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私学の先生方の教育コラム2
東京女学館中学校・高等学校の情報教育
東京女学館学校長  福 岡 久 雄 先生

◇■新校舎設計はインテリジェントスクールへむけて■◇

 私が東京女学館に赴任して間もなく、平成五年六月に校舎建設の盛大な地鎮祭が行われた。新しくできる校舎は既設の建物を全て壊し、そこに一大学舎を立てる計画である。この工事の図面を見て、壮大な建設工事であることが推察できた。
 中曽根内閣が臨時教育審議会を召集し、そこで教育問題が多角的に審議されたとき、その審議会の第三部会が、校舎の近代化を図ることを提唱していた。名付けてインテリジェントスクール。これは当時話題になっていたインテリジェントビルからとったもので「高度情報化社会に対応でき、人間的環境を有する学校」と定義される。「人間的環境を有する学校」とは、居心地の良い学校といってよい。その後本格的なインテリジェントスクールはできなかった。本校の新校舎建設に当たり、これから建てるのであればぜひインテリジェント化した校舎を建てるべきであると考えた。
 以前、放送設備のない学校に後からその設備を導入したところ、教室から教室へと配線がむき出しになり、みっともない校舎になってしまったことを経験したことがある。コンピュータの信号の送信も同じことで、新しい建物には初めから配線するための管を、柱や壁の中に入れておくべきである。空のパイプでよい。とにかく将来を考えて全ての部屋に通じる配管だけは済ませておいて欲しいと設計担当者にお願いをした。

◇■校舎の完成■◇

 平成十年に完成した校舎は、夢に画いていた本格的なインテリジェント化がなされたのである。その主な内容は、

一、全教員及び事務室などにコンピュータを配布し、校舎にイントラネットを構築した。

二、ネットワークの配線の幹線には、将来動く画像を送ることを考えて、多量の情報量を送ることのできる光ファイバーを用いた。

三、コンピュータには、マイクロソフト社のNT Serverが組み込まれ、特注による成績処理システムにより教員の事務的な作業を能率的に処理できるようにした。

四、コンピュータ教室には、学習する生徒一人が一台のコンピュータを使用できるように五十三台のコンピュータを設置し、それぞれのコンピュータをネットワークで結び、インターネットが利用できるようにした。

五、図書館においては、貸出・返却業務をシステム化し、図書名著者名の他、図書館担当者の多大の努力によって、キーワードによる検索が可能になった。さらに、マルチメディアソフトのライブラリーを備えた。

 本校にこの施設が導入された当時(平成九年一月)は、大学は別にして、初等中等教育の学校でこれだけの情報化施設を設置した学校はあまり他に例を見なかった。
 では、何故この様な施設を導入したのか。
 それは、教育にコンピュータを大いに利用していこうということである。そのきっかけになったのは、平成六年の元旦の新聞である。例年、元旦の新聞は分厚く多量の情報が掲載される。そのうちの約三分の一がコンピュータの記事で埋まっていた。コンピュータ利用の将来が幅広く紹介されており、特に金融、産業、販売業などでは、会社の発展にはコンピュータの導入が欠かせないという。そして、学校への設置率は間もなく百%になると予想していた。

◇■全ての教員がコンピュータ教室で授業を■◇

 本校の新しい校舎には、立派なコンピュータ教室が計画されていた。その位置づけは、数学科の特別教室になっており、一般的にはどの学校も同じ様な位置づけになっているのが実状である。
 これではコンピュータの利用が限定され、ほこりが溜まらないまでもコンピュータ教室の利用率はかなり低いものになってしまう。この利用価値の高いコンピュータ教室を全教科のための教室と位置づけ、全ての教科で利用して貰うことが大切である。その為には全ての教員がコンピュータ教室で授業ができなければならない。
 当時、全国の高等学校の教員で、コンピュータの操作ができる教員は四十一パーセント、コンピュータを授業で活用できる教員は十七パーセントに過ぎないという統計がある(中学校はもっと低い)。本校ではこれを百パーセントにしたかった。これが全教員にコンピュータを配布した第一の理由である。

 この構想を渋沢館長先生にお願いしたのは、平成八年の夏、アメリカ西海岸のオレゴン州における第一回海外研修旅行に同行した時である。オレゴン州都のセーラムに到着した第一日に、近くのシルバー・クリーク・フォールズ国立公園に出かけた。ここの森の中での散策中に、以前から検討をしていた「コンピュータ導入についての構想」をお話しし、協力をお願いした。特に教員全員に配布する件に関して、格段の配慮をお願いした。館長先生のお答えはイエスであった。
 校舎の第二期工事は着々進んでおり、具体的なコンピュータ導入計画は急いで進める必要があった。この計画を最初から支援してくれたのが、NTSのスタッフである。高木、村川、田尻の三氏で、本当に親身になって相談にのって頂いた。更に導入に当たってはコンサルタントの役を担ってもらった。

◇■コンピュータ導入から2年が過ぎて■◇

 コンピュータが導入されておよそ二年が経過した。昨年(平成十年)の九月三日の教員の夏期教育研究会第二日に、全専任教員を対象に電子メールとインターネットの講習会を実施し、この講習会を境に全ての教員が電子メールとインターネットを利用することができるようになった。
 これで、多くの連絡がメールでなされるようになり、効率よく伝わるようになった。朝出勤すると、すぐにコンピュータのスイッチを入れてメールを読み、帰宅の前にもう一度メールを見る。多い人は随時幾度となくメールの送受信を行っている。これだけでも、便利な道具としてコンピュータを活用できるようになったと思う。データーベースや表計算のソフトの利用度も高まってきたし、インターネットは多くの教員が教材研究などに使っている。本校がここまでこれたのは、教員の絶大なる協力の賜である。

 コンピュータ教室では、中学校一年生が家庭科の時間に基礎基本を学習している。二学期の限られた時間であるが、年賀状を作成できることを目標にしている。数学科は年間を通じて授業を組み、国語科、社会科もコンピュータ教室で授業を行うようになった。昼休みと放課後は生徒に広く開放され、多くの生徒が利用している。コンピュータは利用範囲が広く有能な道具であるので、今後更なる学習により、より高度な利用ができるようになるであろう。そして、コンピュータ教室が何時も利用されている状態になることを期待している。

◇■さらなる未来へ向けて■◇

 今後の計画では、生徒用の設備を充実していきたいと思っている。
 平成十一年度にはコンピュータ教室の前にある部屋にいろいろな種類のコンピュータを設置し、コンピュータグラフィックス、作曲、新聞の編集など特殊なソフトを揃えて生徒や教員の皆さんに利用して貰いたいと考えている。この室からコンピュータを自由に操り、知的な生産をこなす生徒が生まれてくるのではないかと期待をしている。
 また、各教室にも少なくとも一台のコンピュータを置いて授業に備え、さらに、生徒ホールなどにもコンピュータを置いて、生徒会やクラブ活動の諸連絡にも利用できるようにしたい。委員会や各クラブはホームページを開設し、全ての生徒に見て貰う。実現すれば、生徒の学校生活がより一層楽しいものになるであろう。

 コンピュータ教室の利用が増加すれば、第二、第三のコンピュータ教室の設置を考えねばならないだろう。
 今開設しているホームページを更に拡充して、学校と家庭との連絡手段にも使いたい。授業の学習内容や進度、宿題などを書き込み、いつでも家庭で見ることができる。事情で学校に行けない生徒は、インターネットで学習の遅れを補う。今のところは難しいが、将来は単位を認定することができるのではないだろうか、さらに検討したい。

 間もなく、中・高の教育課程の中に必修科目として情報教育が組み込まれることになっている。高等学校の教科としての「情報」は、広範囲な知識や技能を扱うことになっている。その準備のためにも早いうちにその体制を整えておきたい。近い将来には、中学校入学時から各家庭にコンピュータを備え、中高六年間にコンピュータをいろいろな場面での学習に活用していくことが必要であると思う。
 少子化に加え経済の混乱による入学志願者の異常な減少で、私立学校の経営は厳しい状況に立たされている。本校の情報化施設は中学校受験界に大きな反響を呼び、受験生の増加に大きく寄与してきた。 学校の存続と更なる発展を実現するためにも施設を整えるだけでなく、それを教育に十分に活用し、教育の水準を高めて行かねばならないと考えている。

1999年12月10日寄稿

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