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『中学卒業論文』刊行に寄せて
中学校3年間の学習を総合するものとして、『中学卒業論文』をはじめて課したのは、平成元年に中学に入学した生徒たちに対してでした。
この平成元年度より、中高では将来の学校完全5日制に向けて、年間10日間の自主学習日を新設しましたが、その目的は、学校での授業がなくても、生徒たちが家庭において自ら課題を見つけて自主的・自立的に学習する習慣と態度を身につけさせるためであり、同時に自学自習の習慣化によって授業時間数の削減に伴う学力の低下を防ぐためでした。そしてこの自主学習日の主旨を現実化させる目的で『中学卒業論文』を中学生に課すことにしたわけです。
生徒たちは自分にとって興味のあること、関心のあること、あるいは授業の中で、また新聞やTVの報道などを通して疑問に思った事がらの中から自由にテーマを決めて、中学1年の3学期に、校長に提出します。
その後、生徒たちは約1〜2年かけて、自分で決めたテーマに基づいて図書館やインターネットを通じて情報を収集したり、また実際に現地・現場に赴いてフィールドワークを行ったり、実験や観察をしたりして苦労しながら生の資料を集め、それらを整理しながら、論文の構成を考えます。
その過程で、生徒の関心や興味が他のテーマに移っていくこともありますし、実際に調べていくうちに思ったように資料が集まらなかったり、資料が中学生が読んで理解するには難解過ぎたり、また情報や資料の量が多過ぎて自分の決めたテーマが大き過ぎ、適切でなかったことに気付くこともしばしば出てきます。そういう場合にはテーマを変更することになりますが、その際、校長にテーマの変更を理由を添えて届けます。
この間論文作成に関する指導は、中学3年の1学期に卒業論文作成ガイダンスを1回行う程度で、学校側からの積極的な指導はこれまで行ってきませんでした。それでも生徒たちは、中学3年の2学期後半から冬休みにかけて、苦労しながらも自力で論文にまとめあげて、3学期に校長に完成した論文を提出してくれました。提出された論文の中には、大変優れたものも数多あり、何とか優秀作品だけでも印刷製本して残したいと思っておりましたが、諸般の事情でそれができないでおりました。しかし一昨年あたりから優れた作品は是非、形あるものとして残したいという声が強まり、昨年試みに優秀作品2点を選んで、初めて印刷製本することにいたしました。
幸い今年度より、新学習指導要領の「総合的な学習の時間」の柱として『中学卒業論文』を組織的に指導できる学校側の体制が整いましたので、現高校1年生が提出した論文につきましては、各教科の先生方からなる総合学習委員会が中心になって審査の上、優秀作品3点を選び、この度『中学卒業論文優秀作品集』として刊行することができました。なお誌面の都合上、掲載できなかった論文の中にも、優秀作品に劣らない優れたものがあったことを申し添えておきます。
こうして『中学卒業論文』の指導体制の組織化と、優秀作品を選んで印刷製本して残すという長年の懸案が解決し、今後『中学卒業論文』は、中学における「総合的な学習の時間」の重要な柱として位置づけられ、中学1年より系統的な指導が適宣なされるようになりますので、生徒たちも今まで以上に意欲を燃やして論文に取り組み、先輩たちの労作を乗り越えるような一層、優れた論文が完成されるのを期待しています。
生徒自身が自分の興味や問題を誠実に考えて悩んだ末に、自分にとって真に学びがいのあるテーマを見つけ、そのテーマにそって自ら学ぶという体験は、苦しくて不安で混乱した経験ではありますが、最後に迎える論文の完成は、生徒たちに大きな喜びと充実感、達成感をもたらすものです。この過程で生徒たちが、本や図書館が自分にとって心強い見方であることを発見し、自発的・主体的な『学び』を実現して、「自分で学ぶことは大変だけど結構楽しいものだ」ということを味わい、更に「自分だってやればこんなことが出来るんだ」という自分への自信と自己肯定感を持つことが出来たら、本当に素晴らしいことです。
2001年 晃華学園中学校・高等学校校長 広野 佑子
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