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授業

「文法用語で比べる日本語と英語」−授業におけるコラボレーションの可能性−

 公開授業の始まりです。教室へ移動される先生方に丁寧に挨拶する生徒たち。広々とした中庭でおしゃべりに夢中な女の子たち。授業開始のベルが鳴るとみんな元気よく教室へ戻っていきました。

  今回公開授業を行うのは中学の3年3組。きれいに整理された教室は見学者が多数いるためか緊張感に覆われていました。



伊藤

「それでは授業を始めます。三年間勉強してきた品詞をすべて学んだことは記念すべき事です。この後はどうやって品詞を識別するかです。1年生の時の品詞の名前を覚えるところから始まり、ずっと用言の勉強をしてきました。3年生になってくわしく付属語を勉強しましたが、今後どのようにつながっていくかを今日は勉強したいと思います。」

伊藤 「まず初めに今までの文法の授業についての感想をかこう!」

伊藤先生がプリントを配ると、「え〜、どうしよー」「わかんないよー」と大騒ぎ。でもみんな真剣に考えます。配ったプリントは右の写真のワークシート。感想と言っても文ではなく記号を書いて表します。○が文法、△が古文、自分がどの程度授業を理解しているか表してみましょう。たとえば文法の場合、おもしろいけれど、わからない時は左上に○印を表示します。

伊藤

「教科は違いますが、言葉の勉強という意味で興味を持っている英語の授業の感想も書いてみましょう。英語は★印です。」

伊藤 「書き終わった人は隣りの人とみせっこしましょう。どうですか??」

みんな友達の意見に興味津々。

伊藤

「それでは窓際の人から記入した内容を黒板に書いてみましょう。後ろの先生方にも見えるように大きく書きましょうね。」


7〜8人づつ席を立ち、黒板に向かう生徒たち。たくさんの見学者に見つめられて緊張している子もいるようです。全員が黒板に印を付け終わると大きな分布図が出来上がりました。

伊藤

「この分布図を見た感想を書きましょう。自分が印をここにつけた理由でもいいです。一言でいいので書いてください。」


感想を書き終わると、いよいよ本日の授業の本題に入っていきます。

伊藤

「今日はなにを勉強するかというと、この授業を通してひとつの節目になればいいなと思います。国語は言語の授業でもあります。今まで勉強した品詞を含めていろいろな言葉と比較していきましょう。」

伊藤 「いきなりいろいろな言語と比較するのは大変なので、今日は皆さんが三年間勉強している英語と比べてみましょう!ここでスペシャルゲストの登場です!!」

映画ハリーポッターのテーマソングが流れ始めました。生徒たちは「え〜なになに!!」「だれだれ〜??」と何が起きるのかおおはしゃぎ!!生徒たちの間を通り抜け教壇に向かって歩いていく一人の男性。生徒の視線を集めます。

伊藤

「本日のスペシャルゲスト!英語科の松ケ枝先生です!!みんな拍手!」


パチパチパチ!!国語の授業に英語の先生が登場して生徒は驚いたようです。

伊藤

「松ケ枝先生といえば厳しい先生。それがハリーポッターのBGMで登場するなんて!ちょっとびっくりです。」


でも生徒たちの緊張はほぐれた様子。

伊藤

「今日は日本語と英語の文法用語を比べる授業ですので、特別に松ケ枝先生にお願いして皆さんと一緒に勉強してくださることになりました。」

伊藤 「今日は特別授業なのでテキストではなく、文法用語を一覧表にしたプリントを使いたいと思います。」

伊藤先生は新しいプリント(ワークシート2)を配ります。

伊藤

「松ケ枝先生には日本語と英語のどのような違いがあるのかを解説していただきます。真中に書いてある11個の品詞は日本語文法の品詞です。中身の違う部分はあっても用語自体は高校に入ってからも使います。日本語では11個ですが英語ではいくつ品詞があるのですか?」

松ケ枝 「英語の品詞は日本語に比べて少ないです。皆さんは英語の品詞がいくつあると思いますか?
5個だと思う人、手を上げてください。誰もいませんか? では6〜10個ぐらいだと思う人は?」

10人ぐらいの生徒が手を上げます。

松ケ枝

「では、これよりもっと12個以上あると思う人はいますか?」

生徒 「・・・18個ぐらい?」
松ケ枝 「そんなにはありません(笑)実は8個しかないのです。日本語の品詞の中で英語にある品詞を言っていくので、皆さんは囲まれた品詞の隣りの()の欄に○をつけてください。名詞・代名詞・動詞・形容詞・副詞・接続詞・感動詞です。感動詞は英語では間投詞と言います。これで8個になりましたか?」
生徒 「なな!!」
松ケ枝 「あれ?おかしいな。ちょっと緊張しているのかな?(笑)」
生徒 「前置詞ではないですか?」
松ケ枝 「あっ、そうですね、助詞と同じような意味ですが、英語では前置詞というのがあります。at・with・otherなどですね。」
伊藤 「助詞の下に付け加えてください。」
松ケ枝 「これで8個になったでしょう。ぼくでも数えられます(笑)。この8個が英語でいう品詞です。他にも冠詞などの「詞」のつく言葉はありますが、それは品詞には含まれません。」
伊藤 「日本語の文の成分は5つあります。日本語では主語・述語・修飾語・接続語・独立語です。中1の初めに勉強しましたね。」
松ケ枝 「英語では文の主要素といいます。主語・動詞・目的語・補語。聞いたことありませんか?日本語ではどの部分にあてはまるのか言いますので、プリントの一番大きな[ ]欄に書いてください。」
松ケ枝 「いいですか?日本語の名詞は英語の主要素では"主語・目的語・補語"にあてはまります。代名詞も同じです。動詞は"動詞"、形容詞は"補語"にあたります。副詞・接続詞・感動詞(間投詞)・前置詞は文の主要素にはなりません。たとえ文の主要素にならなくてもこれらは大事なものなのです。」
「高校になって頭を悩ますのが文型です。SVなどの第一文型・第二文型といわれるものです。」
伊藤 「松ケ枝先生、文型の説明をお願いします。」
松ケ枝 「英語の文型を見つけるときに、『木の枝を取り除いて、木の幹だけを作りましょう』という言葉聞いたことありませんか?」
生徒 「え〜ないです。」
松ケ枝 「う〜ん、それはこまったなぁ。」

松ケ枝先生が黒板に大きな木の絵を描きはじめました。

 
伊藤

「へ〜、松ケ枝先生って授業で絵描くんだ。」

ちょっと恥ずかしそうな松ケ枝先生。

 

松ケ枝 「すご〜い枝ぶりの木があります。この〜木何の木〜♪」
生徒 「・・・・」
松ケ枝 「この〜木何の木〜♪?」
生徒 「・・・気になる木」
松ケ枝 「そうですね!英語の文型というのはこの太い幹がどうなっているのかということです。葉っぱや枝を全部切り落として、この幹が一本のまっすぐなものなのか、それとも二股なのか、どうなっているのかを見つけることが英語の文型を探すということです。切り落とせるような細い枝が太い幹から出ています。他にもいっぱい細かい枝が出ているかもしれません。このような枝をどんどん切り落として、もう切り落とせない幹だけにすることが大事なことです。その時、木の枝の分かれ部分に目をつけます。これがなにかというと"でも大事"な前置詞なのです。太い木の枝からまた枝わかれしていますよという目印なのです。目印がわかると前置詞から出てる枝は切って良いということになります。
例えば、I go to the church.これがなに文型か考える時、落とせるものは落としてしまう作業をあたまの中でするのです。この場合伸びてる枝、つまり前置詞はどれかというと"to"になるのです。"to"から後ろが枝になります。だからto the churchが枝となり、取ってしまいます。すると残ったものは?」
生徒 「I go」
松ケ枝 「そう、主語・動詞が残るわけです。結局この文は5つの単語から成りたっていますが、この文の幹はなにかといったら、主語・動詞の文型になるのです。英語は前置詞があってそのうしろの名詞とつながっているのです。このことを押さえてください。英語はひとつの塊としてto the churchという形をみたとき最初にくる言葉が大切になります。働きとしても。つまり、toという前置詞はここから後ろの部分と合わせて切り落とせるわけです。ところが日本語の場合、to the churchは"教会へ"となり日本語でいうと助詞にあたります。英語は手前に書いてある言葉が大事、ところが日本語はうしろに助詞がつくわけです。だから英語はひとつの塊として最初にくる言葉が大切。日本語は一番最後にくる言葉が大切。という考えが出てくるのです。」
伊藤 「日本語は文の成分という考えをします。一番最後に来るのは述語です。日本語は述語中心の言葉です。逆に述語がしっかりしていれば、人と人とのやりとりの文脈がハッキリわかっていれば、 "ねぇ、食べよう"と友達に言っただけでお弁当食べるんだな、とわかるのです。述語が一番大事、それが日本語の場合は一番あとにくるのです。」
松ケ枝 「しかし、英語の場合は、主語・動詞をひとつのセットと思えばよいのです。必ず主語(誰は・何が)からはじまり、そのあとで動詞(その人がどうする)という、主語・動詞の組み合わせでひとつのセットになるのです。それを基本にしてください。そこに他のいろいろなものがくっつくのです。英語は大切なものがはじめにくると言いましたが、肯定か否定かも最初にきます。だから動詞のところが"I go"なのか"I don't go"なのかもはじめにくるわけです。日本語の場合は最後までこないと行くのか行かないのかがわからない。でも英語は最初にこうなんだと言えるのです。女の子はなかなか"I love you"なんて言えないと思いますが(笑)そうそう、"Ilove you"で思い出しました。伊藤先生"I love you"って書けますか?」
伊藤 「もちろん書けますよ。日本語の授業なので縦に書いてもいいですか?スペル間違っていたら教えてくださいね。」
松ケ枝 「みなさんはおそらくもう少しで漢字だけの世界に入っていくと思います。」
伊藤 「ちなみに三学期予定です。漢文は。」
松ケ枝

「では、この"I love you"を漢字にしてください。」

伊藤 「現代中国語でいいですか?となります。」
松ケ枝 「ではみなさんご一緒に。はい、ウォーアイニ−」
生徒 「ウォーアイニ−(笑)」
伊藤 「本当は漢文だとこのような読み方はしないんだけどな(笑)」
松ケ枝 「結局主語・動詞のセットになります。中国語も同じです。が主語、が動詞、が目的語になるのです。」
伊藤 「二つとも同じ文の要素になります。」
松ケ枝 「ひとつの英語の語順なら、主語・動詞それがセット。そのあとにくる『だれちゃん』をという言葉によってその形、主語・動詞・目的語がわかってくると漢字の世界も垣間見ることができます。どうですか?楽しそうでしょう。」
伊藤 「あまり楽しそうではないかな?」
松ケ枝 「まぁ、僕も漢字きらいでしたから。」
伊藤 「えっ、でも英語やっている人の方が漢文の理解は早そうですよね。」
松ケ枝 「うん、理解はね、ある程度できますが。」
伊藤 「これ三学期にやりますから。日本人は昔から外国語を読んできて、今は全ての学校で英語を学んでいますが、奈良時代の外国語は英語ではないのです。」
松ケ枝 「えっ、何語ですか?」
伊藤 「当時の日本人にとって最先端だった言葉はなんでしょう?今私たちがマネをしている中国語です。最先端の文明といったら中国語でした。今私たちが一生懸命英語を勉強しているように昔の人も大変だったでしょう。その時の外国語の読み方ですが、松ケ枝先生今の外国語を読んでみてください。」
松ケ枝 「アイラブユー」
伊藤 「ってそのまま読みますよね。でも昔の日本人は読み方を変えてしまったのです。語順を日本語に合わせて直してしまったのです。」
松ケ枝 「えっ、どういうことですか?」
伊藤 「日本語は述語が一番後ろにきます。一番最後に読む言葉はどれだとおもいますか?」
生徒 「・・・・」
伊藤 「この3つの漢字の中で動詞にあたるものはなんでしょう?」
生徒 「2番目の愛です。」
伊藤 「これを一番最後に読まないと日本語の語順にピッタリこないじゃないですか。だから昔の日本人は"Iはyouをloveする"と読んだのです。」
松ケ枝 「えっ順番変えて読んだの?」
伊藤 「ええ、そうです。"I love レ you"今私が"love"と"you"の間に書いた記号"レ"は返り点と呼ばれるもので、漢文を読むときに使う語順を変える記号なのです。返り点の規則を勉強すれば昔の中国語で書かれたものも日本語の語順に直して読むことができます。英語もこうやって読んだらどうですか?私は便利だと思いますよ?」
松ケ枝 「"I love you"の方が気持ちいいではありませんか・・助詞はないけれど、主語が最初にあって、次に動詞があり、このyouは目的語になります。例えば、ハリーポッターの世界でロンとハーマイオニーがひょっとしたらうまくいくのではないかと思っているのですが、この場合、"Ron loves Hermione"このまま意味を捉えるのです。ロンは大好きなんですよ、誰を?ハーマイオニ−を。ところがこれが日本語になったときに"Hermione Ron loves"今、英語ではひとつの順番としてあったけれども、日本語では伊藤先生が書いたように「は」や「を」を付け加えることによって、このめちゃくちゃと思われる英語が日本語での意味を持ってしまうのです。"ハーマイオニ−はロンを好きだ"という余分な言葉をつけると意味が通じてしまうのです。そして、"ハーマイオニ−をロンは好きだ"とすると意味が変わってしまいます。
伊藤 「つまり、英語は語順が大事な言葉。日本語はひとつだけでは意味のわからない付属語が文全体のカギを握っている。ということになります。
とは、いってもここで勉強した事が高校にいってもどう役に立つのかわからないと思うので、高校2年生の先輩から中3のみんなへのアドバイスを書いてもらったので、これを配ります。」

先輩のアドバイス

伊藤先生が"文法学習のアドバイス"のプリントを配ります。
(プリント−先輩のアドバイス)
先輩からのアドバイスを真剣に読む生徒たち。

松ケ枝

 「メッセージのプリントに書いてある"SVOC"は非常に大切です。Sは主語、Vは動詞、Oは目的語、Cは補語になります。英語は4つしか要素はありません。そのすべての要素を使った文型が"SVOC"です。どのような部分で大切かは高校に入ってから具体的に勉強しましょう。」


伊藤 「みんなも高校生になって新しい外部生も入ってくるし、クラスもこのままいく訳ではありません。環境も変わってくると思います。みなさんが幸福な高校生活が送れるように松ケ枝先生に魔法をかけてもらいましょう。」

松ケ枝先生がハリーポッターの音楽にあわせて呪文を唱えます。
これで3年3組の高校生活は幸せでしょう!

伊藤

「松ケ枝先生、ありがとうございます!では最後にみなさん、日本語、英語、少しですが中国語を比較した今日の授業の感想を書いて提出してください。」


50分の授業はあっという間に終わってしまいました。
生徒の感想をいくつかご紹介します。

<生徒の感想>
英語は日本語に比べて品詞が少ないとわかった。
文法は本当のところ今まで必要ないと思っていた。でも今日の授業を聞いてがんばってみようと思った。
英語よりも日本語の文法の方が難しく感じる。
英語と文法はつながっている。文法がわかれば英語もわかりやすくなるかも。
日本語は特別な言葉だと思った。
いろいろ役に立つ事もあった。知っている事もあって復習のように受けれた。






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