2001年09月11日
NTS本間から共立女子中渡辺先生へ
台風が日本列島を揺さぶっています。どんなに科学が進んでいても、自然のダイナミックな力には畏敬の念をもたざるをえない瞬間を与えてくれます。昨日開成の橋本先生と10月11日の「学校の表現セミナー」の打ち合わせをしてきました。

開成は、丸山真男東大派でも、西田幾多郎京大派でもありませんでした。橋本先生のお話を伺っていると、どうも両方を統合している伝統的普遍的それでいて具体的な理念が脈々とつながっているような感じをうけました。

開成では、中2の修学旅行は、東京にしたそうです。地域を知るという体験は、極めて具体的な体験を通さないとだめだそうです。荒川区のある焼肉屋では、日本語が通じないそうです。そこで開成の生徒たちは、店員と日本語と韓国語で対話することになるのですが、異文化だとか、アジアとの交流だとか、グローバルといった普遍的な知識が、身近なところで起こっているという実感から、腑に落ちる知恵になるのだそうです。中村雄二郎流に言えば、主語的論理は述語的論理を介して具体的普遍になるのだというのでしょう。橋本先生は、具体的にわかりやすく説明してくれましたが、たいへん含蓄のあるお話でした。高橋是清の「実事求是」という精神、「事を実(たし)かめ是(真実)を求める」という開成の教育の理念が、修学旅行という学習プログラムに反映しているというお話も聞くことができました。

廣松渉的に言えば、モノ化した知識を関係という事実の中に通して再びコト化するという仕掛けが開成の東京プログラムにはあるということでしょうか。

モノ化した知識を関係化させる仕掛けとはどういうシステムでしょう。橋本先生は、生徒に試行錯誤させる。そこから普遍的な知識を気づかせるという言葉で語ります。生徒が試行錯誤しているときは教師は最小限の介入しかしない。演繹的ではなく、帰納的なプロセスが大事であると。

ここには、ヘーゲル的に言えば、弁証法的プロセスがありますね。社会学的に言えば、相互行為とかコミュニケーションの過程が見事にあります。このプロセスを今度のセミナーで、渡辺先生と対話しながら少しでも明快にできればと思っています。

アメリカやイギリスのプロテスタンティズムの影響、儒教の名残、仏教の精神が、近代化に直面した日本の教育にどういう影響を与えたのでしょう。確かに明治憲法では義務に貶められていた教育でありますが、三大義務の1つであるほど社会に影響力のあった教育です。教育の根本問題はなんだったのでしょう。戦後の公教育ではそれは忘れ去られました。それを抱えているのは、今では私学です。反省的近代という言葉が、社会学ではよく使われますが、近代のモニターブレインとしての知識人は、今では私学から多く生まれる可能性があります。公教育は、この近代のモニターブレインを破壊されています。なぜなら宗教教育はできないからです。西田に言わせると、宗教性とは自己を見つめる瞬間に生まれるもののようです。自分探しといいながら、宗教教育の拒否は、不完全燃焼を生むのでしょう。効率の自分探しの限界は、実に制度そのものにあります。西田的宗教性教育の回復は大事なのではないでしょうか。もちろん、いかがわしい新興宗教とかカルト集団とこの教育はまったく別物です。

咸臨丸当時の精神を哲学的に普遍的に捉えなおした理論は、西田幾多郎の「善の研究」だと思います。そこには、佐野鼎も福沢諭吉もウェーバーも仏教もカトリックも同居しています。たしかに述語的論理です。ここから少しは主語的論理に抜け出る必要はあると思いますが。しかし、主語的論理だけでは、精神の空洞化が起きます。この人間の疎外を丸山は「日本の思想」で言ってますね。しかし、渡辺先生のご指摘のとおり、丸山には主語的論理と述語的論理の往復をどのようにすればよいのかその実践論というかそれを学ぶプログラムが提案されていないのです。もっとも、それは西田も同じです。

ところが、このプログラムは、私学の教育活動の中にどうやら息づいているという仮説は、あたっているような気がします。もっとも現在では、このプログラムは大学進学のためのプログラムというレッテルが、マスコミを中心に貼られています。この幻想を払拭するためにも、私学の教育活動のプログラムの仕掛けの解明とその中に人間存在の根源的なものが息吹いていることの証明と教育活動からそのプログラムの発想や実践を生活世界へ引き出す活動をする必要があると思います。

そのために10月11日渡辺先生とセミナーを開催できるのは本当に楽しみです。また《CAL》の2回目の活動も9月27日に行えますね。いろいろありがとうございます。




Copyright(C)2000-2005 NTS Educational Research Institute. All Rights Reserved

CALトップへ