入せず、3年生には入試科目だけの学習をさせず、最後までやらせる。夏期講習は3年生対象で30講座延べ1200名が参加した。
 経営戦略としては、教員の意識を高め、力を発揮せずサラリーマン化している教員を校長が強引に引っ張っていく。嫌われてもやるしかない。
 進学実績しか見えないので、中身の見える学校にしたい。1日体験入学を実施した。
 都立は経済的に恵まれない高学力の生徒を育てるべきである。

  4.日比谷高校(普通科)
 日比谷は過去の栄光だけで生きてきた。昨年初めての公立中学訪問で、中学側からの苦情に教員はショックを受けた。校長も教員もよいことしか言わないので、在校生に学校の様子を聞いて欲しいと言っている。
 夏期講習もやるようになり、教員には予備校のビデオを見せることもしている。
 選択制は採用せず、日比谷の生きる道を示していく。45分7時間授業とし、現在よりも時間増となる。土曜日は学校を開放し、様々な講座を開講する。
 公立中学校との連携よりも、小学校3〜4年生に都立の努力を知らせるべきである。
 私立は光の部分だけが見え、影が消されている。都立は過去に戻らず、二極化が起こる。都立と私立はやり合ってばかりいては駄目であり、規制を外してもらいたい。


 墨田川・新宿高校の場合
 この両校に、国分寺高校を加えた3校が「進学型単位制高校」である。墨田川高校がその第一号として2000年4月スタートした。

  1.墨田川高校(進学型単位制)
 今年の4月に「進学型単位制」としてスタートした。都立高校に関するアンケートによると、"浪人しないと大学に入れない学校"との評価であり、かつては進学重視という言葉さえ禁句であった。骨太の進学校とし、特別の進学コースは作らないが、東大に現役合格する学校にする。
 短期的にはカリキュラムで勝負し、長期的には本当に学問する意欲を引き出す。来年度から7時間授業で、国・数・英・理は1クラス2分割授業とする。
 選択科目は[基礎系]を全員共通科目とし、[演習系]は大学進学用で、1年生より選択履修させ、テキストは受験問題集を使用し、受験指導を行う。[探求教育系]は教員が持っている得意なものを実施する。

  2.新宿高校(進学型単位制)
 新宿高校をつぶすか残すかの議論を職員会議で行った。学校を愛している教員は1人はいるはずであり、その教員を引き出し下準備をした上で、委員会を発足させた。
 平成15年4月に新宿独自の学校としてスタートする。クラス数在籍数は24学級960名(男女半々)とする。いずれ中高一貫校が主流となり、そのためにも24学級960名が必要と考えた。それまでの募集は停止しない。
 授業は週30時間+LHR+総合学習とし、LHRと総合学習は7時間目に置き、土曜日は補習授業。授業公開も実施する。
 国公立大学に半分入学させるために、文系理系のパターンとする。ただ大学に入れるだけでは駄目で、文武両道を重視する。
 他校がやらないことをやらないと生き残れない。これは教員の意識改革にもなる。
 同窓会も進学重視に賛成であり、改革は新宿から始まっている。

 駒場・九段高校の場合
 この両校は、普通科以外の学科もしくはコース制のある学校である。

  1.駒場高校(普通科・保健体育科)
 普通科・保健体育科・芸術科でスタートしたが、1972年(昭和47年)に芸術科が独立し、芸術高校となった。
 普通科7クラス、保健体育科1クラスである。現在の在籍は1003名。
 大学実績は、国公立大合格は現浪含めて31名であり、希望者には講習を実施している。部活動が盛んで、約900名が参加している。
 保健体育科の入試は厳しく、推薦8名で102名が応募し、12.75倍、一般でも32名中105名の応募で3.28倍であった。推薦の合格基準は明確には言えないが、オール4ならOKかな?という。(実際は、内申38、特記事項Aで不合格になり、一般入試で合格した。)

  2.九段高校(コース制)
 コース制になって9年目である。男子3割、女子7割である。受験型のコース制で普通科の範囲で得意な科目を学ぶ。
 中学生がコースを決めるのが難しいと思うが、対処できるカリキュラムを作成している。
 募集は、[語学コース・人文コース]は5クラス198名で国社英を重視し、評定4と5を1.5倍する。[自然科学コース]は2クラス78名で数理英を重視し、評定4と5を1.5倍する。
 語学・人文のコースは国英で、自然科学コースは数理で少人数授業を実施。ゼミ形式講習が多く、現役で57%の合格である。選択科目は、受験に必要ならば1名でも開講している。
 勝浦の臨海学校では1年生の遠泳は強制参加である。
 学校説明会には毎回約400〜500名が参加している。


 晴海総合・科学技術・新宿山吹高校の場合
 この3校は個性派高校と言える。

  1.晴海総合高校(単位制総合学科)
 平成8年京橋高校と京橋商業高校を統合し都立最初の単位制総合学科高校として創立された。18学級で男子1女子3の割合である(40名中男子10名女子30名)。
 生徒数720名で教職員122名、その内専任教育職は73名で生徒9.86名に一人の割合である。
 特色の一つは、21名の市民講師とキャリアカウンセラーが1名常勤していることである。もう一つは、すべての進路希望に応じる教育課程である("自分で作ろう!自分の時間割")。
 2年次より系統別選択をする。
 従来の商業高校の特色を生かす「情報システム系列・国際ビジネス系列」、卒業後専門学校へ進学希望の生徒が多い「語学コミュニケーション系列・芸術文化系列」、理系の大学へ進学する「自然科学系列」、文系の大学へ進学する「社会経済系列」の6系列があり、2年次3年次の選択科目には、各系列毎にユニークな科目を置いている。1年次には全員「産業社会と人間」という科目を週2時間学ばねばならない。この科目はキャリアガイダンスであり、2年次に進む系列を決める学習である。
 進路状況は、四大60%、短大10%、専門学校25%、就職4%である。
 自主自立がモットーであり、ノーチャイム制(放送無し)である。制服あり、茶髪・携帯電話禁止、靴は1足制。
 自慢出来るのは生徒である。今年初めてエレベーターに落書きがあったが、生徒会がすぐに対応した。

  2.科学技術高校(科学技術科)
 2001年4月に「理工系進学をめざす新しいタイプの高校」としてスタートする。
 普通科の理系進学コースとも、工業高校とも異なり、高校段階で学び大学へ繋げる高校である。研究者・技術者を育てる第一段階とし、卒業後は理工系・医薬系の大学へ進学させることを設置目的としている。
 理論を学ぶだけでなく、それを裏付ける実験・実習が充実している。英数理で習熟度別授業を実施する。
 この学校のスタートに当たっては、開設時の精神を継続できる教師が必要である。

  3.新宿山吹高校(定時制・通信制)
 平成3年創立。従来の定時制6校が同じ学校にあると理解されたい。
    定時制第一部普通化(8:45〜12:30)
    定時制第二部普通化・情報科(10:45〜3:00)
    定時制第三部普通化(1:15〜5:00)
    定時制第四部普通化・情報科(5:25〜9:20)
 1日4時間、105分授業で、土曜日は通信制スクーリングのため定時制の授業はない。
 無学年制でクラス毎の授業はない。
自分で時間割を作る。従って科目数も多く、他の都立高校より2倍の予算がある。必履修科目を修得しなくても80単位あれば卒業できる。
 入学試験の比率は学力9、内申1であり、オール1でも学力があれば合格する。入学生の三分の二は不登校生である。学校が好きでないが勉強が嫌いでない生徒が集まる学校である。中退者(編入学)も積極的に受け入れているが、転入学は認めない。1学年相当の倍率が3倍もあるので、2学年相当の定員を減らしてその分1学年相当を増やす予定である。本校は過去を問わないので、他の高校に行けない不登校生も希望を捨てないで受験してほしい。学校訪問は常時受け付けている。
 この学校を退学する生徒は約1割りの80名である。大検に合格しての退学は50名位おり、不登校が治らない生徒もいる。

 農芸高校の場合
 農業系都立高校は6校あり、農芸高校には普通科は面白くないと感じ、何か取り組めるものを求めている生徒の入学が多い。普通科の困難校より生徒の質がよい。応募者は3倍を超えている。
 専門高校からも大学に進学出来ることを強調し、補習も実施している。
 11月には公開授業日を設定している。

 都立高校の学力検査問題の自校作成
 東京都教育委員会は9月6日、来年度入試から都立高校が、独自の入試問題を出すことを認め、日比谷高校がその第一号となると発表した。(7日朝日新聞)。
 進学型単位制高校としてスタートする新宿高校も平成15年度入試から独自の問題を作成すると言っている。
 学区制の撤廃が進むにつれて、生き残りをかけて、アドミッションポリシーを明確にするためにも独自の入試問題を作成する学校が増えてくるだろう。

 都立高校改革へ私立はどう対応するか
 大学進学型高校の復活や晴海総合高校・科学技術高校・チャレンジスクール(桐ヶ丘高校など)など特色ある異なる高校への統廃合による改革と文部省が進める公立中高一貫校の出現に対して私立校はその対応が問われている。しかし2002年を千載一隅のチャンスと捉えて私学教育とは何かを見直す必要がある。
 今回の説明会でのポイントは、大学進学型への充実である。これにより、中高一貫教育と大学進学を売りにしている私立校、特に中堅校で国公立・早慶上智に現役合格の実績を上げられないところは大きな影響を受けるのではないのだろうか。そのために、(1)優秀な教員の確保(教員の入れ替え)、(2)週34授業時間の確保、(3)文部省に追従しないカリキュラム編成、(4)学力形成+人間形成の充実、(5)校長・教頭の指導力と説明責任、(6)情報公開などが求められる。
 どんな組織もその指導者とその構成員次第で隆盛も衰退も起こる。学校も例外ではなく、どのような改革案を出しても、教師の積極的な支持と参画がなければ成功しないだろう。従って(1)(5)が最も大切である。
 これからの私学教育は、建学の精神に基づいた人間教育を21世紀のニーズに合うように如何に具現化するかである。単に大学進学を売りにするだけでは生き残れない私学が出てくるかもしれない。

編集後記
都立高校の改革も教員次第だと思われます。私学の頑張りに期待したいと思います。
2001年6月28日寄稿



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