NTS教育研究所NTS教育研究所
ホーム教育を考えよう:私学の先生方の教育コラム


私学の先生方の教育コラム30
「エンジン01教育キックオフ会」レポート
城西大学附属城西中学・高等学校 田中彩子先生
§1 要約&感想
「エンジン01」教育委員会のキックオフとして開催された今回のオープンディスカッションは、「中学の(公立学校という意味での)公教育をどう変えるか」、をテーマに行われた。
藤原和博のテンポ良い司会のもと、著名人と教育関係者がパネリストとなり、1分も 目が離せない、実にエキサイティングな会であった。テーマを限定したにもかかわらず、実にさまざまな問題について意見が出されたのは、「教育問題は扱う範囲が多岐にわたる」ということの証明だろうか。
発言力行動力のある有名人が多く参加しながら、藤原氏がパイプ役となってきちんと現場とも結びついているところにこの会の強みがあると思った。今回出された問題意識を、どう取り上げどう進めていくのか。
エンジン01らしさが出されるのはこれからであると思う。この日集まった観客を上手く取り込んで、現場や生徒と乖離しない議論やアウトプットが出されることを期待する。
教育関係者としては「さまざまな社会問題の一つ」として教育を遠巻きにとらえるのではなく、じっくり腰をすえて教育と向き合い、新しい切り口で「子どものための」教育を作って欲しい(特に教育外の委員達に)と思った。
§2 レポート
エンジン01文化戦略会議
〜教育を「評論」からではなく「現場」から変える!〜
オープンディスカッション
2002年5月15日(水)
銀座泰明小学校講堂 18:00〜
会場はちょうど格闘技のリングのよう。中心にパネリストが机を並べ、それをぐるっと囲むように配置されたパイプいすに観客が座る。会場は溢れ出しそうなほど、満員。
藤原和博さんが全体の司会進行役を務め、パネルディスカッションながら非常にテンポよく、1分たりとも参加者を飽きさせない。おまけに随所に6月に出版する本『中学改造』の宣伝もしてしまう、さすが元スーパー営業マン。
三枝成彰幹事長による開会の言葉、林真理子戦略会議教育委員会長による「教育委員会について」がおわり、いよいよディスカッション。
今日のテーマは、【中学の公教育をどう変えるか、中学は公教育である必要があるか。義務教育である必要があるのか?】
まず櫻井よしこ委員が「現場からの教育改革「中学改造」について」を切り口に問題提起を行った。その論点は3つ。
  1. 人生と勉強がバラバラになっていること
    (日本の中学生は今勉強していることが夢の実現に関係ない、論理的な思考に役立つとも思っていない)
  2. 先生の言うことをきかなくてもいい、となってしまったこと。
  3. 楽しければいいと考えていること
    世界の中学生と比較した調査結果を踏まえて、日本の中学生の特異な3点を問題提起としてあげた。
それを受けて、パネリスト達が自己紹介を兼ねて順に発言した。
○千葉俊治足立14中校長は、「親の意識の問題もある」
外国の学校は想像以上に教員が厳しい。シドニーの日本人学校で教えていたが、国際学級では何度言っても聞かない子に対してピシッとお尻をたたいていた。学校の先生の話を良く聞け、と子どもに始終言っている親はアメリカでは60%、日本は10%。
○谷垣十四雄泰明小学校長は、「授業が楽しくない、ついていけない。そして長時間の拘束が、いじめや暴力に発展していくのではないか。子どもはなんのために勉強しているのか分からない」
○斎藤は、「公立批判がでているが、私学もまた公教育を担っているという認識。(憲法89条などの問題もあり難しいところがあるが)私学もさまざまな規制や補助金の下で運営されている」
藤原氏の指名で会場からの声も出される。
○漆紫穂子品川女子学院副校長は「東京都の公立中学を運営するのに都が年間に一人当たり130万円ほど出している。私立への都からの助成金は約37万円。そのお金は100万近いお金が私学の経営努力と保護者の負担で補われている。私立に通わせている保護者は公立の生徒が補助されている金額をうけとれないばかりか、税金という形でそれを負担している、いわば2重払いになっている」
○鈴木寛参議院議員は、「日本の公立学校は公立というけれども本当は文部省の官立学校。文部省は〔学習指導要領〕〔教員免許〕〔検定教科書〕という三種の神器を持って離さない。公立学校の校長は企業のポジションでいうと営業所長的な役割ではあるが、営業所長が持っていて、校長が持っていないのは〔カネ〕と〔ヒト〕の2つ」
○斎藤「校長の権限はないに等しい」
----------休憩----------
(この間)
*藤原和博、杉浦元一足立14中学社会科教諭による[よのなか]科の模擬授業「ハンバーガーから世界が見える」
*NHKで報道された番組の録画ビデオ[ニューハーフとともに”差異”と“差別”を考える](足立11中[よのなか]社会の授業風景)放映
このあと、この授業の講師を務めた女装家の三橋さんが会場で授業の様子などを次のように話した。「他の大人たちよりも、ありのままを受け入れてくれる柔らか頭の中学生だった。」
休憩とはいいながらほとんどだれも席を立たない状態で後半のフリーディスカッションへ
藤原
「もっともっと大人の重い問題を考えさせてもいいんじゃないだろうか。中学生は子どもの終わりであると同時に大人の始まりであるはずなのに、大人の始まりととらえる考え方や授業が日本にはあまりない。学校で教えられることの8割は正解や成功例。これではがんじがらめになってしまう。むしろ失敗した人が失敗例を語ってそこから学ばせてもいいのでは。」
このあと、チャータースクールを取材するライターの天野一哉さん、杉並区の教育委員会の方、@インターナショナルハイスクールの方、仕事の傍ら地域で子ども支援活動「わんぱくキッズ」を主宰する方、渇h光代表の方、日能研関東副社長小嶋氏などが主に藤原氏の指名で次々と発言した。
発言された主なテーマは義務教育撤廃論、教育バウチャー制度、子どもの学ぶ意欲の低下について、学力テーマについて
その後議論は櫻井よしこ委員と、池坊参議院(?)議員の一触即発バトルに。
櫻井氏が
「三種の神器が文部省に一手ににぎられているのは問題。教育には官僚の利益が多大に絡んでいる。国立大学の医学部の事務長がほとんど官僚の天下りでしめられているなど。受け皿を作らないとさまざまなことがすっと通らない。」
池坊氏
「自分は官僚を擁護するわけではないが、マスコミは無責任な官僚批判が多い。批判するなら(学習指導要領の)どこに官僚の利益が絡んでいるか具体的に示していただきたい」
櫻井
「詰め込み教育の反省から3割削減というが、世界史の教科書は諸外国ではもっと厚い。これでは子どもの頭がスカスカになる。文部省は子どもをバカにしていないか。」
池坊
「日本の学力は落ちていない。(国際比較調査の例を出して)」
あっという間に予定していた時間が迫り、最後に
谷垣
「学力とは何かの議論もある。想像(創造?)力や考える力が落ちている。これが問題ではないか?」
斎藤
「(自分の立場からいうとかなり爆弾発言ではあるが)教員の免許更新制度を考えている。教師、医師、弁護士などの職の中で何のチェックもなく終生終えられるのは教師だけ。そういう何のチェックもない状態に置かれると人はどうなるか。歴史が証明するとおりである。懲戒免職にならないけれどもやる気のない人たちをどうレベルアップしていくのか、これからの課題である。」
藤原
「小中学生の総ディスプレイ視聴時間は年間約830時間。小中学生の主要教科の授業時間が年間400時間程度なのに比べると非常に長い時間。これは非常に問題。こういうことも考えなくてはいけない。」
そして時間が少し過ぎて、終了。希望者は二次会会場(向かいの「ル・カフェ・ブルー」へ)
2002年5月24日寄稿



このページのトップへ▲
ホーム教育を考えよう:私学の先生方の教育コラム